令和6年度公認会計士論文式試験講評~租税法

令和6年8月16日(金)に実施された論文式 租税法の講評です。
例年通り、前半が理論(40点)、後半が計算(60点)という構成です。

理論40点の内訳は、法人税22点、所得税9点、消費税9点です。
計算60点の内訳は、法人税30点、所得税14点、消費税16点です。
学習時間の配分に利用してください。

難易度は、理論は全体的に易しく、計算は法人税が難しく、所得税は普通、消費税は易しかった印象です。素点ベースでの合格ボーダーは52点前後を予想しています。

租税法の解答速報(PDF)は、以下からご参照いただけます。
令和6年度 租税法 解答速報

第1問 

問題1:理論(記述問題)

理論:4行×4問
法人税2問、所得税1問、消費税1問
予想配点:@5点×4問

問題1では、知らない論点は出題されていません。すべて解答可能ということは、捨て問がなかったということなので、その代償として、計算に回す時間が減ることを念頭に置いて、やや速いペースで答案を作成する必要があります。

問1: 給与の消費税法上の取扱い(難易度:A)
給与に消費税は課税されません。
根拠条文が消費税法2条(定義)1項12号の課税仕入にあることも、知られた論点なので、Aランクの問題です。

問2: 備品の廃棄損及び受け取った損害賠償金の法人税法上の取扱い(難易度:A)
備品の廃棄損は損金、受け取った損害賠償金は益金。根拠は、最も出題実績の多い法人税法22条です。廃棄損は3項3号の「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」です。受け取った損害賠償金は2項の「その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」です。

問3: 贈与により取得した絵画を売却したときの譲渡所得の金額(難易度:A)
絵画の売却に係る譲渡所得の計算において、総収入金額が売却額の3,000万円というのは、与えられている資料からしても、他に選択の余地はありません。根拠条文も「収入金額」の所得税法36条はすぐに見つかります。続いて、取得費ですが、居住者Sからの贈与なので、「取得時期及び取得原価を引き継ぐ」というのもすぐに思い出せるはずです。本年度は第2問の問題3でも出題されているような頻出論点なので、60条1項1号も探し出せるようにしておきたい条文です。あとは、特別控除額の50万円ですが、これは「譲渡所得」の条文33条の4項にあるので、大丈夫なはずです。

問4: 受領した還付金、及び還付加算金の法人税法上の取扱い(難易度:B)
答えるべき項目が5つもあるので、本問はBランクとしました。
納付したときに損金不算入とした法人税及び過少申告加算税が還付された場合、還付された金額を益金とすると二重課税となるので、還付された法人税及び過少申告加算税は、雑収入として会計処理されたのちに、別表4で益金不算入(減算)とされます。根拠条文は「還付金等の益金不算入」の法人税法26条です。その他の3項目の還付金等は、雑収入として会計処理され、そのまま課税されます。いつもの22条2項によって、「その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」として、益金の額に算入される、ということです。

問題2:理論(正誤+記述)

理論:正誤+3行×5問
法人税3問、所得税1問、消費税1問
予想配点:@4点×5問

前年と同様、5つの記述のうち、3つが誤った文章でした。配点は1問あたり4点ですが、○×だけで2点ずつ、5問とも○×を合わせることができれば10点貰えるようです。
①×:A社の繰越欠損金1,200万円のうち、600万円が令和4年度の損金の額に算入される。(難易度:B)
引っかけ問題なので、Bランクとしました。
引っかかった受験生は、繰越欠損金1,200万円のうち、令和4年度の損金の額に算入されるのは、600万円ではなく、同年の所得の金額2,000万円の50/100の1,000万円なので誤り、と判定したはずです。
ところが、本問は、そもそもA社の資本金は1億円以下なので、繰越欠損金1,200万円の全額が令和4年度の損金となり、課税所得は800万円です。
繰越欠損金の法人税法57条は分量が多いので、資本金1億円以下の普通法人に関する11項1号イを見つけるのには時間がかかります。

②×: A社がQに支払った退職手当は、A社の令和5年度の損金の額に算入されない。(難易度:A)
中小企業では役員退職金を臨時的な支出として特別損失に計上することがあります。そうすると、「損失」として法人税法22条3項3号が適用されます。ところが、大企業を対象とすることが多い会計士講座では、退職給付費用を「費用」とするので、22条3項2号を適用することになります。A社は資本金5千万円の中小企業なので、悩ましいところですが、会計士試験なので、「費用」として、22条3項2号を適用させておけば良さそうです。
また、問題文に「退職手当は業績連動給与に該当しない」とか「不相当に高額の金額ではなかった」とあるので、作問者としては、34条を答案に示して欲しかったはずです。退職給与については、単独の条文はなく、「役員給与の損金不算入」の34条に僅かな規定があるだけです。探しにくかったかもしれませんが、本問を機に、34条の中に退職給与の規定があることも覚えておきましょう。

