公認会計士 論文式試験(令和元年)経営学~講評
今年の経営学も「例年通り」の出題形式でしたが、問題毎の難易度のバラツキが大きかった印象です。以下、個別に確認していきます。
※ 第2問 問題4の講評が抜けていましたので追加しました。
第1問:組織論・戦略論
いつも通り、6割の答案がそつなく用意できていればひとまず安心してください。第2問財務論の問題2と問題3が比較的易しかったので、そちらで頑張れていれば5割程度でも大丈夫そうです。
問題1:製品ライフサイクル、PPM
問2~5のPPMの論点は比較的得点しやすかったと思います。差が出たとすれば、相対市場シェアを概念としてではなく数値として要求されたので、「相対市場シェア=自社シェア÷最大競争相手のシェア」を覚えていたかどうかでしょう。問6は与えられた用語が大きなヒントになったので、知識がなくても近しい内容を記述できたのではないでしょうか。
問題2:グローバル組織
問1~3の空欄補充等は比較的容易でした。問4は試行錯誤するにもデータが少なすぎるので、できなくても仕方ないと思います。問5はキーワードの「成果の世界的共有」が書けていれば大丈夫です。
第2問:財務論
解答箇所ベースで、問題1は3/6、問題2は5/6、問題3は6/7を解答できていれば、第1問で多少失敗していても第2問で十分カバーできるはずです。
問題1:証券投資
例年より誘導が少なく、計算手続きも面倒なものばかりで、財務論の中で一番の難しさでした。初見は解きなれた出題に見えるので、ここで時間をとられると後が苦しくなりそうです。全てが関連してそうで、実は、問1の①と②、③と④、問2と問3の3組に分かれていて、それぞれ独立して計算できるので、この3組の内1.5組(個人的には③④の資本市場線と問2のβを計算して期待リターンを求める)位の計算ができれば良かったのではないでしょうか。
問題2:MM理論
問1はMM理論の第2命題、問2は修正MM理論からの出題です。ここは是非正答したいですね。問3も迷わず選択できるはずです。問4は問題文中の説明と知識のある用語から消去法でなんとか選べたかもしれません。
問題3:財務分析
問1のデュポン分解が、丁寧な方ほど沼にはまってしまう怖い問題でした。表1から売上高当期純利益率をもとめて、表2の②に当てはめたら、あとは「ROE=収益性×効率性×安全性」で計算してしまえば何の問題もないのですが、「念のため検算しよう」と株主資本や総資産を推定して計算しようとすると沼にはまります。Y社が有利子負債がないのに安全性が1.35倍になっている(無利子負債がある想定です)ところなんかが曲者なんです。
④の総還元性向は、配当と自社株買いの当期純利益に対する割合として求めます。配当性向が配当の当期純利益に対する割合であるように、自社株買いも株主への還元の一種だから配当と同列に考えて計算すれば良いとする指標です。
問2は完答可能な問題です。
問題4:オプション
問1の空欄補充(選択肢あり)の①②は正答できたと思いますが、③は難しかったと思います。プットコールパリティの式を導出するプロセスが問われたなら、誘導もあるでしょうし答えられたかもしれませんが、プットコールパリティの式自体を覚え切れてない方も多い気がするので、その場合お手上げです。ちなみにパーチェシングパワーパリティとは「購買力平価」という意味です。
問2はリスク中立確率を求めてオプション価格を算定するという典型問題です。④リスク中立確率、⑤コール・オプション価格までは確実に得点したいところです。⑥プット・オプション価格も、オプション取引の理解が正しく出来ていれば、基本的には⑤と同様に算定できたと思います。
以上です。