第69回 税理士試験講評 ~ 消費税法

今回の消費税法は、計算が難しかった印象です。理論、特に、簡易課税の問題は、たくさん書ける内容だったので、適当な分量で切り上げて、上手く計算に移れたかも合否を分けるポイントになりました。素点ベースで、理論70%、計算65%程度が合格ラインと予想します。

第一問

理論問題は、問1が輸出免税等、問2が簡易課税制度という、2問構成でした。

問1 輸出免税等

(1) イ. 輸出免税となるための要件、その証明方法について問われました。暗記条文集の問題4をそのまま書けば良い問題です。証明方法の具体的な内容は、他の専門学校でも触れられていなかった様なので、書ける必要はありません。
(1) ロ. 輸出免税制度が採用される理由については、「現地課税主義(消費地課税主義)」がキーワードになります。あとは、国際競争力の確保といった観点からも解答できると良いでしょう。
(2) 「資産の国外移送」の内容と具体例を挙げる問題でした。内容は暗記条文集の問題26、具体例はテキストに掲げているものを書けば良かったのですが、問題文の「課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなされるもの」という文言から、「資産の国外移送」についていることが問われていることが想定できなかった受験生には、苦い問題になりました。

問2 簡易課税制度

(1) 事例問題を前提に、簡易課税制度の適用要件と消費税簡易課税制度選択届出書の提出が制限される場合について問われました。こういった問題は、深入りすることなく、あっさりと時間をかけずにクリアすることを心がけて下さい。「答案構成が非常に悩ましいので、こういった問題に時間を割いてしまう受験生は総得点が伸びない。」と感じることができるようになれば、頭一つ抜け出せる受験生になれます。
(2) 各事業区分の意義とみなし仕入率については、皆が正解できる問題です。
(3) 特例も含めた具体的計算方法についても、「解答にあたり、適宜算定式等を用いる事として差し支えない」という指示に沿って、テキストの設例を思い出しながら、丁寧に解答していくことになります。

第二問

計算は、問1が不動産業を前提とする総合問題、問2が特定新規設立法人を前提とする納税義務の判定問題という、2問構成でした。

問1 総合問題

本試験の総合問題は、処理の分からない取引が4つ以上あると「難しい」、2~3つで「普通」といった印象を持つ受験生が多いのではないでしょうか。そういう意味では、難しいと感じた受験生が多かったと思います。
処理に迷うような取引をピックアップしてみます。
① 居住用マンションの原状回復費用として居住者から 580,000円を受け取ったが、実際の工事支出は 560,000円でした。
② 居住用として貸していたマンションの一室を無断で事務所用として使用していたため、事務所の賃貸へと契約変更した。受取家賃は、契約変更前のものが 960,000円、契約変更後のものが 648,000円であった。
③ 国外にある居住用賃貸マンションに取り付けるための宅配ボックスを国内で 378,000円で購入し、これを輸送した。輸送時の本船甲板渡し価格は 400,000円であった。
④ 資材置き場として、1ヶ月以上貸し付ける予定だったが、実際には1ヶ月未満の貸し付けとなった受取地代が 2,200,000円あった。
⑤ 国外で居住用マンションを賃貸しているため、国外の法律に詳しい国内の弁護士に 540,000円の報酬を支払った。
⑥ 国内慰安旅行費用のキャンセル料 30,000円とキャンセル事務手数料 1,620円を支払った。
⑦ 外国法人が発行する社債を購入するために、国内の証券会社に 80,000円の手数料を支払った。
⑧ ⑦の社債から社債利息 300,000円を受け取った。
⑨ 同業者団体への通常会費を 80,000円支払った。
⑩ 国内に所在する合資会社の出資持分を 3,600,000円で売却した。
⑪ 前期に貸倒処理していた居住用建物の未収家賃 210,000円を回収した。
これらの取引の消費税法上の処理につき、3個以内の誤りなら安全圏内です。多くが過去問に出題済のパターンなので、こういった取引を整理整頓した資料を日頃から繰り返し練習しておくのが合格への近道になります。

問2 納税義務の判定問題

与えられた資料から、特定新規設立法人に関する問題ということは判りますが、これほどのボリュームの問題は解いたことはないはずです。従って、多くの専門学校は、「配点は10点のみで、出来なくて良い問題」と位置づけています。ただ、納税義務の判定は、定型的な計算過程で点数を拾えるので、「ゼロ点で良いということではなく、分からないなりに計算過程を丁寧に書いて、3~4点はもらってくる必要がある。」と考えています。

総じて、日頃の学習の成果を反映できる良問だったといえそうです。