公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第5回

第四問

 問題1:自己株式

全体として、細かいところを問われたなあ、という印象です。

問1:保有自己株式を株主資本から一括控除する理由

結論としては、「処分・消却までの暫定的状態と捉えているから」が理由となります。自己株式の取得が資本の払い戻しの性格を有するといっても、実際に払戻があったように株主資本の構成要素を直接減額してしまわないのは、自己株式の保有は「暫定的状態」なので、処分(新株発行と経済的実態が等しい)または消却(資本剰余金と相殺)されて状態が確定するまで、一括控除が適すると判断しているからです。

問2:自己株式取得の対価が他の種類の自己株式である場合の取得原価

取得原価としてb.「交付した自己株式の取得原価で算定する方法」を選択することはできたと思いますが、その理由までは細かい内容なので難しかったと思います。「新たな払込の事実がなく、株主資本内の移動にすぎない」ことが理由になります。

株主の権利の観点からは異なる種類の株式であっても、会計上取扱いの異ならない自己株式同士の交換から株主資本の変動が生じたらおかしいだろう、と思い当たれば答案にできたかもしれません。

問3:自己株式の無償取得の場合の取得原価

c.「自己株式数の増加として処理する方法」を選択することはできたと思います。理由は「株主間の富の移転があるのみ」だからですが、問題文中に「自己株式の性格に照らして」とあり、a.b.の処理が自己株式を資産として時価評価するものなので、資本の控除としての自己株式の性格から、資産としての取扱いを否定する内容も含めると良かったと思います。