令和2年度 公認会計士短答式試験第Ⅰ回~講評~財務会計論
受験生の皆様、本試験お疲れ様でした。今回の短答式試験は例年に比べて難しかったようですね。解答解説と併せて、各科目の講評も順次upしていきます。まずは、財務会計論です。
今回の試験は、マイナーな(捨てがちな)論点がちらほら含まれていたことと、計算問題のボリュームがいちいち大きめで計算処理に時間が必要であったために、なかなか手応えを感じにくい問題でした。また、入門(日商2級3級)論点が例年よりも多く問われた気がします。やはり基礎は大切と言うことでしょうか。
65%位は得点しておきたいところですが、合格ラインはこれより低くなるはずです。以下、各問について講評していきます。
問題1:重要性の原則
企業会計原則からの出題は、久しぶり感があります。最近は概念フレームワークからの出題の方が多かったのですが、今回は概フレからの出題はありませんでした。久しぶりといっても、内容は入門レベルの計算知識でほぼ対応可能です(アイ)。ウの仮受金・仮払金に質的な重要性があるというのは、監査人らしい視点ですが、これは分からなくても問題ないでしょう。エの表示面に重要性の原則が適用されるか否かは正誤判定できたはずです。
問題2:流動・固定区分(計算)
決算整理前残高試算表の流動資産から固定項目を除くという問題です。総合問題の一部抜粋のような出題形式でした。内容はそれほど難しくないのですが、会計士試験の受験生は連結以外の総合問題を解き慣れていないので、案外やりにくかったのではないでしょうか。個人的には、棚卸資産の収益性の低下について、仕掛品と製品を一括りにして評価しているところがポイントかと思いますが、資料の与えられ方から他に計算のしようがないので、間違えずに処理できたはずです。
問題3:有形固定資産の減価償却(計算)
総合償却が出てしまいました。思い出せる限り出題実績のない論点ですから、しっかりは対策できていない方が多いはずです。おそらく、平均耐用年数を求めて総合償却すること自体はできても、除却の処理まではカバーできてないと思います。平均耐用年数での帳簿価額で除却処理するとの指示があるのですが、正しく読み取れたかは難しいところでしょう。今回はできなくてもよい問題としました。
問題4:賃貸等不動産(理論)
この論点は「賃貸等不動産の範囲」が重要ですから、アウは対策済みのはずです。市価のない場合の合理的に算定された価額の内容や(イ)、注記の詳細(エ)まではカバーしきれてないかもしれませんね。
問題5:負債(理論)
アの重要性の判断が5%で良いのかどうかは分からなくても仕方ないでしょう。今後の実務に従事する上で、財規の重要性判断は5%が多いらしい位の知識があっても良いかもです。イウエは確実に正誤判定できる内容ばかりです。セール・アンド・リースバックの売却益を長期前受収益とする処理が頭に浮かんだかもしれませんが、あれは経過勘定ではありませんし、企業会計原則や財規とは関連しません。
問題6:資産除去債務(計算)
減価償却費と除去費用の内訳が要求されず、費用総額だけ問われたなら正答必須な問題ですが、「使用に応じて発生する除去費用」を減価償却費とせず、除去費用としてしまうと間違ってしまうトラップ付の問題でした。「いったん資産に計上し」と指示があるので、費用化には償却が伴うのですが、判断できたでしょうか。
問題7:社債(計算)
新株予約権付社債の処理です。券面利息は0%ですし償却原価法は定額法と、処理量が多めなだけで簡単です。これは得点したい問題です。
問題8:自己株式(計算)
取引量が多く面倒ですが、処理自体は簡単です。同じ傾向の問題(問題7もそうでした)がいくつかある中で、自身が迷いなく解ける得意な論点を選ぶことができると効率よく解き進めることが出来たと思います。
問題9:予約販売・受託販売(計算)
特殊商品売買の論点に見えて、実は収益認識の問題でしたが、そう気づいた方ほど「キャンセル手数料ってどうするんだろう?」なんてことが気になって、逆に解けなかったのではないでしょうか。単純に、財・サービスの引渡時に受け取った予約金から収益認識していけば良いだけなので、単なる予約販売と考えた方の方がすんなり解けた気がします。
問題10:会計上の変更等(理論)
会計上の変更等といえばここから出題です、という典型論点ばかりでした。正誤は容易であったはずです。