第69回 税理士試験講評 ~ 法人税法①
今回の法人税法は、理論、計算ともに適度な難易度でした。計算は、重要論点からの出題が多く、法人税法の学習を始めて1~2年の勢いのある受験生が合格しやすい内容でした。素点ベースで、理論70%、計算70%程度が合格ラインと予想します。
第一問
理論問題は、問1が「事業年度の意義」と「みなし事業年度として取り扱われるケース(3つ)」、問2が「交際費の取扱い」という、2問構成でした。
問1 事業年度
一般的な理論問題集に掲載されている基本問題なので、ポイントを押さえつつ、簡潔に解答すべき問題でした。
問2 交際費等
(1) 交際費の意義、(2) 租税特別措置法及び同施行令に定められているもの(5つ)、(3) 損金算入限度額、(4) 接待飲食費の意義については、どこの専門学校のテキストにも載っている論点なので、正確な答案が求められます。(5)の事例問題は、会計士の過去問で出題されていたものもありますし、受験生らしく、「定義要件へのあてはめ」という形式を守って答案を作成すれば、合格点がもらえるはずです。
第二問
計算問題は、問Ⅰが租税公課、リース、有価証券、問Ⅱが棚卸資産、減価償却、役員給与、繰越欠損金という、構成でした。
問Ⅰの問1 租税公課
租税公課は、納税充当金支出事業税等 3,490,000(減算・留保)、損金経理納税充当金 48,750,000(加算・留保)、未払事業所税否認 1,080,000(加算・留保)、役員給与損金不算入額 20,000(加算・流出)は簡単なので合わせる必要があります。つまり、少し悩ましいのは、中間納税分です。
租税公課と受取配当については、公認会計士の租税法の方が難しい問題が出題されるので、中間納税分以外は、会計士受験生でも上記のように解答できます。会計士試験の場合は、最終的な結論を純額で解答するので、本問の中間分については、事業税分を3,720,000(減算)とします。これで良いのであれば、会計士受験生も全て正解ということになります。ただ、税理士試験の場合は、これを4つにバラして、仮払税金認定損 19,700,000(減算・留保)、損金経理法人税等 12,990,000(加算・留保)、損金経理住民税 2,740,000(加算・留保)、損金経理附帯税等 250,000(加算・流出)とする必要があります。税理士は、実際に申告書を作成するのが仕事で、会計士は、申告書の記載の辻褄が合っているかを監査するのが仕事なので、本試験もこういったところを反映していて、興味深いですね。
問Ⅰの問2・問3 リース
問2では、所有権移転外リース取引と所有権移転リース取引のいずれに該当するかが問われているので、「中途解約が禁止されている」といった答案は、論点ずれです。「リース期間終了後には、無償で当社に譲渡される契約となっている」、又は「リース期間が耐用年数に比して相当短い」ことを論拠に「所有権移転リース」となることを解答することになりますが、前者による模範解答づくりをしている専門学校が多いです。
問3は、(大原&LEC)と(TAC&東京CPA)とで解答が割れています。前者は特別償却(青色中小企業者が新品で160万以上の機械装置を取得した場合)を適用しているのに対し、後者は適用せずに解答しているためです。本試験を解く際に迷った受験生も多かったと思いますが、「新品」かどうか不明のため、特別償却を行わずに計算し、最後に、「新品であれば特別償却の適用がある。」旨のコメントをしておくのが模範的な受験生の答案といえそうです。
問Ⅰの問4 みなし配当
みなし配当については、「税務上の仕訳」と「会計上の仕訳」を下書き用紙に書いて、「税務上の調整」を行うのがスタンダードな解法になります。仕訳については、先に科目だけ書いて、後から金額を書き加えていきます。いつも通り解き始めると、B社から通知されているはずの「払戻割合」の資料がありません。その代わりに、前期末の純資産額や減少した資本剰余金の金額が与えられているので、これらを使って払戻割合0.295を算定します。これで、「税務上の仕訳」が完成しますが、ここで、源泉徴収所得税の金額が誤っていることに気付くはずです。おそらく、源泉徴収所得税の金額からみなし配当の金額を逆算させないように、作問者が故意に誤った資料を与えたのでしょう。しかし、受験生は相当に混乱したはずで、普通なら、士気も下がってしまいます。しかし、こういったことは税理士試験では日常茶飯事なので、気にせず、前へ進んで行くしかありません。ここで、めげなければ、問4のみなし配当1,140,000と問5のB社株式計上もれ1,077,650が正解できます。
続きは、また明日・・・・