第68回(平成30年度)税理士試験 講評 第3回~簿記論

今回の簿記論は、受験生泣かせでした。例年、全体的に問題量が多いのは周知のことですが、今回は輪をかけて多かった気がします。試験時間をあと1時間ください!って思いながら解いていました。以下、気になる点を指摘していきたいと思います。

詳細な内容は解答・解説をご確認ください。

第一問 問1

一般商品販売の商品有高帳の問題でした。設問の(1)~(3)は、資料1に直接書き込んでいけば効率的に解けたと思います。全体の問題量を考えれば、この問題はここまでにして次に行くべきでしょう。移動平均法で解き直すなんて、無駄に時間がかかるに決まってますから、スルーした方も多かったはずです。

第一問 問2

本支店会計の空欄補充問題(ほぼ数値)で、本支店会計一巡を問う、スタンダードな問題でした。
ただ、支店の期末在庫の【資料4】②期末商品棚卸については、そのまま解くと、支店の本店仕入分の単価が@64.513…となり、本店にある在庫単価@110から乖離してしまうので、一旦、手が止まってしまった受験生も多かったと思います。専門学校によっては、無理矢理、「未達分を含む。」という問題文を、「未達分を含むというのは、商品の数量のことであって、期末棚卸高の金額は未達分を含まないのだろう」と読んで、別解にあるような答案(④1,600、⑦88,446、(5)78,190)を解答速報とした学校もありました。税理士試験の資料の不具合は、よくあることなので、単価の妥当性については気にせず解いた方が賢明だっただろうと思います。「いずれの解答にせよ、採点上は正解とされる」と考えないとやりきれないところです。
以上のような、ちょっとした瑕疵のある問題ですが、決算整理前残高試算表の穴埋めの推定も適当な難易度ですし、少し時間を多めに配分して、しっかりと得点したい問題でした。

第二問 問1

特殊商品売買から、割賦販売が出題されました。3期分の計算が要求されていますが設定はシンプルで、下書きに原価と売価(割賦売掛金)のT勘定を用意してサクサク解いていけたと思います。ここは得点源に出来た問題でした。

第二問 問2

転換社債型新株予約権付社債の発行側と取得側の処理が問われました。まず、償却原価法として定額法が指示されていますが、実効利子率の資料がパッと目につくので、ここで選択を間違えると大幅に時間ロスになります。気を付けたいですね。

設問(1)で問われた代用払込を受けた社債金額は、社債帳簿価額と額面で解答が割れました。個人的には、額面ではあまりに簡単すぎるので帳簿価額を要求したのだろうな、と推測するのですが、確かに判断しがたいところです。

設問(2)発行側の処理はよく練習している処理だと思いますから多くの受験生が得点できたはずです。一方、設問(3)取得側の処理は、発行側より手薄になりがちです。取得側で有価証券となる新株予約権付社債は、保有目的によって処理が変わります。本問では、「将来の成長を見込んだ中長期的な保有を目的」とあるので、その他有価証券として保有していると判断できます。ならば、権利行使により新株予約権付社債から株式とするとき、帳簿価額で振替え、しかも勘定も投資有価証券で貸借同じです。仕訳いるの?と思わず、貸借同勘定同額で仕訳してください。

第二問 問3

のれんのある減損会計です。原則通りの「のれんを含むより大きな単位」による計算です。唯一気になる点は、設問(2)でより大きな単位で減損損失を求めるにあたり、より大きな単位での将来キャッシュフローや使用価値、正味売却価額が与えられてないので、資産グループのそれらを合算する必要があるところです。特に、回収可能価額を使用価値と正味売却価額の大きい方を選択するにあたり、資産グループ毎に選択した後、合算する必要があります。資産グループはキャッシュフローを生み出す最小の単位としてグルーピングされているので、使用か処分かの選択も資産グループ毎に行うと考えているからでしょう。