公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第1回
問題2
問1:他の監査人の利用
「他の監査人の品質管理の状況等に基づく信頼性」を勘案する必要性が問われています。
答案としては、① 監査全体の品質管理の観点から、監査人自身のみならず他の監査人も品質管理の基準を遵守すべき、② 他の監査人の信頼性を評価しなければ、得られる監査証拠の十分性や適切性を評価できない、③ 他の監査人の監査の結果の利用についても監査人が全ての責任を負う、といった内容が思いつきます。
出題者が望む答案がいずれかは読み取れないので、①や②について記述できていれば問題はないと思います。もちろん、これ以外の内容であってもよほどの的外れでない限り配点はあるはずです。個人的には、③は問題3の内容と重複するので避けた方が無難だと考えます。
問2:専門家の評価
専門家の能力や業務の客観性を評価する意義が問われています。
監基報の620号A14項が答案に利用できます。本試験会場でこの項を見付けられた方は答案作成が助けられたでしょう。内容としては、専門家に能力不足や客観性(中立性)の欠如があれば、専門家の業務を利用できないため、その評価の必要がある、というものです。
プラスするならば、十分かつ適切な監査証拠が入手できるかに関わる、専門家の業務を利用するかの決定前に評価しなければ監査の効率性を害するおそれがある、等でしょうか。
問3と内容が重複しないように、専門家自身の評価に絞った答案にできたかもポイントだと思います。
問3:専門家の業務の評価
専門家の業務の結果に対しても監査手続を行う理由が問われています。
答案としては、監査の全プロセスで職業的懐疑心を発揮すべき、十分かつ適切な監査証拠が得られたか評価すべき、専門家の業務は財務諸表監査を目的としていない(これは問4の内部監査人の評価と同じ趣旨です)、専門家を利用しても監査人が単独で責任を負う(問題3の内容と重複します)、といった内容が考えられます。
いずれにしても、飛躍しすぎない理由の説明になっていれば問題ないと思います。
問4:内部監査機構の特徴
監査人が重視すべき内部監査機構の特徴が問われています。
内部統制の一環として経営者によって整備されるものなので、財務諸表監査を目的としないこと、独立性は求められていないこと等が指摘できると思います。