最近の論文式本試験① ~ 管理会計論(CPA)

最近の論文式本試験問題を振り返ってみようと思います。
第1回 ~ 管理会計論(CPA)
ずっと昔から30分問題が4問、難易度はバラバラ、重点的に出題しないとされている論点からも平気で出題してくる悪しき慣行も相変わらずです。
2018年
(第一問)
問題1
連産品の問題です。正常市価基準と生産量基準、追加加工の可否に関する意思決定問題などが問われました。連産品は論文式で重点的に出題される範囲から除外されているため、短答式試験合格者が圧倒的に有利になります。会計大学院卒や司法試験合格組には酷な問題でした。
問題2
標準原価カードの問題です。計算3割、理論7割の理論中心の問題でした。計算は簡単で、理論も過去問を解いていれば、解答できる問題です。
(第二問)
問題1
資金管理の問題です。毎年のように出題されますが、時間がかかる論点なので、受験生はうんざりしていることでしょう。
ただ、対策は単純です。
問題2
活動基準原価計算の問題です。意思決定絡みでした。ABCは資料が多いと時間がかかりますが、本問も本試験会場で見た瞬間、「これは時間がかかりそうだ」と直感した受験生が多かったのではないでしょうか。ABCが辛いのは、部分点を拾いにくいところにあります。
2017年
(第一問)
問題1
部門別計算の問題です。計算の解答箇所もたくさんありましたが、理論中心の問題と言っていいでしょう。伝統的な議論なので、丁寧な講義を受けていれば、大きな得点源となったはずです。理論では、「責任会計の観点から・・」、「責任会計上の利点を・・」といったように、「責任会計」という言葉が繰り返し使われていました。「責任会計」には、色々な定義づけがありますが、「責任者にとって管理可能な原価を集計し、管理可能な原価について責任を持たせる会計の仕組み」くらいのイメージで良いと思います。従って、管理不能なコストが集計されている状態は、「責任会計上問題がある。」ということになります。
問題2
標準原価カードの問題で、計算が2問、理論が2問出題されています。論文式で出題される標準原価計算は、難易度の差が激しいのが特徴ですが、本問は終点発生の計算パターンだったので、短答式の問題としても簡単な部類、難易度の低い問題でした。
理論についても、真実の原価を実際原価と考えるのか、標準原価と考えるのか、といった典型論点が出題されています。前者の立場に立つと、売上原価、期末製品、期末仕掛品を最初から実際原価で計算したのと同じ計算結果になるように、原価差異を配賦することになります。これに対し、後者の立場では、原価差異は、製品原価を構成しない無駄なコストとして、非原価とされます。
(第二問)
問題1
設備投資の経済計算の問題です。問題を見た瞬間、「また、資金管理か?」と思いましたが、実は、設備投資の経済計算でした。設備投資の経済計算を解く際には、「受講生皆が苦手にする論点」であることを念頭において、じっくり、ていねいに解き進めるようにして下さい。本問は、各代替案の正味現在価値を計算するだけなら、簡単ですが、クセのある誘導問題になっていて、「何を答えればいいのか、迷う問題」です。専門学校の解答速報も解答が分かれています。
問題2
内部振替価格・移転価格の設定の問題です。全部原価計算方式による損益計算書を与えておいて、内部振替価格を算定し、操業度差異を予算原価を使って、各事業部に配分するという問1~問4までの流れは、2002年の本試験問題と全く同じです。問5は、初見になるので、捨ててしまった受験生が多いと思います。結果的には、問5も難しくなかったですが、それは結果論ですから、本試験での対応とすれば、捨てて、他の問題の見直しをするのが賢明だったと思います。
2016年
(第一問)の問題1以外は、2018年の本試験と同じ論点が出題されていました。
2016年は、資料が非常に多く、量に圧倒されたはずです。体力、集中力が要求されました。
(第一問)
問題1
個別原価計算から組別総合原価計算への移行問題です。日商1級でも繰り返し出題されている論点ですが、会計士の論文式ではあまり出題実績がありません。個人的には「面倒くさいからキライ」です。ただ、「面倒くさい」という情報がインプットされていれば、本試験会場では慎重に解き進めていくことができたはずです。地味な問題ですが、(第二問)の問題1、問題2が得点しにくいだけに、本問の出来、不出来が合否を分けたかも知れないです。
問題2
標準原価計算の問題です。会話形式の問題は好みの分かれるところですが、得点しやすいことが多いので、積極的に得点しにいくと良いでしょう。標準原価と見積原価の相違も、過去に出題されていますし、標準原価計算の理論については、既に出題され尽くした感があるので、過去問の研究をしっかりとやっておきたいところです。
(第二問)
問題1
資金管理の問題です。またしても資金管理です。資金管理の問題は、いつもいつも資料が膨大で、戦意喪失になりがちです。ただ、対策は単純です。過去問を全部、繰り返し解いておくことです。過去問を全部、繰り返し解いておいて、それでもなお、本試験会場で出来なければ、他の受験生も出来ていないはずです。
問題2
活動基準原価計算の問題です。ABCの計算は時間がかかり、しかも部分点を拾いにくいという特徴があるので、先に、問いを見て、解けそうな問題に集中するようにして下さい。
ここ3年間の本試験問題をさらりと振り返りましたが、出題論点がかなり重複していました。
標準原価計算は毎年出題されるので仕方がないにしても、2019年度は、資金管理とABC以外から良問が出題されることを願うばかりです。