公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第5回

第5回は会計学(午後)財務会計論について振り返ります。

解答例はこちら → 会計学(午後)解答

 

第三問

第一問は、問題1、問題2ともに標準的な問題で解きやすかったと思います。

 問題1:リース取引

セール・アンド・リースバックから、ファイナンス・リースの判定・借り手と貸し手の仕訳問題、所有権移転ファイナンス・リース取引の経済的実態についての理論問題が出題されました。

仕訳問題は、リース料が前払であること、借手に貸手の現金購入価額・計算利子率が明らかであること、の2点さえを注意すれば正答できたと思います。

ただ1点だけ、長期前受収益を期間配分して減価償却費で調整する際に、「長期前受収益償却」勘定で処理することは難しかったと思います。適用指針で用いられている勘定ですが、通常は直接「減価償却費」勘定で調整してしまうので、ここは埋められなくても仕方ないと思います。

問2の理論問題では、所有権移転ファイナンス・リース取引と資産の割賦売買取引の類似性が問われました。

「所有権移転」ファイナンス・リース取引であることから、資産の対価を長期分割払いする点や支払額に利息が含まれる金融取引の側面がある点に加えて、所有権の移転についても記述したいところです。

 

 問題2:吸収合併

計算は、一見して簡単な問題だと分かります。9箇所の解答箇所のうち、④のれんと⑤退職給付引当金を捨てて、残りの7箇所を慎重、かつ確実に合わせて、余った時間を理論に回すのが賢明な選択だったのではないでしょうか。おそらく、この7箇所であれば、10~15分程度で合わせることができたはずです。

①有価証券A社所有の有価証券簿価6,620+B社所有有価証券時価10,370=16,990百万円

②その他有価証券社所有のその他有価証券簿価34,800-A社所有のB社株式簿価24,800=10,000百万円

③無形固定資産:〔資料Ⅱ〕2.(1)の「分離して認識可能な無形固定資産」3,000百万円

④のれん合併仕訳の貸借差額のため、手を出さない。

⑤退職給付引当金単純な合算ですが、合併における退職給付会計の処理は対策できていないと思われるので、受験上はスルーで問題無しと考えます。

⑥企業結合に係る特別勘定:〔資料Ⅱ〕4の「合併後に予定されている再教育費用及び割増退職金」の見積額500百万円

⑦資本金:合併前A社資本金300,000+新株発行@550×(400百万株-40百万株)×合併比率1.5÷2=448,500百万円

⑧自己株式 :〔資料Ⅰ〕B/Sの自己株式5,500百万円

⑨その他有価証券評価差額:A社B/Sの2,100-A社所有B社株式分1,600=500百万円

 

問2の理論問題では、逆取得の取得会社(消滅会社)の資産・負債を帳簿価額で引き継ぐ理由が問われました。

企業結合で、時価で取得するか帳簿価額で引き継ぐかは、持分(投資)を清算するか継続するかで考えれば良いので、本問は「持分を継続する」ことを理由にした答案を用意できたなら問題無しです。