公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第1回
受験生の皆様、3日間の健闘、本当にお疲れ様でした。
順次、解答・解説をupしていきます。
現在、監査論・租税法・経営学・会計学(午前)・会計学(午後)の解答速報を公開中です。
今回は監査論について振り返ってみたいと思います。
解答例はこちら → 監査論解答
監査論
出題内容は以下の通りでした。
第1問:他の監査人等の利用
第2問:販売プロセスの監査に関する事例問題
第1問
初見は「簡単そう」と思わせられる問題でした。しかし、よくよく問題を読んでいくと、ある答案が複数の問に当てはまるような気もするし、一つの問に複数の答案が思い当たるし、と各問に解答すべき内容が絞りきれないという難しさのある問題でした。
各問に対して、順番に思いついたことを解答していくと、どの問も似たようなことを解答してしまう危険性があります。普段から、全ての問題に目を通して、全体の構成を考えて答案を用意してきたかが問われた気がします。
問題1
監査基準に「他の監査人等の利用」という項目が設けられている理由が問われました。「他の監査人等の利用」の目的は、「効果的かつ効率的な監査の実施」であることは明らかですから、その目的ために監査基準にも規定されている、という結論は最初に思いついたはずです。
残りの解答スペースには、① 監査基準に規定されるほどに「他の監査人等の利用」が重視される背景、② 「他の監査人等の利用」がなぜ「効果的かつ効率的な監査の実施」に資するのか、といった内容を記述することができると思います。
①では、他の監査人等にはグループ監査の構成単位の監査人、専門家、内部監査人が含まれますので、それぞれについて指摘したいところです。構成単位の監査人(他の監査人)の監査の結果を利用することとなった背景には、監査対象として国際的な連結企業集団が増加したことが指摘されます。答案に書く必要はないですが、国内の連結会社は同一の監査人であることがほとんどなので、構成単位の監査人の利用は在外子会社の監査人が想定されますから「国際化」は必ず含めたいキーワードです。
専門家の利用は、例えば退職給付会計の導入に伴う、年金数理計算の専門家の利用等を想定して、会計基準・会計処理の高度化・複雑化が背景となるでしょう。
内部監査人は内部統制システムの一部なので、企業活動が複雑化するのにつれて企業の内部統制システムが高度化・複雑化したことが背景となるでしょう。
②では、監査資源の制約があること(効率性)や、監査人の専門外である高度な知識が要求されることがある(効果・有効性)ことが指摘できます。
①の内容をベースに②も織り込むのが、答案としては書きやすかったのではないでしょうか。