第69回税理士試験 講評~簿記論

今回の簿記論は、例年になく適度なボリュームで非常に解きやすかった印象です。手応えを感じつつ会場を後にした受験生の方が多かったのではないでしょうか。以下、各問題について講評していきます。解答解説は現在作成中ですので、しばらくお待ちください。

第一問

第二問に比べて比較的簡単な問題でした。45分くらいを目安としてしっかり得点したいところです。

問1 商品売買取引

一般商品売買について、勘定の空欄補充や払出仮定の推定等の問題でした。非常に簡単で10分もあれば完答できたと思います。

問2 純資産の取引

設問(1)~(4)は新株発行や自己株式の取得等の会計処理、その結果としての残高等を求めさせる問題でした。いずれも基本的処理なので正答できたと思います。ただし、設問(3)は、前期の当期純利益が前期決算日時点の勘定残高に含まれているかの判断が分かれるところで、大手専門学校の解答速報でも見解が割れています。

分配可能額については、はなから捨てていた方もいたのではないでしょうか。とてもシンプルな設定だったので、少しでも対策していたら正解できたので、もったいなかったかもしれません。

設問(5)は株式交換です。テキストに掲載されている設問とほぼ同じ問題ですが、テキストでは連結B/Sの作成まで解答させているのに対し、その他資本剰余金の金額しか問われなかったので、少し戸惑ったかもしれないです。

第二問

第一問に比べると難しい問題でしたから、解きやすいところを効率的に処理して、第三問に移るが吉でしょう。半分くらい正答できたら大丈夫かなと思います。

問1 外貨建取引

為替予約取引について(1)振当処理と(2)原則的処理(独立処理)の両方が問われました。振当処理は出題頻度も高く十分対策されているはずなので、しっかり解きたいところです。独立処理は外貨建取引とデリバティブ取引を分けて処理するので、これで倍の手間が必要ですし、2期分の損益を求められているという面倒くささですから、後回しにしてもいいと思います。ただし、次の退職給付会計に自信がない場合は、ここで頑張っておく必要があるでしょう。

問2 退職給付会計

未認識を含む数理計算上の差異あり過去勤務費用あり、退職給付費用や退職給付引当金さえ求めれば良いという問題でもなかったので、退職給付会計の仕組みを理解していないと解きにくい問題でした。

実質的にX2年度から処理していけば良いのですが、数理計算上の差異の費用処理が定率法なのが珍しかったですね。一部推定もあるので、「退職給付債務ー年金資産±未認識項目」の関係性を理解している、数理計算上の差異等の有利差異・不利差異の判別が正しくできる必要がありました。

問3 連結会計

追加取得と税効果会計が論点とされていましたが、成果連結もなく、処理で迷うような論点は含まれていませんでした。テキストに掲載されている設問とほぼ同じ問題だったため、受講生にとっては10分程度で美味しい8得点となりました。最近、連結や企業結合も出題されるようになっています。連結の講義時間は実は短いので、対策しておくと良いでしょう。

第三問

決算整理前残高試算表に決算整理等を加味して決算整理後残高試算表の数値を求めさせるという典型的な出題形式でしたが、例年に比べると半分ほどの問題量で驚くというか拍子抜けするほどでした。この第三問をどれだけ得点できたかが合否を左右しそうです。

「商品・売上債権・貸倒引当金」をひとまとまりとして、時間配分として30分以上かけられるならここから解くことになりますね。商品には特殊商品(委託販売)も含まれていますが、指示が丁寧なので迷わず解けたと思います。貸倒引当金では、貸倒引当金の設定自体は特に問題ないですが、税効果会計の指示を丁寧に拾う必要がありました。

残りの論点は、基本的にそれぞれ独立しているので、得意なところから処理していくことができたと思います。

圧縮記帳は積立金方式が採用されているので、税効果会計も考慮することになります。期中の処理なので積立金を半期分取り崩すことになりますが、いったい全額計上して減価償却同様に半期分取り崩すと考えると処理しやすいと思います。

のれんには減損の兆候があり、原則通りより大きな単位で減損処理していきます。前T/Bが償却前なので先に償却計算してから減損の判定をするところがポイントなのですが、これも丁寧な指示があり間違えようがなかったですね。

有価証券では保有目的の変更があったⅠ社株式で、本来保有目的の変更前の損益を確定させる必要があるのですが、本問は時価の変動がなく帳簿価額で引き継がれることになっていました。

以上です。