第165回 日商1級 講評 ~ 工業簿記・原価計算

工業簿記は「標準原価計算」、原価計算は「設備投資の経済計算でした。

以下、個別に講評していきます。

工業簿記

① シングル・プランによる標準原価計算が出題されました。予定受入価格差異が生じますが、会計処理までは問われませんでした。
② 生産量にはロット番号が与えられており、ロットごとに生産量が異なるため、ロット別個別原価計算(指図書番号の代わりにロット番号を使用するだけです)を行うことになります。
③ 仕損や減損もが発生しない標準原価計算の問題で、材料の棚卸減耗損は生じておらす、問題資料も少なかったので、高得点が狙えそうな予感のする問題でした。

問1:月初仕掛品原価について

原料Bは60%点投入のため、#119の期首仕掛品や#123の期末仕掛品には含まれていません。
① #118月初仕掛品の原料A: @300×400個= 120,000円
② #118月初仕掛品の原料B: @200×400個= 80,000円
③ #118月初仕掛品の直接労務費: @140×400個×80%= 44,800円
④ #118月初仕掛品の製造間接費: @260×400個×80%= 83,200円
⑤ #119月初仕掛品の原料B:@300×500個= 150,000円
簡単です。

問2:仕掛品勘定の作成

① 期首仕掛品(#118+#119)
問1の合計額に#119の直接労務費と製造間接費を合計します。
問1の合計額478,000円+#119の直接労務費と製造間接費(@140+@260)×500個×50%= 578,000円

② 直接材料費(シングル・プランなので、期間標準原価)
原料A@300×(#120の200個+#121の350個+#122の650個+#123の550個)
+原料B@200×(#119の500個+#120の200個+#121の350個+#122の650個)
= 原料A@300×1,750個+原料B@200×1,700個= 865,000円
※ 原料Aは前期に月初仕掛品に投入されており、月末仕掛品#123には当期中に投入しています。また、原料Bは月初仕掛品のうち#119分は当期に投入し、月末仕掛品#123には当期中には投入されていません。

③ 直接労務費(シングル・プランなので、期間標準原価)
@140×(#118の20%分:400個×20%+#119の50%分:500個×50%+#120の全部:200個+#121の全部:350個+#122の全部:650個+#123の40%分:550個×40%)= @140×1,750個= 245,000円

④ 製造間接(仕掛品勘定が貸借バランスしているので、期間標準原価)
@260×1,750= 455,000円
※ 上記③参照

⑤ 完成品(標準原価)
@900×(#118の400個+#119の500個+#120の200個+#121の350個+#122の650個)
=@900×2,100個= 1,890,000円

⑥ 期末仕掛品(#123)
原料A@300×550個+加工費(@140+260)×550×40%= 253,000円

問3:標準原価差異分析

① 直接材料費差異
原料Aの標準消費量= 2kg×1,750個(問2②より)=3,500kg
原料Bの標準消費量= 2.5㎡×1,700個(問2②より)=4,250㎡
数量差異= 原料A@150円/kg×(SQ3,500kg-AQ3,580kg)+ 原料B@80円/㎡×(SQ4,250㎡-AQ4,010㎡)
=  7,200円(有利)

② 直接労務費差異
標準作業時間= 0.1h/個×1,750個(問2②より)= 175h
作業時間差異= @1,400円/h×(SH175h-AH179h)=  5,600円(不利)
賃率差異= @1,400×179h - AC258,200円= △7,600円

③ 製造間接費差異(3分法の1)
能率差異= @2,600円/h×(SH175h-AH179h)=  △10,400円(不利)
予算差異= 予算許容額(変動費率@1,200×AH179h+固定費予算3,091,200円÷12ヶ月)- AC464,000円
8,400円(有利)
操業度差異= 固定費率@1,400円/h×(AH179h-基準操業度184h)=  △7,000円(不利)

問4:損益計算書の作成

① 売上高: @1,420×450個+@1,450×400個+@1,520×500個+@1,600×200個+@1,580×350個= 2,852,000円
② 当期製品製造原価(=完成品原価): 1,890,000円(問2⑤より)
③ 期末製品棚卸高(#122): @900×650個= 585,000円
④ 標準原価差異(問3の合計):7,200-5,600-7,600-10,400+8,400-7,000= △15,000円
※予定受入価格差異は四半期末に会計処理するので、月次損益計算書には反映させません。

