第71回 税理士試験 講評~消費税法

理論は比較的易しかったです。計算の総合問題では、普段、見かけることのない「課税売上割合に準ずる割合」が出題されました。個人事務所の仕事で、「課税売上割合に準ずる割合」の適用の是非を税務署に問い合わせたことがありますが、実務上取り扱ったことのある税理士は少ないと思います。以下、問題毎に講評していきます。

第一問

問1:記述問題 (3問)

(1) 課税売上割合が著しく変動した場合の消費税額の調整
今回出題された3つの記述問題のうち、書くべき内容が最も多かったので、配点も高かったと予想されます。こういう問題は、時間をかけすぎて失敗することが「あるある」なので、適当に切り上げるように心がけてください。
(2) 法人の確定申告書の提出期限の特例
逆に、(2) は書くことがあまりありません。配点も低いことが予想できるので、結論だけ書いて、短時間で次の問題に移行するのが賢明でした。
(3) 電子申告の特例
暗記条文集で「B」ランクとされていますが、なかなか暗記しづらく、こういう問題は、ベテラン組と初学者とで、差がつきやすいです。本年は、このあたりまでしっかり暗記しているベテラン勢が合格できる年になったのかも知れません。

問2:正誤問題 (4問)

(2)の「社会福祉法人による生産活動」は埋没と考えて大丈夫です。
(1)の「特定役務の提供」、(4)の「簡易課税の事業区分」は現場対応型の問題ですが、正解率は高かったと思います。
(3)の「国外において行う資産の譲渡等のための課税仕入れ等」については、2019年に「国外の居住用賃貸建物に係る弁護士報酬」、2013年に「外国株式の売却手数料」といった形で類題が出題されています。結論は正答できる必要があります。

第二問

問1:総合問題

納税義務の判定は、基準期間の適用税率が「旧税率」、「新税率」、「軽減税率」の3種類となる、令和3年度特有の論点なので、しっかりと得点しておきたいところです。
個々の取引については、微妙な判断を要するような難しいものはありませんでしたが、やたら取引量が多く、資料が整理整頓されていなかったこともあって、かなり時間がかかったと思います。加えて、答練などでは見かけない「課税売上割合に準ずる割合」が出題されたので、途中で「戦意喪失」してしまったのではないでしょうか。「こういう精神的な強さが問われる問題こそチャンス!」と前向きにとらえて、最後まで粘り強く丁寧に得点を積み重ねるように心がけてください。

問2:個別問題

「居住用建物を課税賃貸用に供した場合等の消費税額の調整」という初見の論点です。建物Cは従来からある「転用」なので、正答したいところですが、建物Aと建物Bは難しかったです。
特に、建物Aは、「取得原価」を「専有面積」を基準にして店舗用と居住用に按分し、さらに、「按分された取得原価」に係る仕入税額を「収入金額」を基準にしてワークスペース分と居住用分に按分するという、2段階の計算が必要でした。
本年は、全体的にベテラン勢が有利な出題でした。本問を繰り返し解くだけでも、かなり力がつくので、合格発表まで落ち着かない日々を過ごしている受験生は、是非、解き直してみてください。
以上です。