第67回(平成29年)税理士試験 第3回(消費税法)

消費税法

直近 10年の中では、最も難易度が低かった印象です。採点基準にもよりますが、合格ラインは、70%~75%程度と予想されます。

第一問:理論問題

問1 特定資産の譲渡等について(予想合格ライン 60%)

おそらく、各専門学校ともに、重要性「Aランク」としていたはずなので、(1)の定義、(2)の課税関係については、しっかりとした答案作成が必要になります。ただし、(3)の国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」(特定仕入れ)に係る消費税の内外判定基準(課税 対象となる国内取引に該当するかどうかの判定基準)については、平成29年1月1日以降行う特定仕入れから適用される「改正論点」なので、ここまではカバーできていなかったかも知れません。

たとえば、アメリカ企業の日本支店が、グーグルに依頼してインターネット上で広告宣伝を行う際に、日本で販売する商品を対象としている広告の場合、これまでは「アメリカ企業」ということで「不課税」でしたが、この改正により「日本支店」ということでリバースチャージ方式により課税されることになっています。

特定仕入を行う事業者 現行 改正後(第4条4項)
国内事業者 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた(特定仕入れを行った)事業者の住所又は居所(現在ま で引き続いて1年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主た る事務所の所在地 国内事業者が国外事業所等で受ける「事業者向け 電気通信利用役務の提供」のうち、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものである場合は、国外取引とする
国外事業者 国外事業者が恒久的施設で受ける「事業者向け電気通信利用役務の提供」のうち、国内において行う資 産の譲渡等に要するものである場合は、国内取引とする

 

この辺りの話は、以下のPDF資料が詳しく、かつ解りやすいです。

国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A


問2 正誤問題について(予想合格ライン70%)

正誤問題が4問出題されました。会計士試験とほぼ同じ出題形式で、採点がしやすいことから、今後、こういった形式での出題は増えるかも知れません。

(1) 「課税資産の譲渡等」の正確な定義づけを暗記しているかが問われました。消費税法第2条(定義)によると、課税資産の譲渡等とは、「資産の譲渡等のうち、消費税が非課税とされるもの以外のもの」ということになります。そうすると、「国外取引は非課税ではないため、課税資産の譲渡等に該当する。」というロジックが成立します。専門学校によっては、「確実に正解して欲しい」という位置づけにしていますが、消費税課税の本質からやや外れている設問なので、正答可能性は「中」程度だと思います。

(2) 保税地域内にある外国貨物が免税取引となるかが問われました。基本中の基本なので、正答可能性は「高」ということになります。

(3) 個別対応方式において、課税資産の譲渡等にのみ要するもの以外を共通対応とすることができるかが問われました。こういった問題は、「自分の知らない特例があるかも知れない。」という疑念がわいてきますが、「試験は自分の持っている知識の中で解く。」ということを心がけて下さい。正答可能性は「高」です。

(4) 納付税額がない場合にも、確定申告を行う必要があるかが問われました。確定申告を行う必要のあることは容易に想像がつきますが、消費税法第45条に従って、正確に理由付けするのは、やや難しかったかも知れません。やはり、正答可能性は「高」です。