会計士受験と税理士受験の乗り換え 第1回

 会計士受験生が税理士簿財の合格を目指すなら

短答式試験チャレンジ中の会計士受験生は、個別論点の計算問題(所要時間5分程度)と連結会計中心の総合計算問題、理論の正誤問題という出題傾向に合わせた学習をしているはずです。

税理士簿記論・財務諸表論の合格には、どのようなプラスの対策が求められるのでしょうか。

 計算問題対策

税理士試験の簿記論・財務諸表論は比較的ボリュームのある総合計算問題の出題が定番ですから、総合問題を解くスキルの強化が最初の課題となります。

会計士論文式試験でも総合問題は出題されますが、特定勘定の金額導出形式がほとんどで、税理士試験で出題されるような「貸借対照表・損益計算書の作成」問題は出題されませんから、会計士受験生は総合問題対策は特にしていないはずです。

総合問題を解くスキルの強化方法としてお薦めなのが、日商簿記1級の商業簿記税理士簿記論・財務諸表論過去問を解くことです。

日商簿記1級の商業簿記の過去問は良問が多く、税理士試験よりボリュームは少なめですが、総合問題への基礎力をつけるのにうってつけです。決算整理事項や未処理事項の中に、「これは!」と目を引く難しい論点やひねりのある論点が含まれていて、とても手応えがあります。インプットでもあると位置づけて解説部分もしっかり確認するようにしたいところです。

税理士簿記論・財務諸表論の過去問を解くことははそのまま受験対策にもなります。税理士試験の簿記論は実務家が作成する問題が3問中1問含まれていて少し癖があるので、過去問を解くことでこれに慣れる必要があります。また、会計士試験ではあまり対策しない「帳簿」や「本支店会計」の分野からも出題されます。税理士過去問が解ける程度に知識を補強する必要があるでしょう。

 理論問題対策

税理士試験の財務諸表論には理論問題が出題されます。企業会計原則や新会計基準等の抜粋に空欄や下線部が設定されており、空欄補充問題・下線部に関連させた記述問題が典型的出題形式です。

論文式試験向けの記述問題対策をしていない受験生の方は、短答式試験向けの「正誤判定ができる」レベルから「記述できる」レベルにスキルアップさせる必要があります。以下の点を意識して2~3行程の記述ができるようにアウトプット練習をしていきましょう。

  1. 現行の会計基準では採用されなかった処理も含め、会計処理の論拠をしっかり覚える。
  2. 財務会計の総論部分(企業会計原則、損益会計や資産会計等)の重要性が、会計士試験より高いことに留意する。
  3. 会計処理上の要件等がある場合には箇条書きできるようにしておく。

税理士簿記論・財務諸表論過去問を解くことで、おのずと自らの不足している能力が分かってくると思いますから、まずは、過去問を入手するところから始めて見て下さい。