③○: Qの退職手当は、退職手当から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額となる。(難易度:A)
QはA社に取締役として招かれており、退職するまでの勤務年数は3年3ヶ月なので、勤続年数5年以下の「特定役員退職手当等」の論点であることは、すぐに気づきます。条文も退職所得ですから所得税法30条の第2項にありますし、計算方法も同条同項かっこ書きにあるので、正答必須です。

④○: A社がB社に譲渡した機械の譲渡対価と時価の差額3千万円は、B社の益金に算入されない。(難易度:B)
完全支配関係法人間の譲渡損益調整資産の低額譲渡という、典型論点なので、B社が計上する受贈益3,000万円が益金不算入となることも、適用条文が25条の2であることも、合格レベルにある受験生であれば、皆知っています。25条の2のうち、直接使用するのは1項と3項ですが、3項に「前項の受贈益に含まれるものとする」とあるので、丁寧に条文を拾うのであれば、2項も答案に反映させることになります。そうすると、25条の2は、3項までしかないので、答案に示す根拠条文は「25条の2」としておけば良さそうですが、主要2校の模範解答では「25条の2第1項2項3項」となっています。

⑤×: A社がB社に譲渡した機械の時価1億円が消費税法上の課税標準となる。(難易度:A)
法人税は時価課税ですが、消費税は原則、対価課税というのはよく知られた論点なので、本記述は「誤り」です。課税標準に関する記述なので、消費税法第28条1項の「消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額」というのも探しやすい条文です。

第2問 

問題1:法人税法

解答箇所:12箇所
予想配点:24点
出題分野:特定同族会社の判定割合(1問)、租税公課(2問)、給与(2問)、売上高及び売上原価(1問)、受取配当等(1問)、株式の売却(1問)、法人税額の計算(2問)、利益積立金額及び資本金等の額(2問)合計12問

問題1では、出題実績の乏しい、特定同族会社の判定割合、同族会社の役員給与、別表1による法人税額の計算、別表5による利益積立金、資本金等の計算が出題されました。12問中6問の正答で十分です。
問1
特定同族会社の判定割合:C(1問)については、難しい論点ではありませんが、学習対象から除外している受験生がほとんどです。FINでも、「特定同族会社の留保金課税」を数年前にテキストから除外したので、講義では取り扱っていません。
特定同族会社は、資本金1億円以上の場合、「被支配会社で、株主等から被支配会社でない法人を除いて判定しても、被支配会社となる法人」をいいます。被支配会社は、第1位の株主グループに50%超を保有されている会社です。本問の場合、第1位の株主グループは、「B+Bの父であるC+Bの子であるD」でその保有株式数は「15,000株+9,000株+7,000株=31,000株」です。第1位のグループは個人だけで構成されているので、「被支配会社でない法人」を除く作業を行うことは出来ません。なので、判定割合の分子は、31,000株で確定です。次に、分母の計算ですが、特定同族会社の判定は議決権の個数で行うので、発行済株式総数から自己株式を控除した80,000株が分母となります。
問2
租税公課(2問)については、例年に比べ難しいですが、租税公課は、毎年出題されるので、2問中1問正答しておきたいです。
[資料5.(2)について]
「当期に前期分の確定申告に基づく28,405,900円の還付があった。」としか記されていませんが、この記述から次のような状況を想定できるか?にかかっています。
⇒「前期に、たっぷりと①中間納付したが、通期では利益が少なかったので、確定申告を行って、還付を受けることになった。②還付予定額28,405,900円を前期末にを未収計上して、③当期に予定通り、還付を受けた。
①~③の会社帳簿上の仕訳は、以下の通りです。
①前期中間納付時(還付分):(借)法人税等  28,405,900円    (貸)現金預金  28,405,900円
②前期末:(借)未収還付法人税等  28,405,900円    (貸)法人税等  28,405,900円
③当期還付時:(借)現金預金  28,405,900円    (貸)未収還付法人税等  28,405,900円
これらの仕訳に対する別表4の調整を考えます。
まず、①と②の仕訳に対しては、前期の別表4で調整が行われていたはずです。実際には、①と②の仕訳それぞれに調整を行いますが、会計士試験の場合は、まとめた仕訳に対する調整で大丈夫です。①と②の仕訳をまとめると、「法人税等」が貸借相殺されて、会計上の損益は生じません。ところが、28,405,900円には事業税等921,100円が含まれていて、事業税は中間申告時に損金となるので、前期の確定申告で、921,100円を減算調整していたはずです。
次に、③の仕訳に対する、当期の別表4の調整を考えます。③の会社帳簿上の仕訳からは損益は発生しません。しかし、還付された金額には、事業税等が921,100円が含まれていて、前期の別表4で、921,100円の減算調整を行っています。2期間を通じて考えると、支払った法人税等は全て還付されているので、「28,405,900円の法人税等は発生しておらず、支払いもなかった。」ということになります。従って、2期間を通じて考えると「別表4の調整は不要」ということですから、前期の別表4で行った事業税等分の921,100円の減算調整を、当期の別表4で921,100円の加算調整を行うことで打ち消す必要があります。
⇒ 当期の別表4:921,100円(加算)

