第67回(平成29年)税理士試験 第2回(財務諸表論)

 財務諸表論

出題分野は以下の通りでした。

第一問:空欄補充問題1問、正誤問題(4択式)8問、記述問題2問

第二問:資産除去債務に関する理論問題

第三問:総合計算問題

第一問:個別論点の理論問題

記述問題以外はほとんどの方が正答できたと思われる内容でした。

記述問題は、期間損益による業績評価についてとリサイクリングについて問われました。期間損益による業績評価は、経営成績を現金収支余剰ではなく期間損益で表す理由を減価償却の手続きを例に、とされているので、費用収益対応の原則(成果と努力の期間的対応)について有形固定資産の成果獲得への貢献が耐用期間に及ぶことなどに絡めて説明できたら良かったと思います。

リサイクリングについては、苦手とする税理士試験受験生の方が多いのではないでしょうか。その他有価証券を例に、とあるので、期末時価評価時に純資産直入されてその他の包括利益に含まれた時価評価差額が、売却時に当期純利益に含まれてもう一度純資産の部の利益剰余金となることが説明できたなら上出来かと思います。

第二問:資産除去債務

問1について

会計処理に関する文章の空欄補充と、使用期間中の環境修復や修繕が資産除去債務を構成しないことは得点できたと思います。

資産除去債務の測定値の属性の基礎についての問いはスルーで問題無しです。

資産負債の両建処理以外の会計処理方法についての指摘は、会計基準では「除去にかかる用役の費消を、使用に応じて各期に配分し~」となりますが、「引当金として処理し、除去費用を各期の費用として認識する考え方」というような答案でも得点があると思います。

資産負債の両建処理が引当金処理を包摂する理由については、資産の減価償却を通じて除去費用が期間配分されることや、引当金処理で最終的に負債計上されることになる全額が資産除去債務として負債計上されることなどが指摘できるはずです。

問2について

見積りの変更という切り口から、通常は耐用年数の見積りの変更の論点として紹介されるプロスペクティブ・アプローチとキャッチアップ・アプローチを思い出せたかがポイントでした。問題文中に「レトロスペクティブ・アプローチの他に」とあることがヒントになったと思います。

将来の支出見積りの変更があったときの資産除去債務の会計処理は、計算の知識でなんとか解答できたのではないでしょうか。その採用論拠までは解答できなくとも仕方ないという感じです。

第三問:総合計算問題

決算整理前残高試算表から決算整理を経て、貸借対照表・損益計算書・販管費の内訳米明細・繰延税金資産の注記の作成が要求されました。

問題量としてはそれほどでもないのですが、解答箇所が多く設定されているので、数値が判明したところから、販管費の内訳明細・繰延税金資産の注記の含めて順次解答記入しないと時間的に厳しかったかもしれません。

売上債権については、手形貸付金の処理・過年度貸倒処理した債権の回収を正しい勘定で処理できたかがポイントでした。

貸倒引当金は、貸借対照表・損益計算書・販管費の内訳米明細・繰延税金資産の注記のすべてに解答記入できる論点です。内容自体はシンプルな設定ですから、試算表からの残高調整と損益区分さえ間違えなければ完答が狙えたと思います。

有形固定資産の減損処理は、割引前将来キャッシュ・フローの計算から要求されていますが、それほど複雑ではありません。むしろ、土地に配分された減損損失について繰延税金資産に回収可能性なしとして、税効果の注記で評価性引当額とできたかがポイントでした。

リース取引は、リース料総額の現在価値も与えられていますし、利息の処理も定額法です。得点箇所にできたと思います。

退職給付会計は、過去勤務費用の算定が必要でした。重要な過去勤務費用がある時は、利息費用の算定上、基礎とすべき退職給付債務の金額の選択が問題となるのですが、退職年金規定改訂後の利息費用が与えられていたので、迷わず計算できたと思います。

全体として手の出せない論点は含まれておらず解きやすい内容でした。8割以上得点できた方も多いと思います。

以上です。