日商簿記1級 146回 解答・解説 商業簿記・会計学

 会計学

今回の会計学の出題は以下の通りでした。

第1問:理論の空欄補充問題が5問

第2問:予定取引の繰延ヘッジ会計

第3問:事業分離

第1問:理論

5問中1問は「総合償却」の説明であり、少しマイナーすぎるかなと思います。残りの4問は楽々得点できたと思います。

第2問:予定取引の繰延ヘッジ会計

難しくて手応えのある、日商簿記1級らしい出題です。ヘッジ会計の基本的処理をマスターしていた方なら、4問中2問は得点できたと思います。

本問は予定取引のヘッジ取引なので、ヘッジ対象である外貨建の売上取引(予定取引)が実行されるまで、ヘッジ手段である通貨オプションの損益を「繰延ヘッジ損益」として繰延べ、売上取引が実行されたときに「繰延ヘッジ損益」から「売上高」に振り替えます。

オプションの価格(時価)は与えられているので、デリバティブは期末時価評価をするという知識があれば、設問1はクリアです。

繰延ヘッジではデリバティブの時価評価差額を「繰延ヘッジ損益」にするという知識と、「繰延ヘッジ損益」を損益認識するときに「売上高」に加減するとの指示が読めれば、設問2もクリアです。

本問が難しかったのは、「オプションの時間的価値を本源的価値と区別せずに一括して処理する方法」と「オプションの時間的価値を本源的価値と区別して処理する方法」がそれぞれ問われており、そもそもこの2つの処理があること自体を知らなかった受験生の方は、そこでお手上げとなってしまった可能性があるからです。

一括して処理」が通常の繰延ヘッジの処理となんら変わらないので、落ち着いて通常の繰延ヘッジの処理ができれば、設問1と設問2、場合によっては設問3の問1まで解くことができます。

設問3は決済後の為替差損益が問われています。オプションの行使価格115円/ドルが何を意味するかを理解できているかで正否が分かれると思います。

本問はドル建の売上取引がヘッジ対象ですから、対価がドルで入金されます。このドルを円転する際に為替リスクが生じるわけですから、オプションの行使価格はドルを円転する、つまりドルを売って円を買う価格を115円/ドルで予約していると考えることができます。従って、決済時には直物レート109円/ドルでドルを買い、行使価格115円/ドルでドルを売れるため為替差益が生じます。

「オプションの時間的価値を本源的価値と区別して処理する方法」は、ここまで確認してきた知識プラスアルファが要求されるため、設問3の問2は受験上はパスで良いでしょう。

上述した2つの処理があることを承知し対策もしている公認会計士受験生や税理士受験生が、日商簿記1級を受験している実態を考えると、彼らと競っていかなければならない受験生も2問の正答が合格に必要であったと思います。

第3問:事業分離

一部の事業を分離して他社に移転し、その対価として当該会社の株式交付を受ける場合の、交付された株式の帳簿価額、事業を受け入れた側の資本金の額、事業移転後の貸借対照表の作成が求められました。

事業分離・企業結合の分野では、投資の継続・非継続が問題となりますが、今回は移転対価が株式であるため、事業投資が継続していると考え、移転損益を認識しないパターンの出題でした。

投資の継続・非継続という事業移転の基本的事項さえ理解していれば、問3の2箇所(のれんと資本剰余金)以外はすべて解ける問題でした。

次回に向けて、移転対価が現金である場合は、どのような処理になるのか考えてみるのも良いでしょう。


以上から、会計学は55%~60%が目安となると思います。

日商簿記1級146回 商業簿記・会計学

工業簿記・原価計算が比較的難易度が低かったので、商業簿記・会計学では合格基準の70%を下回っていても、大きく崩れなければ全体として合格水準に達することができたのではないでしょうか。

以上です。