[資料5.(3)について]
「当期に前期分の確定申告税額(住民税)265,000円を納付」としか記されていないので、詳しい状況は不明ですが、期首に「未払法人税等265,000円」が計上されているため、次のような会社帳簿仕訳に対する別表4の調整を考えます。
①前期末の未払計上時:(借)法人税等(住民税)265,000円    (貸)未払法人税等    265,000円
②当期納付時:(借)未払法人税等  265,000円    (貸)現金預金  265,000円
これらの仕訳に対する別表4の調整を考えます。
まず、①の仕訳に対しては、法人税法上、損金算入できない住民税を、会社は損金経理しているので、前期の別表4で加算調整を行っていた、と想定します。
次に、②の仕訳に対しては、損金算入できない住民税265,000円を会社は損金経理していないので、当期の別表4の調整は不要である、と考えます。
⇒ 当期の別表4:調整なし

[資料5.(4)及び(6)について]
少し強引な解法ですが、(4)と(6)の会社帳簿仕訳について、相殺消去できるものは相殺消去して、まとめると次のようになります。
①中間申告・納付に関する仕訳:(借)法人税等  29,089,400円    (貸)現金預金  29,089,400円
②当期確定申告分に関する仕訳:(借)法人税等  45,810,600円    (貸)未払法人税等  55,881,490円
-  -  -  - - -  -  -  - -(借)租税公課  10,070,890円
③受取配当等の源泉徴収所得税等に関する仕訳:(借)租税公課  929,110円    (貸)仮払税金  929,110円
これらの仕訳に対する別表4の調整を考えます。
まず、①の中間申告・納付の仕訳29,089,400円の中には、法人税及び住民税が21,525,300円含まれていますが、法人税法上、損金算入できない法人税及び住民税を、会社は損金経理しているので、当期の別表4で21,525,300円を加算調整します。
⇒ 当期の別表4:21,525,300円(加算)

次に、②の仕訳は当期末未払計上分で、法人税及び住民税は損金算入できないので加算、事業税等も期末未払計上の段階では損金算入できないので加算、ということで、全額の55,881,490円を加算調整とします。
⇒ 当期の別表4:55,881,490円(加算)

そして、③の仕訳は、受取配当等に係る源泉所得税等に係る仕訳なので、929,110円を別表4で加算し、同額を別表1で所得の金額から控除します(問3)。
⇒ 当期の別表4:929,110円(加算)
以上、3つの調整をまとめると、
⇒ 当期の別表4:78,335,900円(加算)

給与(2問)については、同族会社の論点が絡むので2問ともCランクです。
[資料6.DとGについて]
甲会社は、上位3グループで50%保有されている「同族会社」です。同族会社の給与については、講義でも詳しく解説していて、講義の範囲内からの出題ですが、過去問が乏しいため、学習対象から外している受験生がほとんどです。
同族会社の場合、①特定株主で、かつ、経営に従事しているなら、「みなし役員」とされること、②特定株主で、かつ、使用人兼務役員は、税務上、「使用人兼務役員になれない者」とされる点に留意することになります。
Dは、50%、10%、5%基準を満たすので特定株主で、かつ、経営に従事しているので、「みなし役員」です。従って、Dの賞与120万円は事前確定届出給与である必要がありますが、届出をしていないため、その要件を満たしていません。
Dの調整 ⇒ 当期の別表4:1,200,000円(加算)
Gは、非常勤役員です。非常勤役員への半年払いの給与については、同族会社の場合、事前届出の必要があるため、本問のように、事前の届出がない場合には、半年払いの180万円は損金不算入となります。
Gの調整 ⇒ 当期の別表4:1,800,000円(加算)
以上、2つの調整をまとめると、
⇒ 当期の別表4:3,000,000円(加算)

