日商簿記1級 147回 解答・解説 商業簿記・会計学
受験生の皆様、本当にお疲れ様でした。
順次、解答・解説、講評をupしていきたいと思います。
今回は、商業簿記・会計学です。
解答・解説はこちら → 147回 商業簿記・会計学 解答解説
商業簿記
在外支店を含む本支店会計からの出題でした。
正直、難しかったと思います。問題を見たとたん、手も足も出せないような気持ちになってしまった方も多かったのではないでしょうか。それでも、粘り強く問題を丁寧に読み解きながら、得点できそうなところを一つずつ拾っていける強いメンタルを維持できたかが、勝負の分かれ目でした。
まず、商品売買では、本店・LA支店間で内部利益を含む取引があり、これが未処理となっています。本店側の未処理は、特に問題なく処理できたはずです。問題は、LA支店の処理です。本邦企業が外貨建取引を行う場合と同様に、本来であれば、LA支店での本店仕入取引はドル建に換算して記帳し、ドル建の支店財務諸表を作成していくはずですが、本問の場合、期末に本支店合併財務諸表を作成する際に、同じレートで円換算するので、始めから円建てのままにしておくと解きやすかったと思います。
売上高・売上原価・期末商品の算定は、内部利益を考慮する必要があり、基本に忠実に解こうとするとそれなりに手間がかかり難しくもあるのですが、「とにかく、本支店外部との取引で計算すれば良い」という仕組みが分かっていれば、案外早く求めることも可能です。
期末商品の資料は、もちろん売上原価・商品残高算定にとっても重要ですが、今回は棚卸減耗費や商品評価損が別表示されていて、配点もありそうなので、ここは本店の移動平均単価をもとめて、完答したいところです。
リース取引は、セール・アンド・リースバックからの出題です。ここだけで、後T/Bの5箇所を正答できてしまいます。日商簿記試験において、リース取引は定番ですし、きちんと対策されていた方は得点できたはずです。
セール・アンド・リースバックは貸手の現金購入価額が明らかであることと、資料(7)の所有権移転条項の指摘から所有権移転ファイナンス・リースであることが分かるので、リース資産・リース債務の金額が売却価額であると判断できます。これで、①リース資産減価償却、②リース資産、③リース債務残高、④支払利息が求まります。売却損益を長期前受収益で処理し、減価償却費に調整することができれば、⑤長期前受収益も求められます。リース取引では珍しく定率法で償却するので、定額法のようには売却がなかった際の減価償却費に調整できないのですが、指示があるので問題なく解けたと思います。
固定資産の減価償却は、200%定率法が出題されています。200%定率法では、償却率を自ら求める必要がある問題もありますが、今回は資料として与えられていて助かりました。償却保証率に引っかかる関西支店の備品だけは、過年度の計算にも手間がかかり大変ですが、今回の問題の中では簡単な論点なので、確実に得点したいところです。
貸倒引当金は、長期貸付金が貸倒懸念債権に分類され、キャッシュ・フロー見積法での貸倒見積額の算定が出来たかがポイントでした。将来キャッシュ・フローである支払利息は減免後の1%で計算しても、割引率は約定の4%のままであることを知っていたなら、計算自体は難しくなかったと思います。LA支店の売掛金は未処理の外貨建売掛金ですが、決算日レートを適用する指示があるので、迷うことなく計算できたでしょう。
LA支店の財務諸表項目の換算は、換算レートが与えられているので、本店勘定が本店のLA支店勘定と相殺できる金額になると知っていれば、為替差損益まで求められたと思います。しかし、未処理の本店・LA支店間の取引の扱いや内部利益の問題があるので、自信をもって解くことは難しかったのではないでしょうか。
以上より、60割で大健闘!といえるでしょう。