令和2年度 公認会計士論文式試験 講評~経営学
選択科目の経営学について講評していきます。ますます第2問(財務論)の重要性が高くなり、前年度より難易度が増した印象です。しかし、明らかに埋没とできる問題も多く(あなたが知らない用語は他の受験生も知りません!安心してください。)、受験生の多くが対策している基本的な問題を確実に得点していけば合格ラインに到達できたと思います。素点ベースで半分くらいを目安に考えてください。以下、個別に確認していきます。
第1問:組織論・戦略論
問題1:イノベーション
問1のイノベーションの分類・名称は、選択肢がありますし基本的な知識として確実に正答できる問題です。問2の「承認図方式」は管理会計で学習している内容ですので、これも正答できたと思います。問3は、EMS(エレクトロニクス製品の製品製造を請け負う企業)とODM(ブランド企業から開発・設計から生産までを一貫して受託する企業)とで迷ったのではないでしょうか。問題文中の「設計開発」という文言からODMが有望かと思います。
問4~6は埋没と考えて良いでしょう。こうした用語まで網羅しようと思うと、経営学と他の科目との学習時間のバランスがとれなくなるので、受験上はスルーしていきましょう。
問題2:組織論
問1のバーナードの公式組織の3要素は必須の知識ですから正答できたはずです。問3の連結ピンも基本的知識なので正答できたはずです。問4の図は、連結ピンの説明として授業等で一度は見ているものなので、それを思い出して書けるとよかったでしょう。
問2のスパン・オブ・コントロールの空欄補充問題は、近年の傾向として出題されるようになったその場で対応するしかない問題です。「メンバー5人で(1)は5、(2)は20、(3)は75」という具体値をヒントにして公式の使い方を確認していけば、なんとか埋められたと思います。問5もその場で対応するしかないタイプの問題ですが、図Xと図Yが良いヒントになりますので、問2よりも解きやすかったでしょう。
問6は組織構造の優劣に関する記述問題でした。問題文中に「課題解決の時間や正確さの点で比較すると」とあるので、これを手がかりに説明すると良かったと思います。
問題2:財務論
問題1:マルチ・ファクター・モデル
全体として後回しにしてよい問題だと思います。問題2や問題3が比較的容易なので、そちらに時価を割く方が得策でした。
問1はε以外は表1と2の数値を代入するだけなので、εの(期待値ゼロ)にピンとくれば正答できたかもしれません。問2の①②は、自信がないながらも計算できたかもしれません。①はαを投資割合40:60で期待値とし、②は問1の証券Aの結果と、同様にして求めた証券Bの期待リターンを投資割合40:60で期待値とします。③④はパスでいいでしょう。問3も埋められなくても合否に影響ないと思います。
問題2:債券投資
問1は債券価格、スポット・レート、フォワード・レートの関係性から1年物~3年物の割引債について各種数値を求める問題です。3年物では3乗根の扱いが問題となるのですが、P92.13=F100/(1+r)3という債券価格の算定式を利用すれば3乗根の計算を回避できます。数学的な処理能力が問われたともいえますね。①~③は当然として、④⑤も頑張れば完答できたと思います。
問2-1は、「傾きが緩やかになる現象」なので、「フラット化」が有望と思えたら正解でした。問2-2は基本知識として正答できたと思います。
問題3:ペイアウト政策
問1、2の計算は特に難しい点もないので正答できたと思います。金額単位のズレにだけ注意していれば問題ないでしょう。
問3は財務レバレッジの知識から正答できたと思います。問4は「金庫株=保有している自己株式」であることと企業法の知識があれば正答できた問題です。
問題4:ボーモル・モデル
問5のEOPの問題は管理会計論の中で学習していると思います。これをヒントにして、問1~4を解くことになります。
問1~4では、EOPの在庫の発注費を換金費、在庫の保管費を現金保有の機会原価としての利子に置き換えて考えていきます。機会原価としての利子を考慮することから、問1はアが選択できると思います。問2において、換金回数5回(=1,000万円÷200万円)として換金費0.2万円(=0.04万円×5回)と機会原価5万(=200万円÷2×5%)が求められるように、問3もEOPと同様に総費用最小化点を求めていきます。問4はEOPでの発注費と保管費のトレードオフ関係と同様に考えられます。
個人的には、受験生間で出来不出来に最も差が出やすいのがこの問題な気がします。カンの良い方は完答も無理ではないけれど、見たことがないからとパスしてしまった方もおられたかもしれません。計算自体はとても簡単なのでもったいないですね。
以上です。