第68回(平成30年度)税理士試験 講評 第2回~消費税法

全体的な印象としては、税理士試験らしい良問でした。
理論も計算も解答しづらい問題が含まれていましたが、満点続出では国家試験として批判を浴びるので、作問者も満点を取らせない工夫が必要なわけで、そういったことも含めて、非常に良問だった印象です。

〔理論〕
問1(1)
基準期間の課税売上高が1千万円以下であっても、納税義務のあるケースについての説明問題でした。
納税義務の判定については、計算においても最重要論点になっているので、いくらでも書くことは思いつくわけですが、配点はmaxで15点程度でしょうから、冷静になって、書きすぎないように自制しながら15分~20分程度で仕上げる必要がありました。
まず、次の項目をあげます。
1.課税事業者の選択
2.特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
3.新設法人の納税義務の免除の特例
4.特定新規設立法人の納税義務の免除の特例
5.高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例
あとは、時間と相談しながら、各項目の内容をスマートにまとめていくだけです。
比較的覚えやすい暗記条文なので、他の受験生と差のつきにくい問題です。
予想配点13点中10点を必要得点とします。

問1(2)
消費税の確定申告書の提出期限について、問われました。
どこの専門学校の暗記条文集にも掲載されているような、典型論点です。
日頃から、暗記条文集に慣れ親しんでいる受験生にとっては、努力の報われる問題でした。
もちろん、最初に、「課税期間の末日の翌日から2月以内に」という原則を指摘した上で、特例を3~4つほど記述して、予想配点13点中10点を狙いたいところです。

問2(1)
港湾施設内に臨時で輸出物品販売場を開設した事業者が、輸出物品販売場における免税の適用を受けるために必要な手続きについて問われました。
本問について正確な記述ができる受験生は希でしょうから、合格最低ラインを狙いにいくイメージです。
輸出物品販売場における免税制度の概要と、問題文から輸出物品販売場の許可に係る申請が必要なことが読み取れるので、これについて記述しておけば良いでしょう。
あとは、臨時販売場に係る届出について触れることができれば、といったところでしょうか。
予想配点6点中2点を必要得点とします。

問2(2)
登録国外事業者になるための手続きについて問われました。
満点を取らせないための設問なので、登録国外事業者周辺の制度趣旨を述べるにとどまったとしても、さほど痛手にはならなかったはずです。
予想配点6点中1点を必要得点とします。

問2(3)
消費税の中間納付義務のない者が、その者の希望により中間申告する場合の手続きについて問われました。
仮決算による申告は書きやすい論点ですが、個人事業者の任意の中間申告書を提出する旨の届出手続きについては、書けなかったかも知れないです。
予想配点6点中3点を必要得点とします。

問2(4)
簡易課税制度の適用をやめる場合に関する宥恕規定について問われました。
災害等のやむを得ない事情があるため、宥恕規定の適用があることは誰しもが書けたはずです。
あとは、古くから簡易課税制度を適用していたことから、調整対象固定資産や高額特定資産の仕入等を行った場合の簡易課税制度選択届出書の提出制限の適用を受けない旨に触れることができれば、加点事由となるでしょう。
予想配点6点中4点を必要得点とします。

以上から、理論(配点50点)については、30点程度が合格ラインと予想します。

〔計算〕
問1が簡易課税制度、問2が一般課税の問題でした。
近年の中では最も簡易だったので、計算(配点50点)については、40点程度が合格ラインと予想します。
計算過程については、解答速報に丁寧に解説を入れていますので、そちらを参考にして下さい。