第69回 税理士試験講評 ~ 法人税法③

問Ⅱの問6 棚卸資産の評価

問Ⅱの問6~問9は、甲会社が100%子会社である乙社を適格合併したケースを前提としています。
乙社が保有していた棚卸資産に対しては、甲社の評価方法が適用されるため、届出を行っていない甲社では、法定評価法である「最終仕入原価法による原価法」が適用されます。H商品の物価変動とI商品の過剰生産による単なる時価の変動は、そもそも評価損が計上できないケースなので、会社計上評価損は別表4で加算留保する必要があります。J商品の季節商品の売れ残りは評価損を計上できるケースですが、時価を超えて計上した評価損 100,000円については別表4での加算留保が必要です。

問Ⅱの問7 減価償却

合併により受け入れた資産については、適格合併なので、時価評価せずに、被合併法人(乙社)の取得原価、耐用年数等を引き継ぐことになります。

問Ⅱの問8 役員給与

給与支給額の変更が「分掌変更による臨時改定」に該当するかについては、合併会社である「甲社での職務内容が合併前後で変更されたか?」で判断します。N氏は、合併前は「甲社の財務担当取締役」でしたが、合併後は「甲社の財務担当兼営業担当取締役」となっており、分掌変更がありました。このため、甲社での給与が月額60万円から110万円に変更されたのは、臨時改定事由によるものといえ、N氏については別表上の調整は不要となります。これに対し、O氏は、合併前後で給与が80万円から90万円に変更されいますが、「甲社の総務担当取締役」の地位に変更はなく、「分掌変更による臨時改定」に該当しません。期首から3ヶ月以内の変更にも該当しないので、変更後の増額10万円×6ヶ月分を別表4で加算する必要があります。

問Ⅱの問9 繰越欠損金

繰越欠損金については、最近の改正論点ということもあって、公認会計士試験では2017年、2018年と2年連続して問われています。税理士試験でも、2018年は理論で、本年2019年は計算で出題されました。こういった改正がらみの問題は、先に公認会計士試験で出題され、次の年に税理士試験で出題されることが多いです。会計士試験は学者中心、税理士試験は実務家が中心になって作問するので、学者の方が新しい論点に飛びつきやすい傾向にあるようです。会計士の試験問題は本試験の直後に公表され、誰でも入手可能です。来年、税理士試験を受験される方は、来週実施される2019年度の会計士本試験の出題論点もチェックしておかれると良いでしょう。