第66回(平成28年)税理士試験分析-第1回

前回の税理士試験の問題や傾向について振り返って分析してみたいと思います。

第1回目は簿記論です。

 第一問:個別問題

出題分野は以下の通りでした。

問1:一般商品販売の払出仮定、記帳方法の仕訳問題

問2:税効果会計の仕訳問題

問1:一般商品販売

問1ではまず、先入先出法を前提に、①総記法、②三分法、③売上原価対立法の3法について試算表の残高や決算整理仕訳が問われています。その後、その都度後入先出法、総平均法、最終仕入原価法での売上原価が問われています。

こうした問題は、下書き段階の段取りの良さが得点に直結します。過去問集などでは商品有高帳が示されていることが多いですが、本試験の現場でそこまで丁寧な作業をしている暇は当然ありません。期首と当期仕入の単価と数量が、売上原価と期末にどのように流れていくかを俯瞰できる下書きが用意できれば十分です。普段の学習で自分なりの方法を確立してこれたかが試されます。

この問の中では唯一、③売上原価対立法だけはマイナーな記帳方法であり、知らなければパスしても良かったと思います。最もメジャーな②三分法と対比すると、「仕入」でなく「商品」勘定を使い、販売時にいちいち「商品」から「売上原価」勘定へ振り替える方法です。決算整理が不要で、期中に「売上高」「売上原価」「商品」残高の全てが把握できる利点はあるのですが、その煩雑さから実務的にもあまり採用されません。

問2:税効果会計

問2では、3期分の税効果に係る仕訳が問われています。内容は、減価償却・貸倒引当金・その他有価証券・圧縮記帳(積立金方式)です。

制度上の税効果会計では資産負債法が採用されていますので、期首と期末の繰延税金資産・繰延税金負債の差額を法人税等調整額とする仕訳を用意することになります(その他有価証券等を除く)。

例えば減価償却の税効果は、各期の会計上と税務上の減価償却後帳簿価額を比較して一時差異を求めて、税率を適用して繰延税金資産を期首・期末と求めて差額で法人税等調整額を、というよりも、会計上と税務上の減価償却費の差額(定額法なら毎期一定額)から直接に法人税等調整額を求めた方が早いのではないか、という考え方もあります。

確かに期間差異のように扱う後者の考え方は、税効果会計の学び始めには有効なのですが、税率の変更がある場合は却ってややこしいですし、個人的には問題によって解き方を変えるのは好きではないので、前者の資産負債法らしい解き方が良いと思っています。