論文式試験への心構え ~ 会計学(午前)管理会計論

2018年~2020年の3年間の過去問を振り返りながら、論文式試験を受験するにあたり、あらかじめ知っておくべき事項を紹介します。
管理会計論は、ここ3年間だけでなく、ずいぶん長い間、30分問題が4問出題されるという形式が続いています。
管理会計論の問題用紙は全部で13枚~14枚、つまり、1問あたりA4サイズで3~4枚ということになります。問題用紙とは別に、解答用紙4枚、それと下書き用紙が充分に与えられます。

論文式試験の素点ベースの合格ボーダーは、次のように予想されていました。大手専門学校が公表している合格ボーダーの平均値です。

素点ベースでの合格ボーダー

2018年 2019年 2020年
36/100点 40/100点 41/100点

公表されている合格ボーダーは偏差値ベースでは52%ですが、「素点ベースだと40点を死守、45点以上で安全圏」というのが、事前に持っておくべきイメージです。

理論への配点
管理会計論の理論問題には、①文章を記述させるもの、②文章の空欄に当てはまる語句を答えるものとがあります。理論の配点については、①は答案用紙1行あたり1点(2018年は31行、2019年は29行、2020年は26行でした。)、②は1カ所1点を想定してください。理論への配点は次のように予想されていました。

2018年 2019年 2020年
43点/100点 50点/100点 40点/100点

配点は、「理論40点、計算60点」のイメージで良いと思います。合格ボーダーが40%程度なので、理論でしっかりと得点できれば、合格ラインに到達できそうに思えます。しかし、計算問題の結果をふまえて記述させる理論問題もありますし、理論問題では計算ほど他の受験生と差がつかないので、結局、「合否を分けるのは計算」と考えるようにしてください。

計算と理論の合格ライン

2018年 2019年 2020年
計 算 22点/57点(39%) 20点/50点(40%) 25点/60点(42%)
理 論 14点/43点(32%) 20点/50点(40%) 16点/40点(40%)

上表によると、「計算か理論のどちらかに偏ることなく、どちらも40%程度得点する必要がある」ことが分かります。答練を採点していると、理論を中心に解答する受験生が多いですが、それでは到底、合格ボーダーに届かないことになります。ただし、これは、30分問題4問全体で考察した場合であって、計算が極端に難しい問題では、理論でカバーしていく必要があります。
次に、30分問題別に合格ラインをみていきます。

30分問題別合格ライン

2018年 2019年 2020年
第1問  問題1 7点/25点 15点/25点 15点/25点
第1問  問題2 13点/25点 10点/25点 14点/25点
第2問  問題1 5点/25点 10点/25点 6点/25点
第2問  問題2 11点/25点 5点/25点 6点/25点

上表から、「第1問より第2問の方が難しい問題が出題される。」ことが分かります。合格ラインを3年間で平均すると、第1問は25点/50点(50%)、第2問は14点/50点(28%)となるので、第2問では、得点が半減してしまうことになります。

また、「4つの問題の難易度の差は、かなり大きい。」ということもいえます。合格ラインの最も低い問題最も高い問題を対比させてみると、2018年は5点vs13点(2.6倍)、2019年は5点vs15点(3倍)、2020年は6点vs15点(2.5倍)となります。専門学校の答練では、ここまで大きな差をつけないので、初めて受験される方は、違和感を感じることになります。あらかじめ、心の準備をしておきましょう。

さらに、毎年、少なくとも1問は、極端に難しい問題が出題されています。上表で、最も難しい問題の合格ラインは、5点/25点(20%)なので、極端な話、「8割白紙でも合格点という難問も出題される。」ということになります。

最後に、注意事項が2つあります。

① 重点的に出題される項目から除外されている論点、及び過去に出題範囲から除外された論点からも出題されます。BSCやマテリアルフローコスト会計からの出題がこれに該当しますが、「知らない論点は、他の専門学校でも充分に取り扱っていないので、前後の文章から分かる範囲で解答しておけば差をつけられることはない。」と考えて下さい。

② 他の科目に比べ、管理会計論は作問ミスが多いです。2020年度においても、端数処理が曖昧なため、専門学校によっては、別解を出していました。また、問題文中、「異常仕損品原価」とすべきところが「異常仕掛品原価」となっていました。試験中は、問題に関する質問は受け付けてもらえないので、「あれっ?」と思っても、あまり神経質にならずに、「作問ミスがあっても、作問者の意図を酌んで、解き進めるしかない。」と考えるようにしてください。これでも、税理士試験よりは随分と作問ミスは少ないですし、作問ミスにつまずいて、時間を浪費しても誰も助けてくれません。

会計学(午前)管理会計論の心構えは以上です。

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