令和2年度公認会計士第Ⅱ回短答式試験~講評~管理会計論

本試験、お疲れ様でした。

時間のかかる計算問題は、問題12「ABC」と問題15「設備投資」ですが、難しい計算問題は出題されませんでした。尤も、難しい計算問題が出題されても賢明な受験生は手をつけないので、今回の合格ラインは最近同様、それほど高くないと予想しています。

解答・解説も参照して下さい。

問題1:原価計算基準(理論)***

設定前文と「基準」6です。

イ. の「個々の企業の原価計算手続を画一的に規定するもの・・・」という論点はよく出題されます。

ウ. エ. は「基準」6からの出題です。「基準」6は、長くとりとめのない内容となっているので、「頭に入りにくい基準」ですが、ひつこいくらいによく出題されるため、「皆がしっかり準備すべき基準」です。

問題2:直接原価計算***

費目別計算 + 直接原価計算の融合問題ですが、日商2級工業簿記レベルの問題です。

「未払い」の調整が苦手な受験生もおられるかもしれません。当月消費額を計算するための調整ですが、「当月未払」と「当月支払」を足して、「前月未払」を控除して計算します。

「当月と当月を足す」ことを覚えておけば、本番で頭を使う必要がなくなるので楽です。

問題3:原価計算基準(理論)***

個別原価計算と部門別計算に関する原価計算基準からの出題ですが、補助部門費配賦の計算方法を思い出しながら解けば、アとエが誤りであることが明らかです。簡単な問題でした。

問題4:個別原価計算***

同様の形式で出題が繰り返されており、どの専門学校の答練でも、ほぼ同じ内容の問題が出題されているはずです。「管理可能な原因に基づく手待時間」、「異常な原因に基づく手待時間」、「直接工が間接業務に従事した時間」などの処理も含め、過去問に取り組んでいれば難なく正解できる問題です。

資料(2) 当月の労務費⑤間接労務費の発生額131,600円に、③の管理可能な原因に基づく手待時間部分や、④の直接工が間接業務に従事した時間分が含まれているのか、迷った受験生もいたと思います。このあたりも、過去問を解いておくことで判断できたはずですが、「他の資料から判明するものは除く」という指示は与えておくべきですね。

問題5:原価計算基準(理論)**

あまり見かけない形式での、「原価計算基準」からの出題でした。

ア.の「汎用品の原価計算は総合原価計算とし、特別品の原価計算は個別原価計算とする」が正しい内容で、イ.の「技術的に達成可能な最大操業度と最高能率の理想的水準における標準原価を設定する」が誤った内容であることは、すぐに分かったはずです。

これで、選択肢の「2.」か「3.」にまでは絞れますが、「ウ.」と「エ.」は、やや難しいです。

ウ. の汎用品の軽微な仕損品については、「基準」28 副産物等の処理と評価の「作業くず、仕損品等の処理と評価は、副産物に準ずる」という規定が適用されます。

また、エ. については、「連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて評価し・・・」という規定が適用される、と勘違いしてしまった方もおられると思います。本問の汎用品は、連産品ではなく、等級品なので、連産品の規定は適用されません。

問題6:工程別総合原価計算**

工程別総合原価計算の逆進問題です。答練でもう少し難しい逆進問題を出題しておきましたが、難しい逆算問題を解く経験を積んでおけば、本問程度は、さほど難しく感じません。

問題パターンがたくさんあるわけではないので、逆進問題が苦手な受験生は、類題を練習して克服して下さい。

問題7:標準原価カード***

仕掛品勘定の貸方に「異常仕損費」とあるので、「非度外視法のSCカードの問題だ!」と判断できたはずです。仕損が終点発生で、評価額のないケースなので、過去に何度も出題されている、最も簡単な計算パターンです。

問題8:標準原価制度(理論)***

イ. の「価格差異は、・・・ 標準消費数量を乗じて計算される。」というのを「誤り」とさせる問題は、クドいくらいに繰り返し出題されています。

ウ. と エ. は、手間を惜しまず、2分法、3分法の1、3分法の2、4分法の図を下書きに書けば、正解できる問題です。

問題9:管理会計の基礎知識(理論)*

「管理会計論の基礎知識」は、苦手な受験生の多い分野です。
もちろん、ア. の管理会計の領域が業績管理会計と意思決定であることも、イ. のマネジメントコントロールの定義も、ウ. の企業戦略の代表的手法がPPMであることも、エ. の管理会計が提供する情報についても、すべて講義で取り扱っています。どこの専門学校でも、学習しているはずです。それでも、受験生にとっては、あまり好きにはなれない学習分野ということで、正解率が低くなっていしまいます。
「管理会計論の基礎知識」は、毎回出題される分野なので、「好き嫌い」にかかわらず、テキストに書いてある内容は理解に努めるようにして下さい。

問題10:財務情報分析(理論)*

ア. は架空売上を計上した際に、「架空の」キャッシュフローが増加するのか、「現実の」キャッシュ・フローが増加するのか、問題文からは不明です。

イ. は、たとえ「財務レバレッジはプラス方向に作用する」としてあったとしても、ですが、問題文の内容は、財務レバレッジの本質をついた文章ではありません。

ウ. の問題文は、「流動比率は必ず低下する。」ではなく、「一般的に流動比率は低下する」とすべきです。

エ.に到っては、試験の範囲外です。

受験生にとって迷惑な、「残念な出題」といわざるを得ません。

問題11:CVP分析**

CVP分析の問題は、算数が得意の方にとっては、いつでも、どんな問題でも解けます。
ところが、算数が苦手な受験生は苦労します。
かつて、TACの講師時代に、「算数が苦手なので、CVP分析は捨てる」という方針の受験生がいました。
その人も、最終的には論文まで合格できたので、算数が苦手な方は参考にしてみて下さい。

問題12:活動基準原価計算*

今回の16問の中では、最も時間のかかる計算問題でした。
資料2の「活動原価に含まれない製造間接費が幾らか」、そして「その製造間接費を配分するための直接作業時間が何時間か」を把握する必要がありました。これらを計算するための労力と時間を考えると、今回の出題の中で、一問だけ「捨て問」とするなら、本問だったのではないでしょうか。

問題13:予算管理(理論)***

イ. の「変動予算」は、「弾力性予算」とも呼ばれ、ローリング方式で設定される事前的な予算とは関係がないことは、「なんとなく」分かったはずです。また、エ. の割当型予算がボトムアップ方式ではないことは、「割り当てる」という字面からも明らかです。
これも確実に正答したい問題です。

問題14:業務的意思決定***

今回出題された計算問題の中では、最も時間をかけずに正答できる問題でした。
求める販売数量をYとおけば、1~2分で解ける問題です。

問題15:設備投資の経済計算**

難しくはありません。
しかし、X案とY案について、それぞれ4年分の正味CFを把握し、X案とY案それぞれの単純回収期間と正味現在価値を計算する必要があるので、時間のかかる問題でした。
正解できれば、アドバンテージの取れる問題です。

問題16:分権組織の管理(理論)**

分権組織の管理会計も、毎回のように問われる分野ですが、苦手とする受験生が多いです。

ア. の「ROIによる業績評価の問題点」や、エ. の「アメーバ経営の特徴」は、メジャーな論点です。

イ. の「常に成立する」といった言い回しはたいていの場合、「誤り」になります。

ウ. のEVAが「税引後営業利益」を利用して計算することも基本的な知識です。

本問も、正解してほしい問題です。