令和3年度 公認会計士論文式試験 講評~監査論

令和3年の監査論は、第1問も事例問題でした。令和2年度も第1問に事例問題が含まれていましたが、今回は全面的に事例問題でしたから、受験生としてはかなり手強かったのではないでしょうか。そして、今年度の監査論の出題のもう一つの特徴は、「監基報」の文言がそのまま答案にできる問題が多い、ということです。思考力よりも「監基報」から問題に対応する箇所を上手く探し出せるか、という処理能力が問われた気がします。問題量としては例年より少なめなので、「監基報」を検索する時間的余裕もあったのではないでしょうか。

以下、問題毎に講評していきます。

第1問:監査上の主要な検討事項

問題1:KAMの決定プロセス

問1は、KAMの決定プロセスを3つに分けて説明させる問題でした。「監基報」ではKAMの決定プロセスは2段階で説明されているので(701号8項)、これを上手く3つに整理して答案構成する必要がありました。「①監査役とコミュニケーションした事項から監査を実施する上で監査人が特に注意を払った事項を決定し、②その中から職業的専門家として特に重要であると判断した事項をKAMとして決定する。」を「①-1.監査役とコミュニケーションする、①-2.①-1.から監査を実施する上で監査人が特に注意を払った事項を決定する、②①-2.から職業的専門家として特に重要であると判断した事項をKAMとして決定する。」と分けれたなら、配点の半分は獲得です。あとは、各事項が事例の何にあたるかを上手く当てはめればOKです。

問2と3は、KAMと未公表情報との関係が問われました。これも「監基報」から答案を作れますが(701号A36.4.5.)、問2は「KAMの記載が未公開情報の提供を意図するものではない」ことさえ記述できれば良いので、「監基報」に頼るまでもなかったかもしれません。問3は、事前に経営者や監査役等と協議するという、監査人の対応としてよくある内容です。

問題2:KAMの報告

問1のKAMと監査意見の関係については典型論点なので、答案を用意されていたと思います。

問2の具体的記載事項については答案のスペースが限られていて、【状況2】①として事例が用意されているものの、使いどころがない感じでした。出来るだけコンパクトにまとめて、重要な事項を落とさないように記述できたかどうかでしょう。


第1問は、問題1の問1、問題2の問1がそれぞれしっかり記述できて、それ以外も半分くらいは書けている手応えがあれば上々です。

第2問:グループ監査

問題1の重要な構成単位の識別と、問題2の構成単位の監査上の重要性は、どちらかというと短答対策で学習する細かめの内容ですが、忘れてしまっている場合は「監基報」で探し出す必要がありました(600号8.20.)。

問題3は、正直いって、何を答えさせたいのか、出題意図を絞り込めませんでした(特に問1)。<資料1>の、C社には「会計処理の軽微な誤謬が発見されている」「識別された財務報告に関する内部統制の重要な不備に関する説明」との内容に関連づけて答案を用意しましたが、正解はこれだけではないと思います。

問題4は、事例問題らしい「アサーションと監査手続の組合せ」を答えさせる問題です。よほど見当違いでなければ、速報の答案と2~3つ合っていれば、問題なしです。


第2問も問題1と問題2がしっかり記述していて、後は半分くらい書けていれば問題なしです。

以上です。