日商簿記・税理士・会計士の試験比較(簿財編) 第2回

   日商簿記1級商業簿記・会計学」、税理士試験「簿記論・財務諸表論」、公認会計士試験「会計学(財務会計論)」の比較分析の第2回です。
   今回は税理士試験「簿記論・財務諸表論」の出題傾向・対策の分析です。


Vol.2~税理士試験「簿記論・財務諸表論」

  「簿記論」は〔第一問〕総合問題、〔第二問〕個別問題、〔第三問〕総合問題というのが標準的な出題形式です。試験時間は2時間ですが、すべての問題を解ききるには多すぎる出題量になっています。

  〔第一問〕総合問題は、本支店会計や簿記一巡(帳簿組織)が比較的多く出題されます。本支店会計は日商簿記1級「商業簿記」でも出題されますが、簿記一巡(帳簿組織)は税理士試験でしか出題されません。資格取得後の業務を見据えた傾向なのでしょう。
 問題が指定した決算整理後残高試算表または財務諸表上の10か所前後の金額を求めさせる問題が標準的なので、必要なデータを能動的に選び取る能力も要求されます。
  〔第二問〕個別問題は、形式的には個別論点からいくつかの金額を求めさせる問題が多く出題され、この点は日商簿記1級「会計学」と共通します。しかし内容面では、証券の発行者側と取得者側の処理というような取引両当事者の処理を問う、選択適用が認められている会計処理を比較させる、といったひねりのある問題が出題され、この点では、公認会計士論文式試験(個別計算問題)と共通します。日々の学習の中で、取引両当事者の処理や選択適用される処理を意識的に比較する必要があるでしょう。
  〔第三問〕総合問題は、ほとんどが決算整理型の問題で、日商簿記1級「商業簿記」や同じ税理士試験の「財務諸表論」〔第二問〕と出題形式は似ています。しかし、「財務諸表論」〔第二問〕では決算整理後残高試算表または財務諸表上のほぼすべての金額が解答欄となっているのに対して、この〔第三問〕では指定された箇所だけ解答する必要があり、〔第二問〕同様の資料の取捨選択能力が求められます。
 内容面でも、「財務諸表論」〔第二問〕では基本的処理を中心に出題しているのに対して、この〔第三問〕は実務家が作成するとあって、実務的・事例的条件が組み込まれていて解きにくさを感じる場合があります。解きやすいところから優先的に処理していく必要がありそうです。

   公表されている合格基準は60%ですが、年度によって難易度にムラがある割には合格率が安定しているので、恐らく傾斜配点が行われているのでしょう。この点からも、受験生の多くが得点できそうな箇所を取りこぼさないように、解きたいところだけを解く能力が求められるようです。

  「財務諸表論」は〔第一問〕〔第二問〕理論問題、〔第三問〕総合計算問題から構成されています。試験時間は2時間と同じですが、「簿記論」よりも時間的制約は緩いようで、時間内に解ききれる問題量になっています。
  〔第一問〕〔第二問〕理論問題では、会計基準等の抜粋に空欄や下線部を設定し、空欄補充、下線部に関連させた2~3行程度の記述問題が数問出題される形式が定番化しています。記述問題の内容はいわゆる新基準が中心で、会計処理の論拠を問うものが多いようです。それならば会計基準等の「結論の背景」に記載されている論拠を丸暗記して転記すればよさそうなのですが、解答スペースが限られているので、暗記したまま記述できるとは限りません。暗記するのはキーワードやキーフレーズに止めて、論拠の枠組みを理解して問題に合わせて組み替えられるように準備しておく方がよさそうです。

  〔第三問〕総合計算問題では、決算整理型の主問題に販管費の内訳や税効果会計に関する注記等の派生問題が組み合わせられて出題されています。商業だけでなく製造業も頻出ですので、製造原価報告書も派生問題として作成を要求されることが多いようです。
    決算整理型の主問題は、含まれる論点数は多いですが、いずれもあっさりした内容で基本的な処理がマスターできていれば攻略しやすいものです。財務諸表の金額欄のほぼすべてが解答欄になっているため、金額が用意できた都度順次記入していく解答スタイルになると思います。2~3割の勘定名が空欄になっているので、記載区分も正確に把握しておく必要があります。
    論点としては、現金・預金、棚卸資産、有価証券、金銭債権の貸倒引当金設定、減価償却、ソフトウェア、賞与引当金、税金、税効果会計は定番であり、減損会計、リース取引、資産除去債務も高い頻度で出題されています。日商簿記1級や公認会計士試験では定番化していない当座預金の調整や税金、税効果会計が必ずのように出題されるところが特徴的です。

    全体として、「財務諸表論」の計算問題については「簿記論」よりも攻略しやすそうです。かつては「理論問題は解答例を丸暗記しておけばよい」と言われていましたが、最近の出題を見るとただの丸暗記では対応は難しそうで、論旨を理解したうえでのキーワード等を暗記する方が効果的なようです。

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