第158回日商簿記検定 講評~商業簿記・会計学

6月13日(日)に第158回日商簿記検定が実施されました。問題を商工会議所のHPで公開する代わりに問題用紙・計算用紙すら持ち帰れない、ということで、自己採点もしにくくなってしましましたが手応えはいかがでしたか?

解答・解説も公開しておりますので、詳しい解法は以下をご参照下さい。

第158回 解答・解説

商業簿記

第1問は、決算整理前残高試算表から決算整理後残高試算表を作成させる総合問題、第2問が連結会計でした。

第1問:総合問題

決算整理前も決算整理後も残高試算表の一部抜粋となっており、一見、計算処理量が少なそうに見えます。しかし、資料の少なさがかえって解きにくさにつながっていたり、各項目の内容が難しめだったりと、手応え十分の問題でした。

  1. 貸倒引当金は、一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等の全てが含まれています。貸倒懸念債権はキャッシュ・フロー見積法を選択させる問題でしたが、与えられた資料から財務内容評価法は選択しようがないので、ここで迷うことはなかったと思います。破産更生債権等については、表示を長期貸付金から破産更生債権等に振り替えるべきですが、決算整理後残高試算表が一部抜粋なので、長期貸付金の残高から破産更生債権等への振り替え額を控除して良いものか迷いどころです。公表の解答・解説は破産更生債権等を含まない長期貸付金としましたが、専門学校の解答速報では破産更生債権等を含む長期貸付金としているところもあります。問題の指示にもありますが、この破産更生債権等の貸倒見積額を税効果会計の一時差異とすることも忘れないように注意が必要です。
  2. 投資有価証券は、その他有価証券と満期保有目的債券が含まれています。その他有価証券では、期首再振替が未了であることや期中取得があることを取得原価や前期末時価の資料と上手く組み合わせて読み取る必要があります。D社株式は減損処理が必要となりますが、投資有価証券評価損の勘定名が記入済みなので、見落としていても直ぐに気付けたはずです。満期保有目的債券は、決算整理前残高試算表から期首の償却原価を逆算できれば、利息法による償却原価法の適用も容易かったはずです。
  3. 転換社債型新株予約権付社債の区分法による処理で、権利行使が社債払込かつ自己株式の処分による交付、と論点がてんこ盛りでした。とはいえ、利息法による償却原価の内、権利行使分の1/5を払込み当てるだけなのでそう難しくはありません。社債の償却原価と新株予約権の1/5が自己株式の処分の対価となり、自己株式の帳簿価額との差額が自己株式の処分差額=その他資本剰余金となります。

第2問:連結会計

A社は持分法から連結へ、B社は連結から持分法への変更がありましたが、成果連結のない設定でした。ベテラン組は6割程度狙えますが、初学者には厳しい問題です。
問1: 持分法適用開始から1年後の「持分法による投資損益」を計算する問題でした。A社の増分利益とのれん償却の2つの計算要素だけで正解できる平易な問題なので、初学者も正解する必要があります。
問2: A社は、A社株式を追加取得して連結子会社となった年の1年後、B社は、原始取得から連結子会社のままの状態での連結B/Sの作成問題で、解答箇所は8箇所でした。
8箇所のうち、流動資産、流動負債、固定負債は単純合算するだけで、資本金はP社の金額を記入すれば良いので、4箇所はすぐに埋まります。有形固定資産は支配獲得時の時価でA社の土地を評価すればよいので正解できるはずです。非支配株主持分もタイムテーブル上の各連結子会社の純資産額に非支配株主持分割合を乗じて合算するだけです。ここまでは出来れば、十分に合格点です。
問3: 連結子会社のB社株式を一部売却して、持分法適用会社としたあとの、連結上のB社株式簿価を求める問題でした。解説では、難解な連結修正仕訳を示していますが、原始取得した20X2年度末に、B社株式の20%を1,000百万円で取得して、最初から持分法を適用していたものとして計算した結果と一致します。

会計学

第1問:空欄補充の理論問題

(1)の包括利益は連結会計でもあまり扱いませんし、(4)のセグメント情報も計算に関連しないの対策していない方も多いかも知れないですね。

(2)の未実現損益の連結状の取り扱いは連結会計の計算対策でも扱いますし、(3)の偶発債務や(5)の引当金は伝統的論点・基本的内容なので、この3つは正解したいところです。

第2問:会計上の変更等

会計方針の変更と過去の誤謬の訂正、しかも比較財務諸表(損益計算書)の作成という、珍しい論点が出題されました。これは、過年度から変更後の会計方針(今回は先入先出法)、正しい会計処理(残存価額0で減価償却)を行っていた場合の財務諸表にすればいい、と考えます。20X2年と20X3年の損益計算書はこれで完成です。よって問1は出来れば完答したいところです。

難しいのは、株主資本等変動計算書の期首繰越利益剰余金の累積的影響額です。会計方針の変更(平均法→先入先出法)や過去の誤謬の訂正(残存価額10%→0%)となることで、20X2年度期首の繰越利益剰余金がどう変わるかを求める必要があります。過去の誤謬の訂正は簡単で、減価償却費が1年当り750異なるので、その2年分で1500です。会計方針の変更は、期首棚卸資産の残高の差異となって現れるという計算構造が理解できていないと難しかったと思います。この遡及処理後期首残高が求められないと、20X3年度期末残高にもたどり着けません。

遡及処理後の当期純利益は、会計方針の変更による売上原価の違いと残存価額の誤りによる減価償却費の違いが利益に及ぼす影響を加味することができればなんとか求められたと思います。なので、問2については2/4できれば上出来です。

第3問:正誤判定の理論問題

(1)棚卸資産の減損会計において、「臨時かつ多額の場合は特別損失」ということは計算対策としても覚えていたことでしょう。(2)のれんの償却費の計上区分も計算で対策済みかと思います。(3)税効果会計が資産負債法を採用し、一時差異を対象としていることは基本的内容です。

一方、(4)四半期財務諸表は、受験上捨てている方も多そうな論点ですね。(5)「研究開発費に該当しない開発費」とは繰延資産になり得る開発費のことです。ここに気付けなければ、「売上原価or販管費」という費用区分は出てこないと思います。

3/5の正解が目安になると思います。

以上です。