日商簿記1級 147回 解答・解説 工業簿記・原価計算

日商1級の試験では、工業簿記・原価計算の方が得点しやすいことが多く、第147回も、1級試験の猛者たちにとっては、おいしい得点源となったはずです。
工原で9割程度得点できれば、商会が5~6割でも合格ラインに届くので、工原を得意にするのが合格への近道となります。

解答・解説はこちら → 147回 工業簿記・原価計算 解答解説

 工業簿記

工業簿記は、個別原価計算品質原価計算の理論が出題されました。

材料費の計算では、内部副費を購入原価に予定配賦させていました。予定配賦率0.125というのは、「材料を1円買ってくるたびに、0.125円を購入原価に算入させる。」と読み替えてあげると解きやすいです。研究開発費は、一般管理費とすることが多いですが、本問では、一部を製造間接費としていました。また、在庫金利を計上していましたが、これは、現金支出を伴うようなものではなく、多額の資金が在庫に投入されたまま滞留しないように、注意喚起的な意味を込めて、形式的に計上しているだけです。従って、在庫金利は外部報告用の財務諸表には計上されません。この他に、特に難しい論点はなかったと思います。

品質原価計算は、会計士試験では、数年前に試験範囲から除外されたので、日商1級でしか出題されない論点となっています。今回は、品質適合コストである「予防原価」と「評価原価」、及び品質不適合コストである「内部失敗原価」と「外部失敗原価」といった品質原価の内容が問われました。また、「不良品を販売したことによって会社の評判が悪くなり、それにより他の製品の売上まで減少したことで失った貢献利益」、つまり、「不良品が生じなければ得られたであろう貢献利益」なども機会原価として、品質原価を含める必要があるといった、伝統的な論点が出題されました。ここから、少し進んだ議論もあるので、今後はそういったものも視野に入れて学習されるとよいでしょう。

 原価計算

原価計算は、連産品の原価計算追加加工の可否に関する意思決定経営レバレッジに関するモデルケースが出題されました。

第1問の連産品の原価計算では、副産物を含めた全体の完成品原価を計算して、これを正常市価基準によって各連産品に原価配分するといった、最もスタンダードな計算方法が問われています。

業務的意思決定では、「追加加工を行うことによって増加する収益」と「追加加工費+追加販売費」とを比較して、前者の方が大きければ、追加か加工を行う、というこれも典型論点でした。追加加工によって減損が生じ、追加加工後の販売量が減少する、といった論点も何度か解いたことのあるパターンだったろうと思います。

第2問は、経営レバレッジ係数に関連した問題でした。
穴埋めのためには、資料を最後まで読んでおいてから、前の方に戻ってくる必要がありました。ただ、目標利益達成点販売量の算定は、「固定費+目標営業利益の合計額を単位当たり貢献利益で除してあげる。」と、簡単に計算できるので、こういうときのために、CVP分析の計算公式(3つ)を覚えておけば、本試験での答案作成時間の短縮を図ることができます。

広告宣伝費の支出に関する設問については、疑問に感じている受験生もおられると思います。解答速報でコメントしていますので、気になる方は参考にしてみて下さい。

次回は2018年6月です。どのような問題が出題されるのか、今から楽しみです。