短答式試験の講評(2019Ⅰ)~監査論

問題平成31年度公認会計士短答式試験第1回、監査論の講評です。今回はここ2~3回に比べて難しくなった印象です。特に前半の制度論等は、細かすぎる内容を問うているものも多く、そこまで詳細な規定まで学習範囲を広げることは費用対効果を考えると受験生に酷すぎるでしょう?と感じました。以下、個別に確認していきたいと思います。

財務諸表監査総論

問題1が総論からの出題でした。イの「監査人が違法行為の兆候を発見した場合の経営者等への報告が適正性の保証の対象外での対応」というところが、文章の読み取りという点で迷ったかもしれません。財務諸表監査において監査人がすべて保証業務の枠組みの中で対応する、という知識と、不正・違法行為の発見は監査の目的ではない、という知識が、おかしな勘違いを生まなければ正誤判定はついたと思います。アウエはどれも正誤判定が容易ですから、たとえイで迷っても正答できたとは思います。

制度論

問題2.4.5の3問が制度論からの出題でした。問題2の公認会計士法、問題4の金商法の規定については、原則規定ではなく例外的状況に関する規定が問われており、分からなくても仕方のない問題です。問題5の会社法監査の規定は、監査論というより企業法の知識が役立ったであろう問題です。企業法の学習において、監査論のために監査役等・会計監査人の規定を丁寧にみていた受験生の方には容易であったと思います。

主体論

問題3.12が主体論からの出題でした。問題3では、アは頻出論点でしたが、その他はマイナーな内容でした。これもできなくても良い問題でした。問題12の正当な注意と職業的懐疑心では、アイは判断に迷う内容でしたが、ウエの誤りが明らかなので正誤判定は容易だったと思います。

保証業務

内部統制監査から2問、四半期レビューから1問の出題です。内部統制監査は例年難しいことが多いですが、問題6はイウエが頻出論点でしたから容易に正答できたはずです。問題8の四半期レビューも、年度の監査との対比や実証手続きを実施しないこと等、頻出論点が多く正答できたと思います。

横断的論点

問題9~11.20のうち、品質管理から2問、不正リスクと諸基準の適用から1問ずつの出題でした。継続企業の前提からの出題はありませんでした。品質管理では審査に関する問題10が、実務を知っていれば分かるけど・・・という内容で、受験生には難しかった気がします。

問題20が不正リスク対応基準からの出題というのが定番化しつつあります。アの循環取引の不正は設定前文の内容からで難しかったと思いますが、ウエは頻出論点ですからできれば正答したかった問題でした。

実施論・報告論

今回の実施論(問題13~17)、報告論(問題18.19)はすべて正答できる問題でした。ここまでで難しさにめげていた受験生も、この6問で息を吹き返したはずです。むしろ、この6問を正答できなければ、今回は合格点まで得点を引き上げることが難しかったといえるでしょう。

もうじき監査基準の改訂が適用され(平成32年3月決算と33年3月決算の段階的な適用)、監査報告書の記載内容も変更されます。例年、監査基準の改訂を挟んで、改訂の前後の内容が高頻度で出題されますから、現行の監査報告書の記載内容も含め、報告論は要注意分野と心得ておくべきでしょう。


このところ比較的容易であったことから考えると、今回は難しかったとはいえ、65%位は得点したかった問題でした。

以上です。