第152回日商簿記1級 商業簿記・会計学 講評

商業簿記

解答・解説については、以下をご参照下さい。
解答解説(152回)~ 商業簿記・会計学

問1:損益計算書の作成

今回は定番の決算整理後残高試算表ではなく、損益計算書を作成させる問題でした。ほとんどの金額が決算整理前残高試算表の数値に1つか2つの処理を加味すれば算定できたので、かなり高得点が狙えたのではないでしょうか。問2では株主資本等変動計算書の一部金額を問われていることから、純資産関係がテーマの一つになっていたようです。以下個別にいくつかの論点を見ていきます。

売上高・売上原価では、役務収益・役務原価が含まれていましたが、指示の通りに修正するだけで特に難しくはありませんでした。

ソフトウェアでは、過去の誤謬の訂正が含まれていました。税効果についても未払法人税等を計上するように指示があったので、訂正すべき過年度の損益を税引後で繰越利益剰余金で処理すればよいと気づけたと思います。

減価償却費では会計上の見積りの変更がありました。過去の誤謬の訂正と異なり、将来に向けて影響させますから、未償却残高を残存耐用年数で償却します。

退職給付会計では、20X3年度末の割引率引き下げによる数理計算上の差異の発生年度を20X3年度とするか20X4年度とするかで迷われた方もいたのではないでしょうか。20X3年度末の割引額(退職給付債務)に影響したと考えて、20X3年度発生+20X4年度から費用処理と判断します。

社債はの償却原価法(利息法)は、実は決算整理前残高試算表の社債金額に実効利率を乗じるだけの簡単は計算です。分割償還も定時償還ならば額面償還ですから、実はとても簡単な論点でした。

問2:株主資本等変動計算書の一部金額

①利益準備金の期首残高と③その他資本剰余金の自己株式の処分による当期変動額は、問1の下書きを後から探しても簡単に見つかる数値ですが、④純資産合計の当期変動高は、いくつもの処理が関連するので、予め意識して、集計しやすいように下書きを整理しておく必要がありました。③の繰越利益剰余金の当期首残高ですが、過去の誤謬の訂正があるので、遡及処理の前なのか後なのかはっきりせず、解答速報でも別解が出ています。出題意図を考えれば、遡及処理後を答える方が良かったと思います。

会計学

第1問:空欄補充

定番の空欄補充問題です。前回の出題形式が例年とは大きく異なっていたので、少し心配していたのですが、いつも通りでほっとしました。内容も(4)で会計基準で採用されている親会社説ではなく、経済的単一体説の方が空欄になっていた以外は、即答できたと思います。

第2問:リース取引

4件もあるリース取引の処理を求められました。問題を見てコーヒーをいれに行ってしまったくらい、戦意喪失させられた問題です。

まず、ファイナンス・リースの判定か必要ですが、判定基準が指示されていたので、その点では難しくはありませんでした。簡単な経済的耐用年数基準で判定できるケースが4件中3件ですが、結局はリース資産・リース債務のために割り引き計算は必要です。

中でも備品Dは、「特別仕様」である点から所有権移転ファイナンス・リースと判断させるところや、決算日とリース料支払日が異なるため経過利息の処理も必要なところ等、一番難しかったと思います。

第3問:持分法

持分法適用会社が2社、商品売買はアップストリームとダウンストリームの両方、税効果会計の適用、ということで、論点てんこ盛りでした。
もちろん、講義で全パターンの解説をしていますが、一般的な受験生がここまで手を広げることができていたか、というと中々難しいと思います。
ここは、アップストリームとダウンストリームとで、仕訳が異なるので、仕訳を確りと覚えるように心がけて下さい。