令和2年度第Ⅱ回公認会計士短答式試験~講評~企業法

最後は企業法の講評です。
解答・解説もご参照下さい。

問題1:商業登記***

ア.商号の登記が任意であることは基本論点です。

ウ.正当な事由には病気等の主観的事由は含まれませんが、災害等の客観的な正当事由によって、その登記があることを知らなかった第三者には対抗できません。

エは細かいですが、アイウは正誤判定しやすい記述です。

問題2:商行為**

ア.絶対的商行為とされる投機売却の対象となる資産から「不動産」が除外されているのは基本論点です。

ア.の「誤り」で、3つにまで絞ることができますが、イ.~エ.は細かいです。ただ、イ.の文章は、筋の通らない内容になっているので、「誤り」であると判定できたかもしれないです。

問題3:株式会社の設立***

ア.は基本論点です。会社が発起人となって子会社を設立するのは実務上、よくある話です。

エ.の設立無効の判決が遡及効ではなく将来効である、という論点も基本論点です。

問題4:株式会社の設立***

設立に際して発起人が作成する定款の絶対的記載事項(目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所)は、丸暗記しているはずです。

問題5:譲渡制限株式**

ウ.相続により譲渡制限株式を取得した者は、株主名簿の名義書換を請求することができる、というのは知られた論点です。。

しかし、ア.エ.は細かい論点ですし、イ.は判例です。

多くの受験生が3つにまでしか絞れない、難しい問題でした。

問題6:振替株式*

手薄な振替法からの出題です。

ア.の振替法140条やイ.少数株主権の行使に個別通知が必要なことは、どこの専門学校でも取り扱っているはずです。

ウ.の判例や、エ.の振替株式の併合については、正誤の判断ができなかったと思います。

2.か3.の選択肢2つまでしか絞れなかったと思います。

問題7:新株予約権**

ウ.の金銭の払い込みに替えて財産の給付・債権との葬祭を行う場合には会社の承認が必要である点については、よく知られた論点です。

ア.イ.エ.は細かな論点ですが、エ.の自己新株予約権の処分に関しては、その処分によって、既存の株主利益が損なわれることがないことから、特別決議までは要求されない点は想像できてほしいところです。

2.か4.の選択肢2つにまでしか絞れなかったと思います。

問題8:株式会社の機関***

ア.の監査役会設置会社の取締役の要員数や、イ.の大会社には会計監査人の設置が必要である点は、基本論点です。

ウ.の331Ⅵやエ.の326Ⅱも何度も目にしている条文なので、正誤の判定はできたはずです。

問題9:株主総会**

ア.書面投票制度・電子投票制度を採用している場合、株主全員の同意によっても招集手続を省略できないことは、基本論点です。

イ.の株主総会開催中の議案の提出が単独株主権であることは、基本論点です。

ウ.の少数株主の請求により招集された株主総会では、その決議により、株式会社の業務及び財産の状況を調査する者を選任することができる、とされているのは、基本論点です。

エ.の定款の定めによって定足数の要件が排除できるか、については判断が難しかったですが、ア.イ.ウ.から正答してほしい問題です。

問題10:取締役及び取締役会**

ア.の未成年者が取締役になれることは、よく知られた基本論点です。

イ.は判定しにくい問題です。

ウ.の369条はよく見る条文ですが、「みなされる」の「推定する」の置き換え問題は、やや正解しづらいです。

エ. 386Ⅰと混乱させることを意図した問題ですが、引っかからずに正答したい問題です。

問題11:監査役***

イ.特別取締役の決議制度を採用している場合、その趣旨である迅速な意思決定を、監査役全員の出席義務により妨げないために、出席義務を負う監査役を互選により定めることができます。

ウ.独任制の監査役は、それぞれが監査報告を行います。

アは細かいですが、イウエは正誤判定しやすい記述だと思います。

問題12:指名委員会等設置会社**

ア.競業取引・利益相反取引における承認決議に賛成した取締役の任務懈怠の推定は、執行役と会社との取引にはあてはまりません。細かいです。

エ.指名委員会等設置会社の監査委員ではなく、監査等委員会設置会社の監査等委員や監査役設置会社の監査役の報告義務です。

アエの誤りは判別しづらいですが、イウの正しいことはそれよりは判別しやすい気がします。

問題13:株式会社の会計帳簿*

判例からの出題なので、できなくて問題なしです。

問題14:株式会社の資本金、準備金、剰余金***

ア.新株予約権の自体の払込で資本金・準備金は増加しません。

ウ.剰余金の配当時の準備金の積立は、配当源泉とした剰余金の額の1/10です。

いずれも計算の知識で対応できるので、容易く正答できたと思います。

問題15:持分会社**

ア.法人も持分会社の社員となれます。

イ.持分会社では、原則として、全ての社員が業務を執行します。

持分会社自体、あまり深く学習していないとは思いますが、今回の内容ならば、正答したいところです。

問題16:社債***

ア.こうした規定はありません。規定がないことを理由とする誤りの記述は、自信を持って正誤判断しづらいですね。

エ.社債の募集事項の決定は、業務執行の一つとして取締役が決定します。株式の募集事項の決定と混同しないよう注意します。

イウが正しいことも判断しやすいので、正答したい問題です。

問題17:組織再編の債権者異議手続き*

イ.株式交換は、原則として債権者異議の手続きは不要ですが、例外的に債権者異議の手続きが要求されることがあります。

ウ.異議を述べることができるのは、新設分割株式会社に債務履行の請求ができない新設分割株式会社の債権者ですが、人的分割類似行為をする場合は、新設分割株式会社に債務履行の請求ができる新設分割株式会社の債権者も意義を述べることができます。細かいです。

間違えても仕方ない問題です。

問題18:組織再編、株式等売渡請求、事業譲渡***

ア.エ.吸収合併に限らず、組織再編の無効の訴えは効力発生から6ヶ月以内に訴えをもって主張することができます。

ウ.一方、事業譲渡は組織法上の行為ではないので、組織再編行為のような、特別の訴えの制度はありません。

アイエで正誤判定できたと思います。

問題19:目論見書***

ウ.目論見書は直接開示書類なので、公衆縦覧は求められません。

エ.損害額の推定は、開示書類に虚偽表示があった場合の規定です。

ア.は有価証券届出書の効力発生の記述なので、目論見書とうまく結びつけることがしにくかったかもしれません。

イウエは金商法にしては易しい方かと思います。

問題20:公開買付け***

公開買付けの対象となる有価証券です。ウ.株券、エ.新株予約権証券が対象であることは明らかですので、正答したい問題です。

以上です。