公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第2回
第2回は租税法について振り返ります。
解答例はこちら → 租税法解答
問題1
問1:貸倒引当金繰入額の損金性
平成26年度にA社(資本金10億円)が計上した貸倒引当金繰入額の損金性が問われました。ベテラン受験生は、資本金1億円以下の中小法人等以外であっても、経過措置により、従前の繰入限度額の何分の1かを損金算入できることが頭によぎったはずです。わざわざ平成26年度にしていることから、作問者も4分の1まで損金算入できることを書かせたかったはずです。
ただし、・・・です。
平成29年度の試験では、「解答に当たり適用すべき法令等は、論文式試験の租税法については、平成29年1月1日現在施行のものとする。」となっています。一方、4分の1の経過措置を規定した改正法附則13条(平成23年12月2日法律第114号)は、現在もそのまま廃止されず、残されたままになっています。
字面だけを重視する人にとっては、「改正法附則は、解答にあたり適用すべき法令等に含まれる。」ことになりますが、過去の改正法附則の全てが、これからも脈々と試験範囲に含まれるとするのは、「解答に当たり適用すべき法令等は、論文式試験の租税法については、平成29年1月1日現在施行のものとする。」旨を公表している公認会計士・監査審査会が予定していることではない、と考えるのが、実情に沿った判断だと思います。加えて、改正法附則は、試験で配布される「法令基準集」に掲載されていません。「根拠条文を示しつつ」という問題文からも、4分の1を規定した改正法附則を根拠とした答案を作成するのは、正しい選択とはいえないはずです。
模範解答は、各専門学校で分かれていますが、業界最大手が公表している解答速報でも4分の1の経過措置に触れていません。試験委員が経過措置を書かせたかったとしても、大手専門学校の解答は参考にするため、経過措置に触れなくても減点されることはないはずです。
最後に、これから先、一生、目にすることはないであろう経過措置を以下に示しておきます。
附則第13条 (貸倒引当金に関する経過措置)
1. 法人の平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度(次項及び第3項において「経過措置事業年度」という。)の所得の金額の計算については、第2条の規定による改正前の法人税法(以下「旧法人税法」という。)第52条の規定は、なおその効力を有する。この場合において、同条第1項及び第2項中「政令で定めるところにより計算した金額」とあるのは、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度については「政令で定めるところにより計算した金額の4分の3に相当する金額」と、同年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度については「政令で定めるところにより計算した金額の4分の2に相当する金額」と、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については「政令で定めるところにより計算した金額の4分の1に相当する金額」とする。