日商簿記・税理士・会計士の試験比較(簿財編) 第2回
日商簿記1級商業簿記・会計学」、税理士試験「簿記論・財務諸表論」、公認会計士試験「会計学(財務会計論)」の比較分析の第2回です。
今回は税理士試験「簿記論・財務諸表論」の出題傾向・対策の分析です。
Vol.2~税理士試験「簿記論・財務諸表論」
「簿記論」は〔第一問〕総合問題、〔第二問〕個別問題、〔第三問〕総合問題というのが標準的な出題形式です。試験時間は2時間ですが、すべての問題を解ききるには多すぎる出題量になっています。
問題が指定した決算整理後残高試算表または財務諸表上の10か所前後の金額を求めさせる問題が標準的なので、必要なデータを能動的に選び取る能力も要求されます。
内容面でも、「財務諸表論」〔第二問〕では基本的処理を中心に出題しているのに対して、この〔第三問〕は実務家が作成するとあって、実務的・事例的条件が組み込まれていて解きにくさを感じる場合があります。解きやすいところから優先的に処理していく必要がありそうです。
公表されている合格基準は60%ですが、年度によって難易度にムラがある割には合格率が安定しているので、恐らく傾斜配点が行われているのでしょう。この点からも、受験生の多くが得点できそうな箇所を取りこぼさないように、解きたいところだけを解く能力が求められるようです。
〔第三問〕総合計算問題では、決算整理型の主問題に販管費の内訳や税効果会計に関する注記等の派生問題が組み合わせられて出題されています。商業だけでなく製造業も頻出ですので、製造原価報告書も派生問題として作成を要求されることが多いようです。
決算整理型の主問題は、含まれる論点数は多いですが、いずれもあっさりした内容で基本的な処理がマスターできていれば攻略しやすいものです。財務諸表の金額欄のほぼすべてが解答欄になっているため、金額が用意できた都度順次記入していく解答スタイルになると思います。2~3割の勘定名が空欄になっているので、記載区分も正確に把握しておく必要があります。
論点としては、現金・預金、棚卸資産、有価証券、金銭債権の貸倒引当金設定、減価償却、ソフトウェア、賞与引当金、税金、税効果会計は定番であり、減損会計、リース取引、資産除去債務も高い頻度で出題されています。日商簿記1級や公認会計士試験では定番化していない当座預金の調整や税金、税効果会計が必ずのように出題されるところが特徴的です。