公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第2回

問2:現物分配

試験範囲に含まれることになった組織再編税制からの出題で、専門学校で紹介する典型的なパターンだったので、解答しやすかったと思います。

現物分配とは税法上の用語で、剰余金の配当またはみなし配当により、株主に対して金銭以外の資産を交付することをいいます(法2条12号の6)。

非適格現物分配の場合は、現物資産を時価で評価するため、その譲渡益に課税されます。これに対し、適格現物分配の場合は、現物資産を帳簿価額により株主に譲渡したものとされるため、資産の譲渡益課税を受けることはありません(法62の5)。

適格要件は、「現物分配により資産の移転を受ける内国法人がその現物分配の直前において現物分配をする内国法人との間に完全支配関係があること。」のみで、負債の移転を含まないため、債権者保護も不要であり、企業再編の時間とコストが節約できる方法として、注目されています。

問3:吸収合併

問2に引き続き、組織再編税制からの出題でした。

非適格合併の場合は、被合併法人の資産を時価で譲渡したものとされるため、その譲渡益に課税されます(法62)。これに対し、適格合併の場合は、被合併法人の資産が簿価のまま合併法人に引き継がれるため、資産の譲渡益課税を受けることはありません(法62の2)。

適格要件は、完全支配関係以外の場合は複雑になりますが、本問のように完全支配関係がある場合には、合併にあたり、被合併法人の株主に対し、合併法人の株式以外の資産が交付されないことだけを確認すれば良く、これが問題文に明示されていたため、適格要件を満たしていることは容易に判定できたはずです。

問4:国外転出をする場合の譲渡所得等の特例

本問は、他の3問とは異なり、所得税法からの出題です。かなり端っこの論点なので、事前に対策を練っている受験生は少なかったと思います。

この手の問題は、条文がそのまま問題となっていることが多いこと、また、計算に比べて理論の配点が大きいことからすれば、あきらめずに、全力で条文を探す方が賢明です。

本問の場合、配布される法令基準集の60条近辺に「譲渡所得の特例」に関連する条文があることに気づけば、正解に辿り着くことができ、5点を獲得できます。

所得税の条文は、全部で200条ほどなので、軽く目を通して、どういう内容がどの辺りに載っているのか、普段から確認しておくだけで、本試験での検索時間をかなり節約できます。条文に目を通す時間のない方は、目次だけでも確認しておけば良いでしょう。以下に、目次のアドレスを示しておきます。

所得税法-目次