第153回日商簿記1級 講評~商業簿記

本試験、お疲れ様でした。急に寒さが厳しくなった中での受験でしたね。

商業簿記は定番の出題でしたが、決算整理前残高試算表の一部推定があったところ、貸借対照表は一部の金額しか問われなかったところが特徴的でした。以下、個別にみていきたいと思います。

詳細な処理は解説(近日中に公開します)をご確認ください。

1.商品

乙商品で売価還元法が採用されていました。「期末商品の原価の算定と同じ原価率を用いて」と指示のある見本費の原価率に、売価還元原価法と売価還元低価法のどちらの原価率を用いるべきかで迷ったのではないでしょうか。売価還元原価法の方が良さそうな気もするのですが、(2)①に「期末商品棚卸高は、~(正味値下額を除外して原価率を算定する方法)による原価率を乗じて求める」とあるので、売価還元低価法の原価率を用いる方が出題意図に適いそうとの判断をしました。

2.貸倒引当金

貸付金が貸倒懸念債権となり、キャッシュ・フロー見積法による貸倒引当金の設定が求められました。将来のキャッシュ・フロー(1%の利息と元本返済)を当初の約定3%で割引計算します。ここで、端数処理で年度毎に端数処理する場合と割引価値で端数処理する場合で1だけ解答がズレてしまいます。損益計算書の各段階の利益と貸借対照表の繰越利益剰余金に影響するので、どうしても気になってしまいますが、「どっちもありですよね!」とのアピールに敢えて他校の解答速報とは違う方で解答・解説を公表しました。こんなことで合否を左右すべきでないと思います。

3.固定資産

固定資産は決算整理前残高試算表の推定があるため、期首帳簿価額から確認していかなければならないところが面倒でした。

建物は減損会計も組み合わさっているので、まず取得原価を推定して、当期の減価償却を済ませてから減損処理です。うっかり期首帳簿価額で減損処理しないように注意しましょう。車両は200%定率法で償却率から求める必要がありました。また、改訂償却率0.5と当期が耐用期間の終盤2期分にあたることから、期首帳簿価額に改訂償却率を適用する点もポイントでした。

備品はファイナンス・リース取引となっています。問1②と減価償却だけなら比較的簡単に求められますが、問3で問われている期末のリース債務残高まで求めようと思ったら少し大変です。他の問題との兼ね合いで一旦保留にしても良かったですね。

4.新株予約権付社債

まず、区分法ので処理する場合に新株予約権の金額をどうすべきかがポイントですが、与えられた普通社債のデータを使うしかないので、比較的簡単に算定できたと思います。社債利息は、償却原価法の利息法+期首の社債金額の推定が必要なため、手間が掛かりますが発行期から順に確認する必要がありました。

5.退職給付会計

ここでは、未認識数理計算上の差異の費用処理がポイントです。まず、「年金資産の運用成績の悪化による」との指示から借方差異と判断でき、発生額と期首残高の両方が与えられているうち発生額の1/10を費用処理できれば正解です。


全体として問われた内容自体に難しい印象はありませんでしたが、推定が多かったので、取引開始から終了までの会計処理全体を理解しているかが問われた問題であったと思います。

以上です。