第69回 税理士試験講評 ~ 法人税法②

問Ⅰの問5 受取配当等

(受取配当等の益金不算入)
難しい論点は含まれていませんが、D株式については、控除負債利子の計算を行う必要があります。「やや時間がかかるので、控除負債利子の計算のみ後回しにして、最後まで解き終わって時間があれば手を付けよう。」という判断も「あり」でした。その場合でも、D株式で部分点がもらえるような計算過程を作るようにして下さい。
B株式は10%保有(=5%超1/3以下)保有なので「その他の株式等」に該当し、みなし配当 1,140,000の50%が益金不算入となります。
C株式は、名義株で30%(=5%超1/3以下)保有なので「その他の株式等」に該当し、配当等の額 780,000の50%が益金不算入となります。
D株式は配当の計算期間を通じて60%(=1/3%超100%未満)保有しているので、「関連法人株式等」に該当します。また、基準日後に売却した15,000株のうち4,000株は短株となります。従って、受取配当 600,000から短株分40,000を控除した 560,000から負債利子を差し引いた金額が益金不算入となります。負債利子の計算を後回しにする場合でも、ここまでは丁寧に計算過程に反映させて下さい。
E株式は5%(=5%以下)保有しており「非支配目的株式等」に該当するため、配当等の額 100,000の20%が益金不算入となります。
F株式は6ヶ月以上、25%以上保有しており「外国子会社」に該当するため、受取配当等 400,000×95%= 380,000を別枠で減算すると共に、外国源泉税 40,000を加算欄で加算・流出とします。

(有価証券計上もれ・過大計上)
ここも難しい論点は含まれていませんが、有価証券の調整を行うように指示されているので、「評価損の計上もれ」といった解答をしないような配慮が必要でした。
B株式については、みなし配当で解説したように、有価証券計上もれ 1,077,650(加算・留保)となります。
D株式については、移動平均法による譲渡単価@150で計算すべきところを@160で計算しているので、譲渡益の計上もれが@10×15,000株=150,000生じています。本問の答案作成上は、有価証券の調整を行うため、有価証券計上もれ 150,000(加算・留保)とします。
E株式は売買目的有価証券であるため、税務上も評価損を計上できます。従って、評価損計上もれ 450,000(減算・留保)となりますが、答案作成上は、有価証券の調整を行うため、有価証券過大計上 450,000(減算・留保)とします。

(控除所得税額)
ちょっと困った問題でした。
期中取得したD株式、E株式の取得時期から、明らかに簡便法有利となります。その旨と理由を記載すれば、原則法の計算過程までは書く必要はありません。また、B株式はみなし配当なので、「その他」に区分され、期間按分の必要はありませんが、「資料の源泉徴収額 357,350」が「あるべき金額 232,788(=1,140,000×20.42%)」と一致していませんでした。別表4の加算額として、「資料の 357,350」と「あるべき金額 232,788」のどちらを選択すべきか判断に困ったはずです。各専門学校の解答速報も見解が分かれています。作問者が誤った源泉徴収額を資料に与えている場合に、受験生があるべき金額に修正して解答するのも、ちょっと厭味な話なので、個人的には「資料の 357,350」をそのまま使用しておけば良かったと思います。
続きは、また明日・・・