日商簿記1級 第153回 工業簿記・原価計算講評
第153回は、商業簿記は簡単でしたが、会計学の連結で躓いた印象を引きずったまま、工業簿記・原価計算を迎えた受験生が多かったと思います。実は、連結も合わすことが難しいのは、「資本剰余金」、「利益剰余金」、「親会社株主に帰属する当期純利益」、「包括利益」の4つだけですが、仕訳が分からない論点が2~3つあると、惨敗感を抱いてしまいがちです。気分を切り替えて、工業簿記・原価計算でしっかりと挽回できたかが合否を分けたのではないでしょうか。取りこぼしがなければ、かなり高得点が狙えた問題です。
以下、個別にみていきます。
工業簿記
費目別計算+ABC(活動基準原価計算)の問題でした。
定番の出題ですが、基礎がしっかりできていないと、問題の構造が理解できなかったかもしれないです。2級工業簿記から学習する、P/L作成までの勘定の流れがしっかり頭に入っていて、問題によって柔軟に対応できる力が問われるところです。本問が違和感なく受け入れることができるのであれば、工業簿記の基礎が身についている、と考えて大丈夫です。
あと、材料元帳の作成には時間がかかるので、15分過ぎて、まだほとんど進んでいない状況に陥りがちです。それは皆同じなので、焦らないようにしたいところです。
原価計算
第1問は、営業利益の予算実績差異分析の問題でした。本問の場合は、予算P/Lから原価標準を計算して、そこから、材料の標準価格を逆算させていますが、留意点は、それくらいです。
定型的なボックス図にあてはめて、完答できる論点なので、受験生としては得意にしておきたいところです。
下書き用紙にボックス図を書いて、資料の数値を書き込んでいけば良いので、解いていて安心感があります。私は、この問題から解き始めて、次に設備投資の経済計算、最後に工業簿記の問題を解きました。
第2問は、設備投資の経済計算です。
何のひねりもない、サービス問題ですが、年々の現金流入額が毎年異なる設定なので、間違えないように、丁寧に解き進むように心がけましょう。設備投資の問題は、一つでも計算を間違えると、以下全滅になりがちです。最終年はこの投資計画単体では赤字ですが、会社全体では黒字ということなので、税引後利益に△をつけたまま、いつも通り計算すればO.Kです。
年々の現金流入額が異なるので、内部利益率の算定は、試行錯誤によらざるを得ません。頑張って、電卓を叩きましょう。
以上、本試験、お疲れ様でした。