第150回(2018年11月) 日商1級 講評 ~ 商業簿記・会計学

商業簿記については、決算整理後残高試算表を作成するという、部分点の拾いやすい問題でした。会計学は、特に問題1に戸惑ってしまいますが、商業簿記が楽だった分、会計学に時間を回すことが出来たと思いますので、結果的に高得点が狙えたのではないでしょうか。

商業簿記
論点としては、未着品、貸倒引当金、事業継承、減価償却費、有価証券などが出題されました。
1. 最初の仮払金については、利益準備金の積立てについての配慮が必要でした。
2. 未着品については、「一般販売売価の20%増しである。」とされているので、まず、一般販売の原価率72%を求めます。ここから未着品販売の原価率が72/120=60%と判明します。未着品売上が720,000千円ですから、未着品の売上原価が432,000千円、未着品勘定の差引計算で期末未着品が24,120千円となります。
3. 貸倒引当金については、貸倒懸念債権に対するものが出題されました。ただ、短期貸付金1,200千円から保証されている800千円を控除した金額に50%を乗じて計算することは、問題文から見て明らかでした。
4. 事業承継は、資産負債を時価評価で受け入れ、@39,000×8,000株との差額が超過収益力を意味する「のれん」になります。あとは、@39,000×8,000株から自己株式(帳簿価額)を控除した金額を、指示通り50%ずつ資本金と資本準備金に組み入れてあげることになります。
5. 建物については、補助金500,000千円を繰越利益剰余金方式で積立金を積み立てています。本問には関係ありませんが、このままだと補助金500,000千円に課税されてしまうので、法人税の申告上、別表4で同額の減算を行います。また、会計上は、この圧縮積立金を耐用年数にわたって取り崩すということなので、決算整理後残高試算表上の圧縮積立金は、500,000千円-500,000÷25年×5年=400,000千円となります。ちなみに、圧縮記帳は課税の繰延の制度なので、法人税法上は、圧縮積立金の要取崩額(会計上の金額とは異なります)を別表4で加算処理していくことになります。
5. A社株式は、@22×5,000株×@112への評価替えを行います。難しかったのが、B社社債で、売却しなかった60%部分については「その他有価証券」へと保有区分の変更を行っているので、時価評価することになりますが、時価自体が資料に与えられていないため、期末の売却単価を時価として計算することになります。ここの処理で専門学校の解答速報が分かれてしまっています。C社株式はA社株式と同様になります。

会計学
問題1
積極的に結びつけるというよりは、「まぁ、これしかないだろうなぁ」という選択しか出来なかったと思いますが、案外、正解率は高かったと思います。
問題2
状況1:正しい文章としては「エ」の一択になるので、{@200-(@220-@40)}×300個= 6,000千円となります。
状況2:正しい文章としては「イ」の一択になるので、(30,000-7,0000)×8.36%= 1,923千円となります。
状況3:正しい文章としては「ウ」の一択になるので、資本剰余金の当期変動額は、(@60-@50)×50株=500千円となります。
状況4:これは、やや難しかったです。将来減算一時差異33,000千円と繰越欠損金20,000千円、合計53,000千円ありますが、将来の課税所得が45,000千円しかないので、繰延税金資産は45,000千円×30%=13,500千円となります。従って、法人税等調整額は、期首繰延税金資産17,500千円-期末繰延税金資産13,500千円=4,000千円となります。
状況5:第150回唯一の連結です。10%→70%への段階取得なので、10%の取得原価7,000千円を支配獲得時の時価へ(60,000千円÷60%×10%=10,000千円)評価替えするパターンです。従って、段階取得に係る差益は3,000千円なります。
問題3
作問者としては、概念フレームワークによる財務報告の目的を書いてほしかったと思いますが、問題文の文面からすれば、解答例以外の答案も色々と考えられるところです。