[資料6.その他について]
甲会社は、「役員分給与に関する届出書は何ら提出していない」ということなので、役員分の賞与は全額損金不算入となります。役員賞与については、支出したのは660万円ですが、費用処理した金額は700万円なので、700万円が損金不算入となります。また、Fは、50%、10%、5%基準を満たすので特定株主で、かつ、使用人兼務役員なので、同族会社では税務上、「使用人兼務役員になれない者」とされるため、使用人分の賞与についても事前確定届出書の提出が必要となります。従って、Fの使用人分賞与200万円は損金不算入となります。
以上をまとめると、
⇒ 当期の別表4:9,000,000円(加算)

売上高及び売上原価(1問)については、会社帳簿上の仕訳をまとめて、純額で考えると簡単です。
[資料7.売上高及び売上原価について]
会社帳簿上の仕訳をまとめると、売上高5,320万円から売上原価3,040万円を控除した2,280万円が当期利益に計上される金額です。これに対し、税務上は、返品負債と返品資産を計上しないため、売上高5,600万円から売上原価3,200万円を控除した2,400万円が益金に計上される金額です。従って、税務上は120万円(=2,400万円-2,280万円)の益金の計上漏れが生じていることになります。
⇒ 当期の別表4:1,200,000円(加算)

受取配当等(1問)については、4種類の株式と銀行預金の資料が与えられていますが、昨年に引き続き、1問だけの出題です。
[資料8.受取配当及び預金利子について]
①K社株式は、持分比率が5%超1/3以下なので、「その他の株式等」です。従って、受取配当等の益金不算入額は80万円×50%です。
⇒ 当期の別表4:400,000円(減算)

②L社株式は、持分比率が5%以下なので、「非支配目的株式等」です。従って、受取配当等の益金不算入額は60万円×20%です。
⇒ 当期の別表4:120,000円(減算)

③M社株式は、持分比率が1/3%超100%以下なので、「関連法人株式等」です。控除負債利子の金額は、配当等の金額200万円×4%=8万円と、支払利子等70万円×10%=7万円のいずれか少の7万円です。従って、受取配当等の益金不算入額は200万円-控除負債利子7万円です。
⇒ 当期の別表4:1,930,000円(減算)

④ K社は、配当等の計算期間を通じて完全支配関係にあったので、完全子法人です。従って、受取配当等の益金不算入額は100万円の全額です。
⇒ 当期の別表4:1,000,000円(減算)

以上をまとめると、
⇒ 当期の別表4:3,450,000円(減算)

株式の売却(1問)については、過去に減損処理をした完全子法人株式の売却に係る調整です。
[資料9.株式の売却について]
税務上、5千万円の減損処理は認められないため、N社株式の税務上の簿価は1億円です。これを6千万円で売却しているので、税務上の売却損は4千万円です。会社帳簿上は、1千万円の売却益を計上しているので、当期の別表4で、5千万円の減算調整を行います。
⇒ 当期の別表4:50,000,000円(減算)

問3
別表1の税額計算は(2問)については、サービス問題です。2問とも正答しておきたいです。
①甲会社は、資本金1億円超なので、23.2%のみを使用して法人税額を計算します。
234,107,000円×23.2%= 54,312,824円
②源泉所得税等の額を法人税額から控除します。(資料8の表「源泉所得税等の額」合計)
54,312,824円-929,110円= 53,383,714円→53,383,700円(中間申告分を控除する直前で百円未満切捨)
③中間申告分の法人税額を控除して、差引確定法人税額とします。
 年税額53,383,700円-既に中間申告済みの法人税等17,614,400円= 当期の確定申告で納付すべき法人税額35,769,300円

