2019年第2回短答式試験 ~ 企業法

本試験、お疲れ様でした。
前年度と比較して、設立と機関からの出題が1問減少し、その分、株式からの出題が2問増加しました。判例知識は、平成30年第2回をピークに、前回大きく減少し、今回も記述3つ分の出題に留まっています。全体としては、前回と同程度の難易度で、他の科目に比べると、得点しやすい科目といえそうです。
(解答速報もご参照下さい。)

問題1(商法)、問題3(設立)、問題4・5(株式)、問題9・10(機関)、問題14(計算書類)、問題16(社債)の8問を確実に正解し、残りの12問のうち半分を正解できれば、合格ラインに到達できます。
他の科目にも共通していえることですが、必ず得点したい問題を取りこぼさないことが肝要です。

問題1(商法)商法総則 ~ 登記・商号・名板貸人・支配人
ウ. の記述が判例からの出題ですが、他の3つの記述が、登記、商号、支配人に関する基本的な内容でした。
正答すべき問題になります。

 

問題2(商法)商行為 ~ 留置権・交互計算・荷受人・問屋
ア. の記述が判例からの出題でした。

イ. の交互計算は、2013年第Ⅱ回にほぼ同じ問題が出題されていて、テキストでも取り扱っていますので、正解すべき問題です。

ウ. の荷受人の権利については、手薄だった受験生が多いと思います。

エ. は、問屋(ex.証券会社)の最たる性格について問われているため、正解すべき問題です。

イ. とエ . が明らかに「誤り」なので、判例や手薄な論点からの出題もありましたが、なんとか正解して欲しい問題です。

 

問題3(会社法)設立
ア. の設立時取締役の選任時期は基本論点なので、正解すべき問題です。

イ. の記述が判例からの出題でした。

ウ. は重要条文である33条からの出題ですが、「発起人」とすべきところが「設立時取締役」とされていて、「誤り」だと気付かなかった受験生も多かったと思います。

エ. の「不足額填補責任について株主は代表訴訟を提起できる。」というのは、基本論点です。

ア. と エ. が明らかに「正しい」ので、判例からの出題もありましたが、正解すべき問題です。

 

問題4(会社法)株式 ~ 新株発行無効の訴えなど
ア. 新株発行の無効の訴えを提起する権利が、少数株主権か、単独株主権かまでは、判別できない受験生が多いはずです。

イ. 109条2項(株主平等原則の例外)については、有名論点なので、正解すべき問題です。

ウ. 指名委員会等設置会社及び公開会社は、「取締役等選任に関する株式」を発行できないことは、有名論点ですが、裏側から問われているので、難しかったかもしれないです。

エ. 非公開会社の新株発行は、株主総会の特別決議を要するため、4倍規制が設けられていない点は有名論点です。

イ. の「正しい」と エ. の「誤り」が明らかなので、選択肢を2つにまで絞れる問題です。

 

問題5(会社法)株式 ~ 子会社による親会社株式の取得など
ア. 135条の「子会社は、原則として親会社株式を取得してはならない。」というのは、誰もが知っている論点です。ですが、問題文中にある「法務省令で定める・・・」という文言から、自信をもって解答できなかったのではないでしょうか。

イ. 308条1項の「子会社は保有する親会社株式について議決権を有さない。」というのは、有名論点なので、正解すべき問題です。

ウ. 子会社は保有する親会社株式について、議決権を前提とする共益権(株主総会招集権・株主提案権など)は認められないが、その他の共益権(定款・取締役会・総会の議事録閲覧権など)や自益権(剰余金配当請求権・残余財産分配請求権)が認められる、というのも有名論点なので、正解すべき問題です。

エ. 135条(親会社株式の取得の禁止)3項は、誰もが知っている基本論点です。

ア. 以外は易しいので、正解すべき問題です。

 

