短答式試験の講評(2019Ⅰ)~財務会計論

個別問題~計算

問題4は固定資産の取得原価の問題で、一見簡単そうで実は難しい問題でした。土地の取得では交換と現物出資が組み合わされていて、会計処理も単純に組み合わせれば良いだけなのですが、案外できないものですよね。建物の改修も、資本的支出か収益的支出かはむしろ税法の知識が効いてくる部分ですし、植栽が構築物になるというのも実務的すぎる気がします。できなくても気にしないでください。

問題6は社債の買入償還です。おそらく多くの受験生がよく練習しているパターンですし、容易に正答できたと思います。問題7は資産除去債務の複数の資産を一体として使用する場合の処理です。これも一度練習していれば計算自体は単純なので正答できたと思います。

問題8は繰延資産と臨時巨額の損失の問題です。繰延できる株式交付費が資金調達目的であること、繰延できる開発費と研究開発費の区分ができること、臨時巨額の損失とするには法令の対象と認められる必要があること、という細かな知識が必要であり、四半期の月割り計算に引っかかりやすさがあることから、案外難しい問題だと思います。

問題10は収益認識に関する新基準の公表で廃止されることとなった「工事契約に関する会計基準」からの出題です。こうした出題は新基準の本適用まで増えると思っておきましょう。まじめに解くと時間がかかる問題ですが、工事Aでは工事損失引当金を考慮すると工事利益が0になることが自明なので、工事Bだけ計算することに気づけたなら短時間で解けたと思います。

問題12は分配可能額の計算です。一番やっかいなのれん等調整額の設定がシンプルなので、そうは間違えなかったはずです。

問題14は自己新株予約券の減損処理です。マイナーな論点なので、パスした方もいるかもしれないですね。自己新株予約権の減損処理は、対応する新株予約権の簿価が下限となることが特徴的です。

問題16は一時金方式の退職給付会計です。個別と連結の両方の数値を効率的に算定できるように学習してきたかが問われました。個人的には会計基準のワークシートは使い勝手が良くないので、どこの専門学校もそうだと思いますが、やはり勘定で解くことをお薦めします。

問題18は、吸収合併で逆取得となるパターンです。典型論点なので、どこの専門学校でも丁寧に講義しているかと思いますが、それでも、得点できなかった受験生が多かったはずです。講義で取り扱っている、こういった問題の正答を積み重ねることで、合格が決まります。不正解だった受験生は、テキストの論点を丁寧に一つ一つ潰していくように心掛けて下さい。逆取得の場合に、個別上と連結上で、どうして解説にあるような処理を行うのか、ここはストーリーがしっかりとあるところなので、会計人として身につけておきたいところです。

問題22の減損処理は、最後まで計算しないと正答できなくて手間は掛かりますが、ようあるパターンとして受験生の方々は練習している設定なので、できて欲しい問題です。

総合問題

問題23~28は、連結の総合問題です。連結の総合問題は、単純合算した財務諸表に連結修正仕訳を加味して計算するのが一般的です。今回は、連結修正仕訳をたくさん入れないと正答できない問題が多かったため、最近5年間の総合問題の中では、最も難しく感じました。問題23の「のれん」は条件付取得対価の処理が必要ですし、問題24の「A社株式」は、取得関連費用や土地や甲商品の未実現利益を反映させるのどうか、といった論点が含まれていました。また、連結修正仕訳の数は少なく見積もっても、問題25の「利益剰余金」が8つ、問題26の「非支配株主持分」が9つ、問題28の「親会社に帰属する当期純利益」が7つもありました。問題26の「非支配株主持分」はタイムテーブルから正解をえることもできますが、問題25、28については、これだけの数の連結修正仕訳を全部合わせないと正解が得られないため、手を出さない方が賢明だったといえそうです。結局、簡単なのは、問題27の「売上原価」だけで、あとは、「問題23、24、26のうち1つか2つを正解できれば充分に合格点」というのが今回の感想です。

以上です。