問4
別表5の記載方法(2問)については、出題実績がほぼなかったため、2020年以降、講義では詳しくは取り扱わなくなっていた論点です。他の専門学校の受講生も、学習対象から除外しているようなので、今年度の本試験では、出来なくても大丈夫です。
①資料5(7)税効果会計の仕訳に対し、別表4で530,000円の加算調整を行っているため、税務上の利益積立金も同額だけ増額させます。
△137,510,000+530,000= △136,980,000円
②相対取引にて自己株式を取得したときの税務上の処理は、「みなし配当」の分野で学習しています。自己株式の取得原価のうち、資本金等の額を超える部分は、「利益積立金を源泉として支出したので、配当とみなす。」ということでした。自己株式取得による利益積立金部分の減少金額を計算して、別表5に反映させます。
a. 自己株式取得による資本金等の額部分の減少金額
500,000,000円×(10,000株/100,000株)=50,000,000円
b. 自己株式取得による利益積立金部分の減少金額
取得原価@7,000株×10,000株 - 資本金等の減少金額50,000,000円=20,000,000円
本問は、「資本金等の額の計算に関する明細書」の空欄穴埋めなので、a. の金額を使用して計算します。
∴ △50,000,000円-50,000,000円= △100,000,000円

 

問題2:法人税法

解答箇所:3箇所
予想配点:6点
出題分野:適格合併した場合の減価償却費(1問)、繰越欠損金(2問)

組織再編税制(3問)については、出題実績がほぼなかったため、2020年にテキストから削除した論点です。他の専門学校の受講生も学習対象から除外しているようなので、本年度は出来なくても大丈夫です。
①税務上は、P建物の帳簿価額、及びQ機械装置の繰越償却超過額を引き継いだものとして、別表4の調整を行います。従って、P建物については、税務上の期首簿価34,000,000円のところ、会社帳簿の期首簿価が30,000,000円なので、償却超過額が4,000,000円あると考えます。
[P建物の調整]
会社計上償却費405,000円-50,000,000円×0.020×6/12=△95,000円
償却不足額95,000円 < 繰越償却超過額 4,000,000円 ∴ 95,000円(減算)
[Q機械装置の調整]
会社計上償却費900,000円-(7,200,000円+133,334円)×0.200×6/12= 166,667円(加算)
以上をまとめると、166,667円-95,000円=71,667円
⇒ 当期の別表4:71,667円(加算)

②当社が丙社の繰越欠損金を取り込む目的で丙社と合併した場合には、丙社の繰越欠損金は利用できませんが、本問では、丙社の設立日から継続して完全支配しているため、繰越欠損金の利用制限は受けません。従って、丙社の繰越欠損金は、当社の繰越欠損金と同様に利用することができます。
[当年度まで繰り越されてきた当社及び丙社の繰越欠損金の合計額]
当社(350万円+550万円+150万円)+丙社(360万円+120万円+240万円+189万円+80万円)=2,039万円
[当期の所得に充当される繰越欠損金]・・・ 当社の所得金額の50%を限度額とする
当期に繰り越されてきた欠損金の合計額 2,039万円 > 限度額 1,020万円(= 当社の所得金額2,040万円×50%)
 ∴ 10,200,000円
[翌期へ繰り越す欠損金の金額]
当期に繰り越されてきた欠損金 2,039万円 - 当期の所得に充当した欠損金1,020万円= 10,190,000円

15問中6問(特定同族の判定、別表5、組織再編税制)は、学習対象から除外した分野からの出題だったので、その6問をスルーした受験生は、所得税と消費税の計算に。スルーしたことによって生まれた時間を回せたはずです。

 

問題3:所得税法

解答箇所:7箇所
予想配点:14点
出題分野:給与所得A、退職所得A、配当所得B、不動産所得A、譲渡所得B、損益通算C、所得控除の合計額B

所得税法の計算については、Aランクの給与所得、退職所得、不動産所得の3問がとても簡単だったので、あとは、B、Cランクのうち1問、合計4問程度正答できれば合格ライン到達です。
詳細は、解説動画をご参照ください。

 

 

問題4:消費税法

解答箇所:8箇所
予想配点:16点
出題分野:課税標準に対する消費税額A、課税売上割合の分子A、課税売上割合の分母A、課税仕入等に係る消費税額の合計額A、課税売上にのみ対応の仕入税額A、非課税売上にのみ対応の仕入税額A、共通の仕入税額A、貸倒れに係る消費税額A

2021年までは手応えのある問題が出題されていましたが、2022年以降3年連続して易しい問題が出題されています。特に、2024年の問題は易しかったので、合格レベルにある受験生にとっては、完答できて当然の問題なので、得点源になったはずです。詳細は、解説動画をご参照ください。

以上です。