新しい会計処理のおさらい~株式報酬
令和1年の会社法の改正で整備された「株式報酬」について、企業会計基準委員会から「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」 が公表されています。ここでは、株式報酬が付与された場合の会計処理についておさらいしていきたいと思います。
「株式報酬」は、会社が、取締役等に報酬として自社の株式を無償で交付するものです。このため、ストック・オプションと似た性格を持っており、会計処理も酷似しています。交付方法には ①事前交付型と②事後交付型があり、新株を発行する場合と自己株式を処分する場合の組合せで大きく4通りの会計処理が考えられます。
①事前交付型
対象勤務期間(ストック・オプションとほぼ同様)開始後すぐに株式が交付され、権利確定条件(業績条件・勤務条件:ストック・オプションと同様)が達成された場合に譲渡制限が解除されます。
(1) まず、株式を事前に交付した時点で以下の処理を行います。
- 新株発行:発行済株式総数の増加
- 自己株式処分:借) その他資本剰余金 XXX 貸) 自己株式 XXX
(2)次に、報酬として株式が交付されるため、取締役等の勤務に応じて以下のような仕訳となります。このときの株式報酬の金額の算定方法はストック・オプションと同様です。
- 新株発行:借) 報酬費用 XXX 貸) 資本金・資本準備金 XXX
- 自己株式処分:借) 報酬費用 XXX 貸) その他資本剰余金 XXX
(3)もし、権利確定条件が達成されなかった場合には交付された株式は没収されます。会社側からすると自己株式を取得することになります。
- 新株発行:自己株式数の増加
- 自己株式処分:借)自己株式 XXX 貸)その他資本剰余金 XXX
②事後交付型
権利確定条件が達成された場合に株式を交付します。事後交付型の権利確定までの処理は、ストック・オプションと同様で、株式報酬費用が株式報酬に、新株予約権が新株引受権になっているだけです。
(1)まず、株式報酬が得られる権利を付与した時点での処理はありません。
(2)次に、取締役等の勤務に応じて以下のような仕訳となります。このときの株式報酬の金額の算定方法はストック・オプションと同様です。
- 借) 報酬費用 XXX 貸) 株式引受権 XXX
(3)権利確定条件が達成された際の仕訳は以下のとおりです。自己株式帳簿価額と株式引受権との差額(自己株式処分差額)はその他資本剰余金で処理されます。
- 新株発行:借)株式引受権 XXX 貸) 資本金・資本準備金 XXX
- 自己株式処分:借)株式引受権 XXX 貸) 自己株式(帳簿価額) XXX
以上、ざっくりとした説明ですが、引っかかる箇所があれば、これを機に再確認してみてください。