公認会計士短答式試験 平成30年度第Ⅱ回講評~第3回
第3回は企業法の講評です。
今回の傾向としては、判例からの出題が多いこと、会社法以外からの出題の難易度が高かったことが指摘できます。詳細は解答解説をご覧ください。
会社法(設立・株式・機関)
会社法(設立・株式・機関)からの出題は11問あり、難易度はさほど高くないようです。
設立からは2問、株式からは新株発行無効の訴え(これは資金調達の範囲ともいえます)も含めると4問が出題されました。問題7の株式併合は、株式併合が何かさえ理解していればアエの誤りに気づけるはずですが、株式の中では難しかったと思います。
問題8の新株発行無効の訴えでは、「判例によれば~」の正誤がイウで出題されました。判例からの出題に対しての対策は難しく、それでなくても細かな知識が要求される企業法の勉強の中で、そこまで広げられないという方は多いのではないでしょうか。個人的には、前後の関連する条文の趣旨から考えて正誤判断してみる、というのが得策な気がします。例えばイの募集事項の公示がないことが無効原因になるかは、公示を要求した201条の趣旨である既存株主の利益保護(持分比率維持のために募集株式を引き受ける、新株発行の差止請求する機会を与える)から考えて、無効原因とすべきか?と正誤判断してみるわけです。あとは、ア~エのすべてが判例から出題される可能性は低いので、判例でない文章の正誤判定との兼ね合いで選択肢を絞れるはずです。条文趣旨の知識は論文式試験でも役立つので、短答対策から条文趣旨も意識して損はないと思います。
機関からは5問が出題されました。問題10種類株主総会、問題12内部統制システムの整備、問題13社外取締役は、内容が細かく難易度高めでした。問題11もアイが判例からの正誤でしたが、ウエの正誤判定が容易なので正答できたはずです。
会社法(計算・組織再編等)
問題14連結財務諸表は、一見難しそうですが、イウが監査論の知識で対応できました。監査論とは切り口が違う面もあるので、同様に対策とはいいませんが、作成が求められる計算書類・財務諸表、監査役・会計監査人関連は、監査論と企業法の両方を意識して知識を整理しておくと効率的です。
問題17事業譲渡では、ア判例の正誤は事業譲渡の定義から判断することができますし、ウも典型論点です。それでもイエが自信を持って正誤判定しにくいなと感じました。
問題18は吸収分割の株式買取請求です。内容が細かすぎる気がしますので、間違えても仕方ない問題です。
商法・商行為
問題1はすべて判例からの正誤判断です。こうした問題は受験上対策のしようがないので、解答解説では*にしていますが、例えばエは瓦の製造業なので当然に絶対的商行為でしょう、と判例を知らなくてもその場で判断できそうです。
逆に、問題2の使用人・代理商は条文を読み込んでいれば解ける対策可能な問題ですが、細かな知識が求められるためそこまでインプットできたかといえば難しかったと思います。
問題1のような対策しようのない問題を見ると、戦意がそがれがちです。私自身は出題順から解いていくタイプですが、メンタル対策として会社法から解き始めるのも一つの方法かもしれないと思ってしまいました。
金商法
問題19は有価証券届出書の虚偽表示についての損害賠償責任が問われました。半分は監査論の知識で対応できそうですが、それでも難しい問題でした。
問題20は、企業内容開示府令まで追いかけないと正答できない問題です。受験上はスルーでいいでしょう。
以上です。