2019年第2回短答式試験 ~ 管理会計論

本試験、お疲れ様でした。
理論が8問、計算が8問という構成でした。必ず得点したい問題が6問、50%の正答率を確保したい問題が8問です。
理論は、前回に引き続き、範囲外とされている論点からの出題がありましたが、解答不能となるような埋没問題はありませんでした。また、計算は、全問解くことはできないにしても、昨年よりは解きやすかったです。ただ、問題2の費目別計算は、資料の与え方が不親切といわざるを得ず、この問題に時間を投下した受験生は辛かったと思います。
(解答速報もご参照下さい。)

問題1(理論)原価計算基準 ~ 費目別計算
基準9、10、11からの出題です。11は長いですが、計算にも絡むので、何度も読んでおく必要のある基準です。

問題2(計算)費目別計算
本問は、「間接工は存在しない。」と仮定しないと解けないため、没問です。ただ、「間接工は存在しない。」と仮定して、直接工の消費賃率を 3,200円/hと算定できたのであれば、非常に簡単な問題ということになります。
計算の1つ目は、過去にも手を出すべきでない問題が多く、費目別計算ということもあり、手を付けなかった受験生は上手くリスク回避できたことになります。手を出した受験生も、労務費の計算で、「?」と感じたはずです。ここまでに費やした3~4分を捨てて、次の問題に行けたのであれば、それ程大きな痛手にはならなかったはずです。痛いのは、この問題に6~7分費やして、結局、あきらめざるを得なかった受験生です。
計算の一つ目は、「?」と感じたら、即、回避です。

問題3(理論)製造間接費
製造間接費に関する理論問題も、過去に多く出題されています。
本問は、エの選択肢の内容が分かりにくく、「基準操業度として実際的生産能力を選択している場合の記述なのか、それとも予定操業度を選択している場合にも成立する記述かなのか。」といったことを考え始めて時間を浪費してしまったかもしれません。
正答率は「中」としましたが、他の選択肢が簡単なので、正解して欲しい問題です。

問題4(計算)部門別計算
補助部門費の配賦問題は、高い確率で出題されます。
今回は、階梯式配賦法で予定配賦率の設定と実際発生額の集計を行う必要がありますが、補助部門が二つしかなく、変動費と固定費の区分もないので、5分程度でクリアしたい問題です。
資料と計算条件から、「自分の計算力であれば、正解までに何分かかるか?」が判断できるまで、日頃から練習しておくべき分野です。

問題5(理論)原価計算基準 ~ 総合原価計算
基準24を中心とした出題で、容易な部類なので、必ず正解する必要があります。

問題6(計算)総合原価計算 ~ 追加材料の投入
数量データの整理が上手くいけば、正解できるパターンの問題だということは、解き始めて直ぐに分かります。あとは、この手の数量データの整理が得意かどうか、残り時間と他の問題の難易度で解きにかかるかを判断することになります。合格レベルにある受験生でも8~10分程度かかりますが、時間を投下すれば、正解できる問題です。

問題7(理論)原価計算基準 ~ 標準原価計算
基準4(一)2を中心とした出題で、現実的標準原価、正常原価、理想標準原価といった過去に何度も出題されている論点です。必ず正解する必要があります。

問題8(計算)標準原価計算 ~ 配合差異・歩留差異・価格差異
期首・期末の仕掛品のないケースなので、正解する必要があります。材料が3種類あるので、単純な計算を繰り返すことになりますが、定型的な解法に乗せて短時間でクリアしたい問題です。なお、資料4. の「原料は標準購入単価で受入時の記帳を行っている。」という文言から、購入原料価格差異は「材料受入価格差異」を意味していると考えられます。この点については、消費価格差異を計算していても、正しい選択肢を選べたので、助かった受験生も多かったと思います。

問題9(理論)管理会計の基礎知識
毎回のように出題される「管理会計の基礎知識」ですが、「重点的に出題する試験範囲」から除外されているバランスト・スコア・カードから出題するマナーの悪さは相変わらずです。ただ、「管理会計の基礎知識」については、過去問の類題が出題されることが多く、本問においても、4つの選択肢中、3つが過去問とほぼ同じことが確認できています。この分野の対策としては、解説付きの過去問集を見ておくのが最も効率的です。

問題10(計算)企業価値の計算
久々の「企業価値の計算」です。2007年に短答式で出題されたときは、直後に実施された論文でも出題されたので、短答合格者は企業価値の論文対策も必要です。企業価値計算の問題としては、「これ以上簡単な問題はない。」というレベルですが、久しぶりということで、正解率は「中」としました。

問題11(計算)原価分析
「原価分析」というのは聞き慣れない分野ですが、A案~C案の利益線は共通となるので、CVP分析を行う必要はなく、単純に、各案の原価だけを比較すれば良いので、「原価分析」としておきました。中学生の頃に、グラフを描いたり、方程式を解いたりするのと悔いだった受験生には、解きやすい問題です。ただ、そういった分野が苦手な受験生は意外に多く、「自分だけが苦手なわけではない。」と思って下さい。
売上線はどの案も同じなので、各案の原価線について考察します。A案とB案は設備投資を伴いますが、単年度の意思決定なので、年間の減価償却費相当額を各年度の固定費支出額と考えます。こういったパターンの問題も過去の本試験で何度か出題されているので、知っていれば、「あぁ、あのパターンね。」ということで、短時間で正解できた受験生もいたはずです。ただ、知らなかった受験生も多いと予想して、正解率は「低」とします。

問題12(理論)ABCシステム
ABCの過去問には、解答に窮するようなものが幾つもあるため、そういった難しい問題に触れることで、苦手意識を持ったまま受験して、正解できるはずの問題を落としてしまうことがあります。本問は想像力を働かせて正解できた受験生も多かったと予想しますが、ウの選択肢がやや難しいため、「中」としておきます。

問題13(計算)原価改善
問題文に誘導されるがまま計算していけば、正解に辿りつくことができます。唯一、引っかかりそうなのが、「予定通りの生産数量であれば,(オ)円の原価改善額であることから」という箇所ですが、実際生産数量 950個の下での原価改善実績 80,180円から 1,000個の下での原価改善額を計算します。営業利益の予算実績差異分析における、変動予算(弾力性予算)の算定と同じ手法です。是非、得点したい問題です。

問題14(計算)業務的意思決定 ~ 追加加工の可否
追加加工を行うことによって、仕損が発生して販売可能量が減少するという、使い古されたパターンの問題です。スタンダードな内容の問題ですが、同じような計算を3回も繰り返すので、ある程度の時間が必要でした。

問題15(理論)設備投資の経済計算
設備投資の経済計算に関する典型論点です。イの選択肢は、資本回収係数が絡んでいるので分かりづらかったですが、こういった問題は、下書きに簡単な設例を作って考えると間違えなくなります。全体としては、それ程難易度は高くないので、正解したい問題です。

問題16(理論)事業部制組織の管理
事業部制組織の管理は、理論問題として、問題16で問われることが多いです。この分野は、管理会計論の強い専門学校で受講しているのであれば、アとイの選択肢が誤りなのが明らかだと判断できるので、正解できる問題といえます。