問題6(会社法)株式 ~ 単元未満株式
ア.は、195条1項がほぼそのまま記述されています。195条は、単元株式制度に関連する重要条文の一つです。

イ. 189条(単元未満株式についての権利の制限等)2項も重要条文で、「定款変更によっても制限できない単元未満株式の権利」が列挙されています。ただ、その裏返しの設問なので、やや難易度が高かったといえます。

ウ. 「単元未満株式売渡請求については定款の定めが必要とされる。」という点は、テキストで指摘していますが、細かい論点なので、正答率は低かったと思います。

. 「単元未満株式の買取請求については定款の定め不要である。」という点は、ウ.の論点とセットにしてテキストで指摘していますが、細かい論点なので、正答率は低かったと思います。

どこの専門学校の教材にも掲載されているような内容ですが、細かい論点なので、正答率はやや低いと思います。

 

問題7(会社法)株式 ~ 新株予約権証券
ア. 正誤の根拠が「このような規定はない。」という問題は正答が難しいです。

イ. 新株予約権証券が発行されている場合、新株予約権の行使や買取請求をしようとするときは、「株式会社に新株予約権証券を提出しなければならない。」ことは知識としてもっていたはずです。問題7の中では、最も正解したい選択肢です。

ウ. 新株予約権証券に関する268条と同じ内容の規定が株式にもあります(147条)。268条は知らなくても、147条を参考に、なんとか正解できた方もいたのではないでしょうか。

エ. 細かい論点なので、不正解でも仕方がないところです。

イ. の「正しい」が判れば、選択肢を3つにまで絞れます。あとは、147条を念頭におきながらウ. を「正しい」とできれば正解に辿り着けますが、正答率はやや低いと思います。

 

問題8(会社法)機関 ~ 機関設計
327条です。
326~328条は超重要条文です。内容を暗記するのに時間はかかりますが、正答しておきたい問題です。

 

問題9(会社法)機関 ~ 書面による議決権行使
ア.は、311条3項がほぼそのまま記述されています。311条は基本条文です。

イ. の記述は、311条4項の「株主」を「債権者」に入れ替えていますが、やはり311条が基本条文なので、正解すべき問題です。

ウ. の記述については、施行規則66条(議決権行使書面)1項2号の知識が必要なので、正解できなくても構いません。

エ. 「書面投票制度を採用している場合には、株主総会参考書類及び議決権行使書面を交付しなければならない。」というのは有名論点です。

正答率の高い問題です。

 

問題10(会社法)機関 ~ 株主総会及び種類株主総会
ア.「全部の株式を取得条項付株式とするのは、株主全員にとって大きなデメリットとなるため、株主全員の同意が必要である。」というのは、有名論点です。

イ. 「株主・会社債権者は、営業時間内いつでも、株主総会議事録の閲覧・謄写を請求できるが、親会社の株主は裁判所の許可が必要である。」というのは、有名論点です。

ウ. の記述は、320条そのままです。320条は基本条文です。

エ. 324条によれば、普通決議、特別決議、特殊決議については、定款により決議要件を加重できます。ただ、特別決議の定足数については、定款により軽減できるので、全体を覚えておくのは大変です。

ア. ~ ウ. の記述が易しいので、正答すべき問題です。

 

問題11(会社法)機関 ~ 監査役設置会社における取締役会
ア. 取締役会の監督機関としての側面を考えれば、正しい判定ができたと思います。

イ. 招集通知は、株主総会が開催2週間前、取締役会が開催1週間前、と対比させて覚えていたはずです。

ウ. 監査役の監督権限が形骸化することのないように、監査役が異議を述べたなら取締役会の決議省略はできません。細かい内容ですから、正誤判定は難しかったと思います。

エ. 代表取締役の報告義務については知っていても、取締役・監査役の全員に通知した場合との関係についてまでは知らなくとも仕方ない気がします。

ア. イ. を迷わず「正しい」と判断できれば正答できたと思います。

 

問題12(会社法)機関監査等委員会設置会社における取締役の競業等

ア. 取締役の競業避止義務は、監査等委員である取締役にもあてはまります。

イ. 損害額の推定は競業取引において規定されています。利益相反取引では任務懈怠を推定する規定があります。混同せずに覚えていましたか?

