公認会計士短答式試験 平成30年度第Ⅱ回 講評~第2回

今回は財務会計論です。

前回(平成30年度第Ⅰ回)よりは得点しやすかった印象です。ただし、前回は受験上スルーすべき問題が明らかであったのに対して、今回は、一見見慣れた論点の中にマイナーな内容が含まれていたりトラップがあったりと、実は差が開きやすい出題でもあったような気もします。個別の内容は解答解説をご確認ください。

理論問題

問題11財務諸表の連携、問題12金融商品の発生と消滅は、計算の知識では対応しきれない難しい問題でした。

問題14のリース取引は計算の知識で対応できる文章ばかりですが、貸し手の処理が問われていたので、対策されていないと難しかったかもしれません。特に中途解約の規定損害金が貸し手の売上高になるというのは、一度でも解いたことがあれば忘れないポイントですが、知識がなければ気づけない誤りであると思います。

問題22の企業結合の取得原価は、エ「合意公表日の時価か企業結合日の時価か」というような典型論点からの出題でしたから、計算の知識でとはいかないまでも、スムーズに正誤がついたのではないでしょうか。

以上の4問から2問は正答して残りの6問は確実に、というのが合格ラインかと思います。

残り6問の中には、問題1会計公準・問題5固定資産・問題18繰延資産が含まれています。こうした伝統的論点からの出題が最近は多いようです。意識しておかないとどうしても新基準の方に学習が偏りがちになるので、注意が必要ですね。

 

計算問題-個別論点

前回のように実務的すぎる問題は出題されませんでしたが、まさかの伝票会計(問題2)には驚きました。日商簿記2級での学習内容ですから、日商簿記から勉強を始めた方にはなんてことのない問題とは思いますが、そうでない受験生には戦意をそぐタイプの問題です。でも、勘定名しか問われていないので、荷為替や船荷証券を少しでも知っていたら見当をつけることができたかもしれません。入門期の学習を思い出せたかだけで、次回に向けて、特に対策を練る必要はないと思います。

問題4は、固定資産の取得原価や償却開始のタイミング等が問われました。遊休資産も償却対象である、賃貸用建物の使用開始=入居可能というところが迷いどころでしょうか。

問題6の資産除去債務は、除去時の支出の見積りの変更(増加後減少)が論点です。このパターンを解きなれて計算の仕組みが理解できていた方は、取得時から丁寧に解かなくとも、減少後の支出見積りを加重平均割引率で2年分割り引けば解答が求められることに気づけたと思います。

問題7の引当金はトラップだらけの問題です。貸倒引当金は資産の部の控除項目なので対象外である、賞与は引当金でなく未払金である、債務保証は引当金の要件を充足しない、と3つもトラップがあり、結局、製品保証引当金だけ求めればよい問題でした。

問題9では特殊商品売買から割賦販売が出題されました。特殊商品売買は結構な頻度で出題されますし、今回もそうでしたが大抵簡単なので対策しておく価値はあると思っています。

問題10株主資本等変動計算書は、もはや総合問題に近いボリュームです。最近こうした量の多い問題が個別問題の中に継続して出題されています。今回は効率的に解く手段もなかったですし、受験上スルーでよいと思います。

問題13の有価証券は一見見慣れた論点ですが、ゴルフ会員権の期末評価が取得原価であるという知識が必要で、誤って時価を選択した場合の答えも用意されているという点でも正答が難しい問題でした。

問題20外貨建取引は、為替予約の3つの処理が組み合わされた難しい問題です。一つ一つの処理は簡単ですが、組み合わせられるとどうしたらよいか分からなくなりがちです。正答できなくても仕方がないと思います。

計算問題-総合問題

連結の総合問題は、前回に引き続き、4点×6問という構成でした。
一つ一つの処理は、学習済みのもので、難易度は高くありませんが、税効果が導入された上で、①土地の評価差額、②期末商品の未実現利益、③貸倒引当金繰入額の3つの論点は1セットになっていて、3つとも合わせて初めて、得点に結びつきます。
①~③が、繰延税金資産、期末利益剰余金、親会社に帰属する当期純利益にどのような影響を与えるのかが理解できていれば、6問とも正解できます。なので、全問正解した受験生も少なくなかったのではないか、と予想しています。
その一方で、①~③のどれか一つでも誤ると、問題24~問題26、問題28を失います。そうすると、問題23ののれんと問題27の売上原価しか正解できません。つまり、点数に差の出やすい問題だったことになります。
ただ、本問で問題23、27しか正解できずに、16点を失ったとしても、財務会計論全体で60点の失点まで許容されているわけですから、他の問題で十分カバーできたはずです。

このところ、連結の総合問題の難易度は安定しているので、次回もこのレベルに合わせた学習をしておけば大丈夫だと思います。