短答式試験の講評(2019Ⅰ)~財務会計論

公認会計士の短答式本試験~財務会計論の講評です。
解答・解説については、以下をご参照下さい。
解答解説(2019Ⅰ)~財務会計論

個別問題~理論

11問が理論の正誤問題でした。理論が例年より少し多めですし、受験上パスすべき問題も分かりやすかったので、計算問題にまわす時間の面では少し楽だった印象です。以下、個別に確認していきます。

問題1は概念フレームワークからの出題です。ア~エすべて頻出論点からの出題であり、容易に正答できたと思います。

問題2は受取手形からの出題です。「為替手形」はこれまでほとんど出題されたことがありませんでしたが、日商の試験範囲から「為替手形」が除外された途端、2回連続で出題されました。今後の出題可能性は低いと思われますが、FINでは、今まで通り、講義でしっかりと取り扱っていきます。しばらくの間、3級用の無料講義にも残しておきますので、「為替手形」が苦手な方はご覧下さい。第6章の55分あたりからです。どこの専門学校よりも丁寧に説明しているはずです。
3級 第6章 受取手形・為替手形

問題3は棚卸資産からの出題です。アは収益性低下の発生原因についての文章です。洗替法か切放法かの選択に考慮されることはあっても、収益性の低下の観点からみて発生原因は区別しないという見解を会計基準は採っています。イは正味売却価額の代えて再調達原価による場合の条件が問われました。確かに製造業における材料等の収益性低下の指標として用いられる場面が多いと思いますが、会計基準では「正味売却価額が再調達原価と歩調を合わせて動くと想定されるとき」としてのみ規定していて、製造業だけに限定されません。うっかり引っかかりそうな文章です。

問題5は「特別目的会社を活用した不動産の流動化」という、受験生はまずパスしている実務指針からの出題です。できなくて何の問題もありません。問題20の関連当事者の開示も、受験上パスで良い問題だと思います。

問題9は新基準の公表を背景とした収益認識からの出題です。ただ、イだけが新基準を前提としてますが、他のアウエは現行の基準等に基づいて正誤判定すれば良いので、そう難しくはなかったはずです。

問題11では、財務諸表の表示として連結損益計算書、包括利益計算書、CF計算書、株主資本等変動計算書の基本的な内容が問われました。難易度的には正答したい問題ですが、会計士試験では財務諸表を全体として作成させるような問題はまず出題されないので、普段意識しないところでもあり、苦手とする方も多いかもしれませんね。

問題13はストック・オプションからの出題です。エだけは論文向けの「新株予約権戻入益は過去の費用の取消ではない」という知識が必要でしたが、他はほぼ計算の知識で対応できました。

問題15はリース取引からの出題でした。こちらも論文向けの論点からイウエが出題されていて、短答対策としてはそこまで深く理解していない、という方には難しかったと思います。

問題17は税効果会計からです。アは計算の知識で対応可能、イは典型論点、エは改訂論点として対策済みのはずです。ウの税率の変更だけは少し細かくて難しかったかもしれませんが、正答は容易だったはずです。

問題19は企業結合・事業分離です。アイの内容自体は改訂論点として対策されていたとは思いますが、アの注記のことまでは知らなくても仕方ないなあ、と思います。ウエの正誤判定はそう難しくはないので正答したい問題でした。

問題21の包括利益の表示は、苦手とする受験生が多いのではないでしょうか。イだけは計算の知識からも正誤判定が容易ですが、その他は自信を持って正誤判定しにくい内容です。アの組替調整額に当期発生その他の包括利益が含まれることに気づかないと正答が難しかったと思います。