問5:穴埋め

②③ 当月購入した購入原料価格差異:
予定受入価格差異 =(@SP-@AP)× 実際購入量
= 原料A(@150円/kg-@230円/kg)×3,100kg+(@150円/kg-@210円/kg)×2,400kg+ 原料B(@80円/㎡-@85円/㎡)×5,150㎡
△ 417,750円(不利)

 

原価計算

設備投資の経済計算は、タイム・テーブルが上手に書けるかです。本問は、「取替投資によって原価を節約できる。」というパターンではなく、「取り替えることによってより高品質の製品が製造可能となる」パターンです。講義で取り扱っている「拡張投資+取替投資」と同じ内容になります。
誘導問題なので、しっかりと問題文を読み込みましょう。
なお、再投資の仮定の論点が出題されていますが、公認会計士の論文用テキストに掲載されている内容なので、日商1級の受験生にとっては、酷だったろうと思います。サ)~ タ)は、他の受験生もできていないはずなので、気にする必要はありません。

問:穴埋め

ア)新設備の取得原価= △20,000,000円

イ)旧設備の売却額= 9,000,000円

ウ)旧設備の売却損= 売却時簿価12,000,000円-売却額9,000,000円= 3,000,000円

エ)売却損のタックス・シールド(売却損を計上することによって節約できる法人税額)= 3,000,000円×30% = 900,000円

オ)2023年末の正味CF= エ900,000円+イ9,000,000円-ア20,000,000円= 10,100,000円

カ)収支差額×(1-税率)=(8,000,000円-2,000,000円)× 70%= 4,200,000円

キ)新減価償却費のタックス・シールド= 新減価償却費5,000,000 × 税率30%= 1,500,000円

ク)享受できなくなる旧減価償却費のタックス・シールド= 旧減価償却費 3,000,000 × 税率30%= 900,000円

ケ)カ)+キ)-ク)= 4,800,000円

コ)正味現在価値= 年々の正味CF4,800,000円× 年金現価係数3.54595 + イ)9,000,000円 + エ)900,000円 - ア)20,000,000円
6,920,560円

サ)正味現在価値法の「再投資の仮定」って、以下のような内容です。
正味現在価値法では、例えば、1年後の正味CF480万円は、5%で1回だけ割引計算して現在価値を計算します。これって、「480万円を最終年度の2027年末まで3回複利計算して、それを一気に4回割引計算して現在価値にしてる。」ともいえるので、赤字の部分に着目すると、「1年後の正味CFを最終年度まで5%の複利計算で再投資してるといえるんじゃない?」というお話です。式でみてみると、以下のような内容になります。
480万円÷1.05 = 480万円×1.05×1.05×1.05÷1.05÷1.05÷1.05÷1.05
ここでは、「再投資せず(=赤字の計算を行わず)、1年後の正味CFを2027年末まで金庫にそのままおいておけば」といっているので、1年後の480万円は2027年末になっても、480万円のままです。同様に、2年後、3年後、4年後に入ってくる480万円を再投資せずに、金庫に入れておくと、2027年度末に金庫の中にあるお金は、480万円×4= 19,200,000円です。

シ)年々のCFを再投資せず、金庫にしまっておいた2027年度末の1,920万円を一気に4回割引計算して、2023年末の現在価値とする、という計算が要求されています。
1,920万円×0.82270215,795,878円

ス)再投資の仮定を置かない場合の正味現在価値の計算が要求されています。
NPV = シ)15,795,878円- 2023年度末のCF(オ)10,100,000円= 5,695,878円

セ)今度は、一転して、年々のCFを2027年度末まで再投資した場合に、2027年度末の金庫の中にあるであろう金額が要求されています。
① 2024年度末の480万円を2027年度末まで再投資する: 480万円×1.05×1.05×1.05= 480万円×1.157625
② 2025年度末の480万円を2027年度末まで再投資する: 480万円×1.05×1.05= 480万円×1.1025
③ 2026年度末の480万円を2027年度末まで再投資する: 480万円×1.05
④ 2027年度末の480万円は再投資できない: 480万円
⑤  ①+②+③+④ = 480万円×(1.157625+1.1025+1.05+1)= 480万円×4.310125= 20,688,600円

ソ) セ)の金額の割引現在価値が要求されています。20,688,600円×4年の現価係数0.822702= 17,020,553円

タ)再投資の仮定をおいた場合の正味現在価値の計算が要求されています。
NPV = セ)17,020,552円- 2023年度末のCF(オ)10,100,000円= 6,920,553円

チ)回収期間= 20,000,000円 ÷ 5,000,000円/年 = 4年