ウ. ここまでは知らなくとも、という内容でした。

エ. 自己のためにする利益相反取引は、行為の利益相反性が著しく高いので、責任が加重されています。

ア. の「誤り」とウ. の「正しい」の判定が少し難しかったですが、なんとか正答したい問題でした。

 

問題13(会社法)機関 ~ 役員等の報酬等
ア. 総額が定まっていればお手盛り防止の必要はありませんが、監査等委員の地位の安定と独立性確保のために、報酬も区分されている必要があります。

イ. 会計監査人の選解任や報酬に監査役等が関与するのは頻出論点です。

ウ. 報酬委員会の権限として知っているはずですが、報酬委員会の委員である取締役ということで、自らの報酬を決めることになるのか?と迷わせる記述でした。

エ. 監査等委員以外の取締役の選解任・報酬等について監査等委員が選任する監査等委員は意見陳述権があります。

監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社の規定は手薄になりがちですが、その中では主要な内容なので、できれば正答したかったですね。

 

問題14(会社法)計算書類等
ア. 計算書類等の保存期間10年は覚えていたはずです。

イ. 監査→取締役会承認→株主総会の承認(または報告)という時系列は、監査論の知識からも間違えないと思います。

ウ. 会計監査人に会計監査を行う機関ですから、事業報告は監査対象外になります。

エ. 437条そのままです。

4つの記述すべて易しいので正答できたと思います。

 

問題15(会社法)持分会社
ア. 持分会社の社員の地位は持分単一主義によります。

イ. 業務執行しない社員にも監視権があります。

ウ. 無限責任社員のいる合資会社では、会社財産の処分方法を社員に任せても、会社債権者が害されるおそれが低いので、任意清算が認められています。難しい内容でした。

エ. 607条1項の通りですが、会計士受験生には「保佐開始」という概念がないと思うので、分からなくて当然です。

ウ. の「正しい」、エ.の「誤り」が正誤判定できないので、正答できなくても仕方ない問題です。

 

問題16(会社法)社債
ア. 社債権者集会の決議には裁判所の認可が必要なこともあり、決議取消の訴えの制度は設けられていません。

イ. 社債管理者には、銀行・信託会社・信用金庫等でなければなりません。細かな内容ですが、管理者として適任かどうかを考えて正しいとできたと思います。

ウ. 711条そのままです。

エ. 株主総会と同じで、書面投票や電子投票・議決権代理行使・不統一行使が認められています。

正答できる問題でした。

 

問題17(会社法)事業譲渡及び組織再編

すべて債権者保護の手続きがとられるか否かの記述でした。引っかけのあるイ. と株式交換時の例外であるエ. が少し難しかったかもしれませんが、ア. とウ. の正誤は分かりやすいので、なんとか正答したい問題でした。

 

問題18(会社法)組織再編
ア. 無限責任社員のいる会社から債務が分割されると会社債権者の不利益となるので、分割会社側に制限がありますが、吸収分割の承継側の会社には制限がありません。

エ. 株式移転は株式会社同士で行うことができます。

イ. の「正しい」、ウ. の「誤り」が難しかったので、できなくても仕方がない気がします。

 

問題19(金融商品取引法)有価証券

金商法上の有価証券となるか、を問われました。対策していたら簡単ですが、知らなければ仕方ないタイプの問題です。

 

問題20(金融商品取引法)開示
ア. 四半期と半期はどちらかを提出、いうのは有名論点です。

イ. 臨時報告書の提出が必要となる事象を網羅的に覚えるのは難しいですが、株式移転の重要性から判断できたと思います。

ウ. 属する月の翌月からか、属する月からか、というのは見逃してしまったかもしれません。

エ. 親会社等状況報告書の提出の趣旨から考えてください。

ウ. 以外は有名論点ですからできて欲しい問題でした。