令和2年度 公認会計士短答式試験第Ⅰ回~講評~管理会計論

各専門学校の合格ボーダーは、55%~60%程度と低く見積もられています。ただ、問題12の資金管理は解けないですが、他の問題は、さほど難しくはないです。計算力のある受験生は、管理会計論で、ガッツリと貯金ができたはずです。

問題1、3、5:原価計算基準

今回は、基準6、24、29~34からの出題でした。基準6を苦手にする受験生が多いですが、何度も出題されているので、普段から目を通しておきたい基準です。原価計算基準については、穴埋め問題集で学習するのが最も効率的です。FINでは、基準の解説講義を行った上で、スマホ用の穴埋め問題集も提供しています。

問題2:費目別計算

費目別計算は、多くの受験生が苦手にする分野です。得点できればアドバンテージが得られるため、FINでは、かなり詳しく取り扱っています。
盗難による棚卸減耗費は、原因が異常のため、原価性はありません。また、製品T専用機械の減価償却費については、本問の場合、直接経費と考えるのが妥当です。あとは、固定予算制度が採用されていることに留意すれば、正解できたはずです。

問題4:部門別計算

今回は、相互配賦法(簡便法)でした。補助部門費の配賦計算は、毎回のように出題されます。計算のスピードと正確さが問われているので、きちんと準備しておきましょう。

問題6:工程別+減損の安定発生

安定発生は、短答式でも論文式でも出題される論点です。安定発生の過去問は、割りきれる問題ばかりで、本問も割り切れました。台形の面積図さえ作成すれば、比較的短時間で正解できる問題パターンです。

問題7:標準原価計算の理論問題

インプット法とアウトプット法、シングルプランとパーシャルプランについては、過去に同様の問題が繰り返し出題されており、講義でも過去問を取り上げながら丁寧に説明しています。確実に得点して欲しい問題です。

問題8:標準原価差異分析

与えられている資料の分量からすれば、比較的短時間で解くことができそうですが、選択肢を見ると、単に差異分析を行うだけではなく、様々な計算結果を要求されています。選択肢から時間がかかる問題であることを見抜き、後回しにすべき問題でした。

問題9:管理会計の基礎知識

毎回のように出題される「管理会計の基礎知識」ですが、「重点的に出題する試験範囲」から除外されているバランスト・スコア・カードから出題するマナーの悪さは相変わらずです。FINでは、こういった論点についても「重点的に出題する試験範囲」から除外されていることを明示した上で、テキストに収録し、「講義の動画データ」も受講生にお渡ししています。

問題10:CVP分析

資料の少なさから、簡単に解けそうです。現実に簡単に解けるのですが、CVP分析を苦手にする受験生は少なくありません。昔、TACの講師時代に、「CVP分析は、どんなに簡単な問題でも捨てる」というスタンスの受験生がおられましたが、短答式試験に合格できました。短答式の場合は、全問解くことはできないことが多いので、予め捨てる分野を決めておくのも、合格への近道かもしれないですね。

問題11:予算管理(理論)

簡単な問題でした。

問題12:資金管理

資金管理の過去問は、時間のかかる問題がほとんどです。従って、短答式試験においては、よほど資料の少ない問題でない限り、「捨て問」とするのが正解です。
ただし、論文式試験対策として、復習はしっかりとしておくべきです。資金管理は、論文式試験の頻出分野となっています。

問題13:原価企画(理論)

原価企画や原価改善もよく出題される分野です。ネタは尽きている感があるので、過去問をしっかり回しておけば、高い確率で正解できる論点です。

問題14:業務的意思決定

2交代制を前提とした問題パターンは、会計士短答式、日商1級で何度も出題されています。
業務的意思決定の問題を解き慣れている方、解くコツがわかっている方にとっては、さほど難しくはなかったと思います。苦手な受験生が多い分野なので、得点できれば大きなアドバンテージになりますが、手をつけなかったとしても、合否にはさほど影響しない問題です。

問題15:リースか購入か

リースか購入かは、伝統的な論点なので、講義でも取り扱っていますし、今回は、答練で全く同じパターンの問題を出題しておいたので、FINの受講生はできたはずです。取り扱っていない専門学校が多かったようなので、大きなアドバンテージになりました。論文対策としては、元本均等返済だけでなく、元利均等返済のパターンや、どうして拡張投資の問題では資金の借入と返済のキャッシュフローをタイムテーブルに載せないのかといった理論問題にまで手を広げておきたいですね。

問題16:分権組織の管理会計(理論)

事業部制は、計算よりも理論で出題される方が多い印象です。本問は、典型論点なので、是非得点しておきたい問題でした。