公認会計士短答式試験 平成30年度第Ⅰ回 講評~第2回
財務会計論
今回の財務会計論は、例年よりは簡単だったようです。もちろん、難しい問題も含まれていますが、明らかに時間がかかり過ぎる問題と分かる等、安心してスルー出来る問題で、得点すべき問題に時間を割くことができたと思います。70~75%位は合格に必要になってくるかもしれません。
解答解説はこちら → H30Ⅰ-財務会計論
計算問題(個別論点)
今回は、計算問題の出題比率が上がり、個別問題13問、総合問題の小問が4点×6問(例年は6点×4問)の128点になりました。その分、時間がかかりやすくなっていますから、適切に時間配分できたかが勝負の分かれ目になったと思います。
時間がかかる過ぎるスルーすべき問題としては、問題13の金利スワップ、問題18の四半期財務諸表、問題19の為替換算調整勘定でしょうか。
問題13の金利スワップは、①受取利息が計上されない、②特例処理では期末時価評価が行われない、という知識だけで5か6かに選択肢が絞れはするのですが、将来キャッシュ・フローの割引価値である金利スワップの時価は、通常の問題では与えられるので計算したことのない方がほとんどのはずです。「洗い替え処理はせず、評価差額の純変動額を計上」との指示から算定方法は分かるのですが、解かない方が賢明でした。
問題18の四半期財務諸表は、3四半期累計の当期純利益を求めて2四半期累計の当期純利益を控除すれば正解が求められます。①季節的に変動しない原価差異がある、②事業年度期首の繰延税金資産を推定する必要があった、という2つのひっかけ?が含まれており、これも後回しにすべき問題でした。
問題19の為替換算調整勘定は、一見資料も少なく解きやすそうです。実際計算自体は簡単なのですが、3期分を計算する必要があり、時間配分からいうと少なくとも後回しでしょう。
逆に、難しげに見えて実は解いた方がお得だった問題として、問題8の引当金、問題11のキャッシュ・フロー計算書、問題16の数理計算上の差異、があります。
問題8の引当金は、4つの引当金の内の1つとして、退職給付会計から小規模企業の特例処理として要支給額を用いた計算を要求されています。それだけでパスしたい気持ちになりますし、比較指数の0.8って何?って感じでしょう。しかし、要支給額に基づく数値が退職給付債務の代替となる知識と、要支給額に何らかの係数を乗じた計算の経験から、「当期末要支給額に比較係数をかければよさそうだ」と思いつけたら正答できました。
問題11のキャッシュ・フロー計算書は、形式上は営業活動・投資活動・財務活動のキャッシュ・フローをすべて求めさせる問題にはなっているのですが、実は、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの正解は選択肢3にしか含まれず、どちらかさえ求められたなら正答できました。しかも、どの活動のキャッシュ・フローかを判断する(1)~(6)の中に投資活動によるキャッシュ・フローは含まれておらず、与えられた数値がそのまま正解になるという簡単さでした。(1)外貨建の現金及び現金同等物にかかる為替差益、(3)現金同等物に含まれる有価証券の取得による支出、がどの活動のキャッシュ・フローにも含まれないという小さなトラップはありましたが、多くの受験生の方は難なく避けられたのではないでしょうか。
問題16の数理計算上の差異は、前年度の論文式試験の理論問題として出題された論点である平均残存勤務年数の変更が出題されました。理論的には論ずべき内容はあるものの、計算自体は「会計上の見積りの変更」として取り扱えば良いだけなので特に難しくはありません。あまり深く考えず、固定資産の償却期間の短縮と同様に処理すれば正答できました。