公認会計士短答式試験 平成30年度第Ⅰ回講評~第4回

最終回は、企業法の講評です。

出題分野は、前回減少していた機関・株式からの出題数が元に戻り、逆に資金調達や会社の計算からの出題が元の出題数に減少しました。

 商法(会社法)総則・商行為

問題1は商法からの出題ですが、ウは事業譲渡の競業避止義務、エは代表取締役の退任登記という会社法の内容ですから、正誤は判断しやすいと思うので、アの判例かイの代理商のどちらかさえ分かれば正答できたと思います。

問題2は商行為からの出題です。代理人・匿名組合・問屋・場屋営業者と広い範囲から出題されていますし、後回しになりがちな分野なので難しかったと思います。内容自体はその分野では優先順位が高いものなので、間に合っていた方は正答できたと思います。

例年、優先順位が低いとされる商法総則・商行為ですが、語弊を恐れずいうと表面的な内容が多いですし、過去問とその周辺くらいは確認しておいて損はないと思います。逆に、判例がそれぞれ1つずつありますが、そこまでは受験生には負担が重いので、残りの文章で正誤が分かるように対策していけば十分かと思います。

 設立

問題3は設立時取締役の責任が中心です。設立時特有の発起人の存在に留意が必要ですが、その他は成立後の会社の取締役と対比させながら覚えると良いでしょう。イの設立時取締役の発起人への通知義務は少し細かい内容かと思いますが、その他は容易に正誤判定できたと思います。

問題4は定款の記載事項です。絶対的記載事項の知識だけで正答できるので、間違えることはなかったと思います。

 株式

問題5は、判例の絡むイ、子会社からの利益供与のエ、反対株主の買取請求があり得ないウと1つずつが少しづつ難しく、全体として難しい問題でした。株主全員の同意を必要とする事項について反対株主の買取請求はあり得ないことは、割とよく出てくるので関連させて覚えておく価値があると思います。

問題6は、ウの特別支配株主の株式等売渡請求の承認決議が株主総会か取締役会かを問う問題が細かかったですね。

問題7は、募集株式引受人と仮装払込に関する問題でした。仮装払込は設立時の発起人の責任との関連で学習していると思うので、これを募集株式引受人にあてはめられたかがポイントでした。

 機関

問題8は機関設計です。定番の出題ですし、間違えられない問題です。

問題9は株主総会の招集や議案提出、決議についての問題です。判例が1つありますが、その他は定番の内容なので、正答できたと思います。機関全体についていえることですが、公開・非公開の違いや取締役会設置会社会か否かは常に意識して学習すべきようです。

問題10も株主総会の決議についての出題です。アだけ少し細かいですが、イ~エは簡単だったと思います。

問題11は監査等委員会設置会社からの出題です。常勤監査等委員の必要性の有無や報告義務や意見陳述権といった監査権についての基本的なところから出題されているので、正答率は高かったでしょう。

問題12は監査役・監査役会から幅広く出題されています。条文知識があればそれはそれで晴らしいですが、監査役が独任制の機関であり個性が重視されるという理解からイとウの誤りを指摘できるたなら、それも素晴らしいですね。

問題13は取締役の職権に関する問題です。単純に知識があるかを問われた側面が強い問題です。