公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第5回
第五問
連結の計算は、いつも通り難易度の高い問題でした。ただ、2017年のように全く手が出ないというわけではなく、問題1の穴埋めは、7箇所の解答箇所のうち、6箇所程度を埋めたいところです。問題2と問題3については、資本連結を捨てて、成果連結で点数を拾うことで、3割~4割程度を確保できるはずです。資本連結を捨てれば、理論に時間が回せるので、問題4は計算の知識を活かし、問題5は配布条文を利用して、理論は5割程度を目指したいところです。
問題1:穴埋め問題
過去の経験から、問題2、問題3は点数がとりにくいはずですから、問題1でしっかりと得点しておきたいところです。ここでは、計算箇所のcとdの計算過程を示しておきます。
c:(6,615株+1,800株)÷(14,700株+1,800株)=51%
d:直接所有60%(=30,000株÷50,000株)+間接所有10.2%(=10,000株÷50,000株×51%)=70.2%
問題2:20X3年度末の連結財務諸表項目
ここは、本試験中に取りに行けそうな解答箇所の計算過程を示しておきます(2箇所/5箇所)。
①関連会社株式:15,000(連結B/SのT社株式)+利益剰余金増加額1,000×45%-のれん償却150=15,300千円
②のれん:取得原価28,000-(資本金20,000+利益剰余金8,000+評価換算差額2,400+土地評価差額2,500×0.6-退職給付評価差額1,000×0.6)×80%=2,960 → ∴ 2,960×8年/10年= 2,368千円
③利益剰余金は、P社の利益剰余金からスタートして、S社の利益剰余金増加額×80%、のれんの償却、内部利益の消去と税効果、持分法適用、退職給付評価差額の取崩、とくに、〔資料ⅴ〕6.から退職給付評価差額を10年で取り崩していくような判断が必要で、正答可能性は低いと思います。
④その他の包括利益累計額は、その他有価証券の6,000千円に、P社分とS社分の退職給付調整額を考慮することになります。調整項目は少ないですが、受験生の苦手分野なので、正答可能性は低いと思います。
⑤非支配株主持分については、③、④よりは正答可能性が高くなります。②ののれんの計算ができているのであれば、退職給付評価差額の償却だけがハードルとなります。
問題3:20X4年度末の連結財務諸表項目
正答できる箇所とできない箇所の難易度の差が大きいため、普段から、連結会計を得意としている受験生にとっては、ライバルに差を付けにくい問題でした。今は、日商2級でも成果連結まで学習します。そのレベルの知識+αで、次の項目に正答できます。
ア.売掛金、イ.棚卸資産、エ.投資有価証券、キ.資本金、ケ.売上高、コ.売上原価、シ.のれん償却額、ス.営業外収益、セ.持分法による投資利益、ネ.剰余金の配当
26箇所のうち、実に、10箇所(38%)が連結会計の基礎知識で正答できます。しかし、ここから先は、難易度がグンと上がります。
各専門学校は、問題2、及び問題3の合格ラインを3割~4割程度と予測しています。普段からテクニックに走らず、連結会計の基礎的な考え方を重視している受験生にとっては、楽に合格点の採れる問題だったということになります。
問題4:当期純利益とその他包括利益
理論問題ですが、2つのうち、1つ書ければ、十分だろうといわれています。思いつくかどうかなので、白紙の受験生も多かったでしょう。この手の問題は、解答を見れば、「あぁ、そんなことで良かったのか。」となりますが、他の受験生も皆同じです。できなくても、あまり気にする必要はないと思います。
問題5:子会社の判定
問1の支配力基準による実質的判断の基準は、配布基準集の「連結財務諸表に関する会計基準」7項(2)に記載があるので、これを見つけられた方は完答できたと思います。